小説『なんでもない詩』
作者:文月 青鈍()

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「うたげ」




あんたがたどこさ?


肥後さ 


それどこさ?


人の世さ


その世さ 良かさ?


良かよ







狐と狸と猫はどこさ?


それら皆して化かしてるのさ


何を? 誰を?


それを云ってはつまらぬだろう?







あんたがた何さ?


鬼さ 赤鬼よ


赤鬼か? 青鬼どこさ?


死んださ







人の世にて退治さされて


残った鬼が悲しみくれる


泣いてさ 鳴いてさ 啼いてさ






死んだ青鬼仏に祈り


残った赤鬼慰めあやす


泣くな 鳴くな 啼くな







哀れに思った侍一人


刀手にして赤鬼誘う


それを目にした狐が一匹


青鬼呼びつつ天へと走る


それを聞いた青鬼怒り


雷落として侍焼いた







あまりの哀れに仏は涙


罪を犯した青鬼一人


涙流すは赤鬼一人


哀しや 哀し







ちんどん ちんどん 


宴や 宴


鬼に妖 狐狸類


騒げや 騒げ


今宵は祝いの席じゃ







何がおこる?


お帰りさ 我らの友が


人に切られし首が戻り


赤鬼恋しく駆け足急ぎ


めでたや めでたや







さぁ さぁ


支度はよいか?


鎧はいるか? 刀はいるか?


近くぞ 近く


逃げろや 逃げろ







「「 久しいな 人の子よ」」








ぬしに切られた首が痛い


ぬしに切られた半身痛し


償え 償え 己が身で


さぁ 狩りの宴の始まりじゃ








あんたがた何さ?


鬼さ 人の子よ


嘘付くな 舌を抜くぞ


千年前 青鬼切った


ぬしの顔を忘れるものか


晴らせるぞ 恨み辛み


首を出せ 縊り落とす







何をした? 我らが何を?


山の中 静かに暮し


人の里 襲わず見てた 


なればいかにして我らを襲う?


脅威か? 脅威か?


人の子は 人に非ず


無情にて非情なモノ







帰さぬぞ 帰してやらん


置き土産 其の首もらう


           









行燈の油が切れた


話はおしまい


人の子は 葉を被されて


山の奥にて 骨になった


そして宴は静かに終わる



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