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たどり着いたのは小高い丘のその上。『私』は複数の人影を見た。
第一印象、科学者。白衣の彼らは『私』を見てか、それとも世界(うしろ)を見てか「素晴らしい」と手を打った。
―――疑うよ。
『私』は振り返る。ここからは街全体が見えた。いつもは大きいと感じていた『私』の街(せかい)は本当は自分の小さな視界に納まる程度のものだった。それはまるで実験施設のようで、逃げ惑う人の波がラットにさえ見えた。
「もう、不必要だ」
科学者たちの冷たい声がヘッドフォンの上から突き刺さる。『私』はもうそちらを振り戻ることができなかった。
ふいに頭上を掠めて、大きい何かが街のほうへと投げ入れられた。それが科学者たちの投げたものだと想像するのことは容易だった。あまりにも普通に、日常の動作の一端のように。
鋼鉄に覆われたカプセル状の何かは街の上空で炸裂した。劈くような爆音、目が眩むほどの光を放つ。光が収まり、視界が晴れたときには景色は一変していた。
自分いた世界が焼かれていく。
何がおきてるかはあまり解らなかった。
でもひとつだけ解ったことがあった。
『私』はこんなに小さな箱の中で生きていた、ということ。
燃え尽きていく街だったものをただ呆然と見る『私』の耳元で
「ごめんね」
呟く声が聞こえた。