小説『山吹さん家のご兄弟』
作者:百瀬コーキ()

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「第一回! 山吹家対策会議を始めます!」
「ナハハハ! イエーイ!」
「初っ端からテンションが高すぎる!」
俺の部屋に入った途端に拳を天に突き上げる叫ぶ水城とそれに便乗する笹田。
「ここは古今東西のギャルゲーを網羅した俺に任せろ!」
ビシッと俺に指を突きつける水城。
「ねぇ! 水城どうしちゃったの!? 俺お前のキャラが掴みきれない!」
「ナハハハ! どうしよう!私も若干引いてしまった!」
笹田! お前まで引いてどうする! 収集がつかないぞ! 止めろ! 顔を青ざめさせるな!
「こういうのはギャルゲーで言えば誰に恋愛フラグを立てるかという問題だ。 つまりこうなる」
 『誰に話しかける?』
 1.長男(さわやかな王子様)
 2.次男(クールな男前)
 3.四男(元気系スポーツマン)
 4.五男(可憐なショタっこ
「オイ、その理屈で行くと俺は誰かに恋愛フラグ立てることになるんだが。」
「? なんの問題がある?」
 心底不思議そうな顔をするな。
 笹田言ってやれと念を送ってみる。
 笹田はほほをポリポリと掻きつつ引きつった笑顔で水城に告げた。
「ナハハハ…、山吹家は男しかいないぞ!」
「…」
「…」
「…」
 部屋にいた全員が沈黙した。
 ヤベェよ。 鳥肌立ったよ。 男にフラグとか拷問以外の何物でもねぇよ。
「今日、寒いな…」
「ナハハハ…。 そうだな」
 二の腕をさすりながら真っ青な顔の二人。
 お前たちより俺の方が寒いよ。
「コワイヨー…。 男兄弟コワイヨー…」
 なんかよくわからん兄弟たちよ。 頼むからソッチ系ではないことを心の底から祈る。
「いや、待てよ。」
 ハッと何か閃いた顔をになる水城。
「なんだいい案でも浮かんだのか?」
 「ショタっこなら、別にフラグが立っても…。 最近は男の娘というジャンルが流行りのはずだ」
「しらねぇよ! オタク界の流行なんてよ!」
「ちなみに私はナースが好み!」
「「そうなの!?」」
 笹田の意外な好みの判明であった。
「白ナース? ピンクナース?」
「白! ピンクはピンクでいいけど、やっぱり清楚な白っていうのがな」
 色の好みを訪ねる水城に真面目な顔で答える笹田。
「お前そんな真面目に喋れたのね」
「私はこう、『制服いいな』って思う人なのだ。」
「あー、それはわかる。 制服っていいよな」
「かっちりしてるのが、逆にエロスを感じさせるというかなぁ。 まぁ、俺は基本的二次元だったらなんでもいいけどな」
「ナハハハ。 そろそろ三次元も興味持った方がいいぞ。 山吹は?」
「俺はセーラーとかいいと思う。 あと白スクとか?」
「餓えてるなぁ」
「うるせー」
「山吹ベットの下のブツ今度見せてくれよ」
「ナハハハ! 本棚の二重にしてある奥の方もな!」
「なんでお前ら俺の親に見せられないものの場所知ってるの?」
「いや、大体みんな似たようなとこに入れてるだろ。 俺もそうだし」
「そうそう」
「そういうもんかよ」
「今度白スクの貸してやるよ」
「私もセーラーもの貸してやるぞ」
「じゃあ、俺の秘蔵っ子も貸してやるよ」
「マジで? 俺あれがいい。前言ってた女教師のやつ」
「私もCAのやつ貸してほしいぞ」
「いいぞ」
 男子ならではの会話の内容だよな。
 ウハハハハハと三人でアレやコレやエロ話をして盛り上がる。
 いやー、楽しいね。
 すると、水城がドアの方を見つめて突然固まった。
「そのごめん…。立ち聞きするきは無かったんだけど、盛り上がってみたいだから入りづらくて」
 ドアの方にはジュースとお菓子をお盆に乗せて気まずそうな顔をしている長男が立っていた。
「アレだよね。 男子ならではの会話って言うかさ」
 そういいながら、視線を泳がせる長男。
 イケメンはなにやっても様になるよね。
 目がすごく泳いでるけどカッコいいよ。
「…。 アニウエ、イツカライラシャッタンデスカ?」
「『ショタっこうんぬん』って辺りかなぁ」
 俺たちの好みうんぬんは全部聞いていらしゃったんですね。
「兄ちゃんは、いいと思う。 白スク…」
「ソウデスカ」
「うん。いいと思うよ」
「ソウデスカ」
「飲み物とかここに置いとくからごゆっくりどうぞ。 一応星護には部屋の近くよらないように言っておくから」
「ソウデスカ」
 壊れたロボットのように同じ言葉を繰り返す俺。
「あと、兄ちゃんいくらなんでも野外はちょっとな…」
「ソウデ…、あのなんで俺の秘蔵っ子知ってるんッスか?」
「お部屋の掃除をさせていただいた際に…」
 そうか、部屋の掃除を…。
「じゃあ、台所にいるからなんかあったら呼んでね」
 そういいつつ、さわやかな笑顔で去る長男。
「…なんだろうな、このお母さんに話聞かれたみたいな気まずさ」
「ナハハハ、同じく」
  さてと、学校でも思ったけど今日は本当にいい天気だな。
 窓を開けてと、
「死んでやるぅうううう!」
「よせ! 山吹! 窓から飛び降りようとするな!」
「ナハハハ! いくらなんでもそれはマズイ! 生きろ!」
 止めてくれるな二人とも! 俺は今すぐにこの窓から飛び降りたい衝動に駆られている!
「死んでやるぅぅううう!」
「今死んだら、ベットの下のアレや本棚の奥のコレやはどうする気だ!」
「もういいよ! 全部お前らにやる!」
 嫌でもやっぱりもったいないから駄目だ!
「そして結局今回も話進まずと…」
 笹田! 言っちゃならねェことを!

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