走る。それほど遠くには行ってないはずだ・・・と思っていたがぞれは間違いだった。走って1分ぐらいでそのシルエットはあった。
裕一「・・・帰ったんじゃなかったのか?」
瑞樹「・・・上着・・・返してなかったから・・・」
裕一「・・・そっか」
ポケットに手を突っ込み中から缶を取り出す。それをゆっくり投げた。
裕一「ほら」
瑞樹「わっ・・・!あ、ありがとう・・・」
裕一「・・・送ってくよ」
瑞樹「え・・・?い、いいわよ。そんなことまでしてもらわなくて」
裕一「・・・お前アホか。さっきあんなことがあったばかりなのに1人で帰すわけないだろう」
瑞樹「あ・・・」
裕一「ほら、行くぞ」
手を差し出す。
瑞樹「・・・・・・」
裕一「ほら」
瑞樹「・・・・ええ」
その手を瑞樹は握った。
瑞樹「・・・・・・」
裕一「・・・・・・」
2人は何も言わずゆっくり歩いていた。・・・そして裕一がその沈黙を解いた。
裕一「・・・あのさ」
瑞樹「えっ!?」
裕一「・・・なに驚いてんの?」
瑞樹「・・・いえ」
裕一「・・・それでさ・・・その・・・もう気にすんな」
瑞樹「ぇ・・・?」
裕一「それだけだ・・・」
瑞樹「・・そ・・・そ・・・っか・・・」
裕一「ああ。それだけ」
瑞樹「・・・その・・・ありがとう。あと・・・ごめんなさい」
裕一「・・・これからは迷惑かけんだったら俺だけにしろ。あいつらにはお前のお守りは荷が重い」
瑞樹「・・・それって」
裕一「勘違いすんなよ。別にお前の彼女になるわけではない・・・ただ・・・その・・・なんだ。この関係のままでいたいって言うか・・・寂しいっていうか・・・ああもう!わけわかんねぇ!」
瑞樹「・・・つまり・・・また迷惑かけてもいいってこと?」
裕一「・・・あんま迷惑はかけてもらいたくもないし、しつこく纏わりついてもらうのも困るが」
瑞樹「そっか・・・ふふふ。そっかそっか・・・」
裕一「・・・その笑み、怖いんだが」
瑞樹「ふふふ。ふふふ」
裕一は見えなかっただろうが・・・瑞樹は笑いながら泣いていた。
茜 「・・・おやおや。いい雰囲気だこと。・・・黒澤瑞樹、か。彼女が彼の心の支えになってくれればいいんだけど・・・今は大丈夫そうね」
離れたところから2人を見つけた茜が意味深なことを言っていた。
茜 「・・・・・・」
夜空を見上げる。
茜 「・・・ふふ。さぁてと。帰るかな」
2人とは反対方向に歩いていった。
裕一「そういや上着返してくれないか?もうさすがに寒いんだが・・・」
瑞樹「それは無理な相談よ。だってこれ脱いだら下着が出ちゃうもん」
裕一「別にいいじゃないか。誰も通ってないんだし」
瑞樹「あなたが見てるでしょ」
裕一「もうさっき見たんだ。別に気にしねぇよ」
瑞樹「・・・見た・・・?見たですって・・・?」
裕一「・・・・・まずったか」
瑞樹「・・・・・・」
裕一「・・・・・・」
パチーーーンッ!!
ガチャッ
裕一「ただいま〜・・・いてぇ・・・」
裕一の顔は見事に紅く腫れ上がっていた。