小説『俺としつこい女』
作者:ブレイバー()

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     1話   俺の気持ち、彼女の気持ち・・・

11月2日(木) 晴れ  AM7時55分
雲一つない青空でもこの季節、寒い。空からやってくる肌寒い北風がコートの中を通り、体を刺激するそんな季節。それでもまだ11月、それも上旬。
行きかう人々は口から白い息を吐きながら目的地へと向かっていく。その中に一人、今回の主人公の男が手提げ鞄を持って小道を歩いていた。

??「・・・・・・」
名前を緒方裕一(おがたゆういち)という。かなりの美男子だ。高校2年で部活動はやってない。先月、2年間続けたコンビニのバイトを辞めたばかりだ。今ではのんびりと高校生活を過ごしている真っ只中だ。

裕一「・・・・・・」
学校の坂の下に着く頃、周りを見渡せば他の学生たちも次々と同じ方向に向かっている。みんな友達と話しながら上っていてとても楽しそうだった。しかし彼だけはそんな楽しい世界から逃げ出したくて逃げ出したくてたまらない状況下にいた。理由は・・・・・・後のお話でわかってくるだろう。しかし今の彼の心の本音を聞くとどうだろうか・・・

裕一「・・・みんな消えてなくなってしまえばいい」
なんともネガティブな心の本音を聞いたところでお話に戻ろう。

裕一「・・・・・・」
渋々坂を上りだすと後ろからテンポよく靴が地面を蹴る音。
ばっ!

??「おはよう裕一!今日もいい天気だねぇ〜」
背中に重い感触。誰かが裕一の背中に負ぶさっていた。

裕一「・・・降りろ。重い」
それを思いっきり振り払うと背中の人物は尻餅を着きながら倒れた。

??「いたた・・・もうちょっと丁寧に扱ってくれよなっ」

裕一「・・・・・・」
そのままスタスタと歩き出す。

??「ちょちょちょ待てって!!軽い挨拶じゃないか。それぐらい勘弁してくれよな」

??「今のはあんたが悪いわよ」
今度も後ろから女の声が。

??「おはよう緒方くん」

裕一「新島か・・・」
彼女は新島茜(にいじまあかね)。裕一と同じ学校に通う高校2年生。裕一とは幼馴染。

??「俺のことは無視かよっ!」
彼は佐藤晃(さとうのぼる)。彼も同じ学校に通う高校2年生。幼馴染。

晃 「俺にもちゃんと『おはよう』の一言ぐらい言ってくれないと俺、寂しくて死んでしまうよ」

裕一「じゃあ死ね・・・・」

晃 「うんわかったよ・・・ああ、楽しい17年間だったよ・・・ってなんでほんとに死ななあかんねん!!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
晃 「・・・・・・あれ?」
前を見れば裕一と茜は二人で坂を上っていた。

晃 「ちょ・・・ちょ・・・ちょ待ってよ!!・・・今のかっこよくね?」
振り向いたがそこにいる誰一人として彼の方を見なかった。

晃 「・・・・・・いやあーーーーーーーーー!!俺だけ冷めてるーーーーーー!!二人とも待ってーーーーーーーーー!!」
二人の後を追いかける。



昇降口に着いた3人。自分たちの上履きに履き替える為に番号の書かれたボックスを開ける。すると裕一のボックスからひらひらと何かが落ちた。

裕一「・・・・・・」
裕一はその落ちたものを足で蹴り飛ばす、がやっぱり薄い。全然飛ばずそれを晃が拾い上げる。

晃 「ん?手紙?」

裕一「・・・お前にやるよ」

晃 「でもお前の中から落ちてきたぞ」
昇は手紙の封を空け、中から紙を取り出しそれを読み上げる。

晃 「えーっと、なになに・・・『緒方裕一   放課後屋上前の踊場の前で待つ 絶対に来なさいっ!!  K・Mより』・・・だってよ」

裕一「・・・・・・」

茜 「あら、お誘いのお手紙にしたらなにやら挑戦的ねぇ」
上履きに履き替えた茜もやってくる。

裕一「・・・知らねぇよ・・・」
そのまま歩き出す。

晃 「あ、おい・・・!」
2人は裕一の後姿を見ていた。

晃 「・・・あいつ、まだ吹っ切れてないみたいだな」

茜 「当たり前よ。あんなことがあったんだもん。そりゃ引きずるわよ・・・・」

晃 「・・・・・・でもだからこそ、俺たちが裕一をなんとかしなくちゃな」

茜 「そうね・・・。私たちが裕一くんの力にならなくちゃ、ね」
2人も後を追いかけるように歩き出す。




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