小説『魔法少女リリカルなのは〜ちょっと変わった魔導師達の物語〜』
作者:早乙女雄哉(小説家になろう版マイページ)

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第00話:プロローグ


 時は三月中旬。そろそろ出会いの季節である四月になるであろう時期。
 その知らせは、唐突に彼の元に届いた。

「へ、、異動、ですか?」
「おう、そうだ」

 所属している部隊の部隊長に呼ばれ、今そんなことを言い渡された。彼は困惑してしまって、何も口に出せない状態にいる。そんな珍しく困惑している彼を見て、部隊長である彼は呵々大笑とも言えるような笑いを見せ、「クビじゃぁないからな?」と言って彼を和ませる。
 その言葉を聞いてほっとした彼は、相変わらず、冗談が好きな人だ、と心の中で呟いてからふぅとため息をついた。

「そりゃ、クビだったらこっちもたまったモンじゃありませんよ」
「まぁな。こっちもキミをクビにしたらあの姉妹とかアンタのご両親に何されるか分からないからな」

 そんな事を身をちょっとだけ震わせながら言う部隊長。それを見た彼は、自分の家族が部隊長にどんな圧力をかけているのか気になりつつも、それを少し自重させないとと思った。
 そんなことを思いながら、彼は正面に展開された次の異動先の資料モニタに目を通す。そこには、『遺失物管理部機動六課』と記されていた。ゆっくりとその内容を見ていくと、そこの人員表には彼も驚くなだたる顔ぶれが揃っていた。

「て言うか、なんすかこの部隊。高町一尉にハラオウン執務官、八神二佐にその守護騎士達………なんつうチート部隊」
「まぁ、部隊の顔ぶれは良いとして。先日、八神二佐がこの部隊においでになってな、それで、そのときの全体訓練を見てお前をスカウトした、って訳だ」

 へぇ、と何となく納得してしまう彼。そして、もう一度人員表に、今度はそこの前線部隊、主に新人フォワードメンバーが記されているところに目を移す。それを見て、もう一度納得した。前線の新人フォワード部隊は、本当に新人。経歴も浅く、まだまだ荒削りなところがあるだろう、と言う予想を立てる。そう考えて、経歴が長くてもまだのびしろがある人をこの部隊から選び出すと、自分に行き当たった。

「部隊長、俺が選ばれた理由がよ〜く分かりました」
「おう、そうかそうか。じゃ、話はこれで終わり。出向は明後日だから、今日の内に準備しておいてくれよ?今日の仕事は俺のデスクに回してあるから、今日は帰れ」
「あざ〜す」
「その代わり、あっちの部隊でしっかりやってこいよ?」

 「分かってますよ」と彼は部屋を出て行く前にそう言い残して、部隊長室をあとにした。



 来る四月上旬。彼は集合時間より一時間も早くその場所に到着していた。
 海岸がすぐ近くに見える海辺の隊舎。隊員の寮が左手に見え、本部は今まで見てきた隊舎とはあまり変わりはないように見える。
 その隊舎を見て、彼は誰にも分からないくらい小さく震えていた。しかし、その震えに一人だけ気づいているやつがいた

(マスター、どうしました?)

 それに気がついていたのは、彼の胸ポケットに収納されている一枚のカード。そのカードの中心にある灰色の水晶が点滅しながら彼に問いかけた。そのカード、彼のデバイスである『ガーンディーヴァ』の問いに、彼―――氷雨トーリは瞳をキラキラさせながら小さく答える。

「武者震いかな。名だたる顔ぶれと一緒に仕事が出来るなんて、夢みたいじゃん」
(さいですか)

 トーリの答えに、半ばやけくそのような感じに答えるガーンディーヴァ。しかし、今の彼女の声からも、何となく期待の感情が見て取れた。

「それじゃ、頑張っていきますか」
(そうですね)

 そんな会話を交わしながら、彼らは隊舎の門を潜った。

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