小説『アールグレイの昼下がり』
作者:silence(Ameba)

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まるで映画のワンシーンを思わせるように部屋には英語の言葉が飛びかう。

…という事で【私】は、二人の会話を素早く日本語変換をする。
え?【私】が誰かって?
…クス。それはいずれ、また次の機会に…。


リアが乙の上で四つんばいになりながら口を開いた。

「やっぱり日本語は難しいわね」
「…別に無理に使わなくても良いだろう?」
「解ってないのね、乙は」
「…何がだ?」
「クス。なんでもないわ。
抱いて…乙…」

乙は、少し体を起こすとキスを交わしグルリとリアを押し倒す。
一気に先程とは逆の態勢になる。
乙が口を開いた。

「…押し倒されるのは好きじゃない…」
「相変わらずなのね [沈黙のseduction]…か」
「……俺が付けたわけじゃない。
周りが勝手にそう呼んでいるだけだろう…?」
「クス、クールな人…」

リアは両腕を伸ばし、乙を求める。
乙も口数少なく、それに答えた。

「ア…///」

やがて、部屋には少女の甘い声が響き始めた。
真珠の様な白くきめ細かい肌は、乙の撫でる指先に反応し、ピンクパールへ染めていく。

絶えず呼ばれる乙の名前。
そして、愛の言葉が甘い吐息と共に絶え絶えに奏でられる。
いつしか少女は呼吸と快楽の声も激しさを増し絶頂へ達した。

事が終わり、リアが微睡む中、しばらくすると乙は服を手際よく着始める。
リアは体を起こし、背を向けて着替えている乙に問い掛けた。

「乙、もう行ってしまうの?」
「…ああ、用は済んだだろ…」
「冷たいのね…。また、向こうに帰って来たら会ってくれる?」
「…無理だな」

普段からあまり感情を出す人物ではなかったが、今日に限ってさらに乙はリアを突き放す。
ふと、少し淋しそうに顔を曇らせるとリアは口を開いた。

「何故?もう帰って来ないから?
それなら私がこっちに…」
「そういう事じゃない。
俺が気が付かないとでも思ったのか?
…お前…輝李[キリ]に抱かれただろう…」
「!!!!」


ドクン…!!


そう言い放ち、振り向いた乙にリアは目を大きく開き、見抜かれた事にショックを隠せない表情を見せた。

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