第一章 南の勇者
「よく来たな」
洞窟に入ると、くくくくくと嗤う薄気味悪い声が響いていた。
「よく来たなだって? 人の気も知らないで……」
口からそっと漏れたのは最早、嘆きと呆れの声だった。
「くくくくく。待ちくたびれたぞ。来るならもっと早く来い。
逃げ出したかどこかでモンスターにでも食われたかと思っていたところだぜぇ」
嫌悪の表情で睨みつけながら奥へと入る。
不気味な声は洞窟にいつまでも反響していた。