小説『なんでもない詩』
作者:文月 青鈍()

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「うそつき」






嘘で作り上げた偽りの自分


本当の自分を隠して育てた虚栄


笑えるよね


良く見られたい


良い子でいたい


朽ち果ててしまった幼い自分


もう こんな醜い心を持って育った自分が嫌い


嫌いだ 嫌い





青い小鳥やサンタクロース


妖精などは信じてなかった


およそ可愛くない子供だった自分


幸せなんて誰かがくれるものじゃない


自分の力で掴み取るものだって


そう考えていた虚栄心の塊


そう こんな汚い精神を育んでしまった自分が嫌い


嫌いだ 嫌い





背中合わせに誰かに語り掛けたかった


面と向かって話せなかった


だから偽りの自分と本当の自分を分けた


そのほうが使い分けが楽だったから


一人の時に本当の自分


誰かといるときは偽りの自分







疲れた 疲れた


下ばかり向いて歩くことに疲れた


嘘ばかり付くことに疲れた


本当の自分を隠すことに疲れた


相談できる人なんていなくて


したところで精神異常と思われそうで


何かを心から欲していたと思う






見つけたのは青い空


澄んだ色は心に溶け込んだ


大きな筆で殴り書きされた


今まで色々なものを見てきたつもりだった


でも結局はモノクロだったのかもしれない


インパクトもラブも何もなくて


空虚な自分には似合ってた


なのに


そんなガラクタ同然の自分に


空の青さは不法侵入をしてきた






その大雑把だけれども大胆な


横暴だけれど優しく溶け込んできた






何もかもがバカらしくなった


嘘の自分も本当の臆病な自分も


疲れきった今の自分も




何もかもが小さく思えた


もやもやとした心配事や


おどおどとした考え事


叫びたい今の自分







無関心を貫いて


ライクもラブもリップサービス


常識や秩序さえ守っていれば


保身していられると考えてた自分も






グッシャグシャにして


ゴミ箱に投げ込んでやった


意外とすっきりするものだ


背中の重荷が取れた






ふ、と優しい風が吹いた気がした


また足を一歩踏み出せそうな気がした


今度は軽い足取りで






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