小説『なんでもない詩』
作者:文月 青鈍()

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「かぜのこえ」





走ってる時、聞こえる


歩いてる時、聞こえる


春には優しい歌が聞こえる


花の宴が そこかしこで開かれる





台風という 大きな声の中で


ボクは生まれた


声が大きすぎて停電になって


真っ暗な中で生まれたボク


でも 決して怖くなかった


子守唄と同じだったから






寒い空の中で、聞こえる


木枯らしという名で歌ってる


たまに雪の子と一緒に踊ってる


ボクは寒いのは嫌いだけれど


風の声は嫌いじゃない






そして また春になって


再び舞う花弁と一緒に奏でる声


懐かしい記憶と匂いを運んでくれる


新しい門出や新生活


いつもそばで感じてた




人は、生まれてから死ぬまで  風の声を聴いている


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