小説『もしもの世界』
作者:餓鬼()

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プロローグ


 西暦2015年

「これで終わりか」

 僕は目の前の画面が無くなって行くのを感じてしまった。

「これで、あの繋がりも消えてしまうのかな」

 このゲームで知り合ったカイト達との冒険

「楽しかったな」

 僕はM2Dを外してそれをダンボールの中に入れていく。

「もう、やらないけど」

 僕はそのダンボールに保存用の紙を貼った。

「あの冒険はもう」

 短かったようで長かった冒険がここで終わりを告げた。

 多分、このゲームをやらないと思うけど捨てることは出来ない。ゲームの中だけどここで得た物は凄く大きかった。

「さて、勉強でもしようかな」

 この時はすぐにもの場所に戻ると思っていなかった。



 西暦2017年

 なぜ、なぜこうなるんだ。

「くっ、なんでこうなるんだ」

 俺は自転車を漕ぎながら呟く。

「だからごめんって言ったじゃん」

 僕の隣で謝っているのは倉本智香、いわゆる幼なじみだ。と言っても『アレ』を止めてから知り合って? 元々が知り合いでちょくちょく会っていたようだが俺はあの時は『アレ』をしていたため家から出ていなかった。

「だから何で入学して二日目で遅刻しないとダメなんだよ」

 俺は自転車を漕ぐのを止めないで文句を言う。

「だって、目覚ましが壊れてるなんて思わないし」

 そんな戯言を言うんじゃない。

「これで遅刻したらお前の秘密ばらしてやる」

 部屋で何を描いているのか親や親友にばらしてやる。

 その言葉に智香はバランスを崩したがすぐに戻り

「なっ、何で知ってるんだ!」

 顔を赤くして叫ぶ。

「この前、お前の部屋に行った時に机の引き出しからはみ出てた」

 あの時は驚いた、この小説が好きでそんなの興味ないよみたいな顔をしているのにな

「人の部屋を漁ったのかよ」

「いやいや、だからはみ出てた」

 それと着替えを直さないのもどうかと思うぞ。

 智香は片手で拳を作って

「学校に着いたらしばく」

 おぅ、なんて暴力的な少女なのだろう。

「それより、あと少しで遅刻になるぞ」

 俺の腕時計は8時20分を指していた。

「嘘!」

 ホント、ホント、急がないと大変だな。

 その後、何とか予鈴ギリギリで門を通過した俺たちは教室に行き机で死んでいた。

「朝からなんて大変なんだ」

 担任が入ってきて今日の予定だけを言って出ていき一人の男が机に寄ってきた。

「今日も彼女と登校か」

 学ランのボタンを一つ外して体系がガッツリしていてスポーツしてますと言いたげな男が話しかけてきた。

「彼女違うし、幼なじみ? だな」

 俺の言葉に

「何で疑問形なんだよ」

「いやだって、出会ったのは中学の時だし……ホラ」

 智香が言うにはそれ以前にも会っていると話していたが全く覚えにない

「ホラって言われてもな、それにその間が気になるんだが」

「だって、ホラ……大輝面倒くさい」

「なに、なに! お前は俺との話のキャチボールが成り立ってない」

 この弄りやすい男、白月大輝(しろつきたいき)以外にも小学生からの仲だったりする。

「なんで一樹は学校だと面倒そうにするんだ?」

 今、初めて俺の名が出てきたように俺の名は高町一樹(たかまちかずき)。高町って名前だけどあの白い悪魔とは一切無縁ですのであしからず。

「学校が面倒じゃない、お前が邪魔なんだ」

「そっか、俺が邪魔だったのか……じゃねぇよ! なんで俺が邪魔なんだよ」

 おうおう、このキャラはどこまで弄れるだろうと思った時、後ろから腕が首に回され絞められた。

「ち、智香、いくらなんでも今、攻撃しなくても」

 俺は机を左手で叩いてギブしているが

「絶対に言わないよな、言わないって言ったら離してやる」

 そう言いながら俺の頭はどんどん智香の胸に近づいていく。

 後もう少しだがこれ以上は命が危険だ。

 俺は机をタップしていた左手を上に挙げてokサインを作る。

「次、言ったらこれ以上だからな」

 と言いながら解放してくれた。

「ふぅ、朝から死ぬところだったぜ」

 人生の半分も過ごしてもいないのに死にたくないからな

「それにしてもお前ら本当に中学からの付き合いか? 俺にはそれ以上前からの付き合いに見えてくるぜ」

 その言葉に俺は

「だからさっきも言ったろ、中学の途中から知り合ったって」

「なぁ、智香」

 俺が後ろの智香に顔を向け言ったら

「初めて会ったのは小学の時だけど話すようになったのは中学からだな」

 その言葉に大輝は

「お前らもう付き合えよ」

 今の会話を聞いてなぜそうなる。

「お前は今の話の内容からそこに行きつく」

 俺は呆れながら言ったが智香は

「なっ! なに言ってんだよお前は」

 顔を赤くして否定していた。

「智香、顔を赤くしても否定できないぞ」

 恋とかそんなの詰まらん。

「い、いきなりで驚いただけだ」

 慌ててたが冷静になり一冊の雑誌を見せてきて

「それがどうしたんだ」

 俺がそのページを見た時、大輝が懐かしそうに俺の顔を見る。

「ここを見てくれよ」

 智香が指したところはR:2でPKが推奨されてアリーナが作られそこで戦闘を公開しているらしい。

 そして智香は笑顔になりながら

「『The World』やろう」

 それに大輝が

「すまん、俺は部活やりてぇから一樹でも誘ってくれ」

 そこで俺の名前を出すなよ、断ろうとしてたのによ。

「そっか、部活やりだしたら忙しいからな」

 と言いながらも俺の答えを待っている顔をしている。

「はぁ、俺がやればいいんだろ」

 R:2をインストールするだけだから簡単だな。

「それより、M2Dとか持ってるんだよな」

 俺がそう聞くと智香は

「ないな」

 即答しなさった。

 俺は驚きながら

「待てよ、やりたいなら持っとけよな」

 智香はそれを聞いても涼しい顔をして

「なら、今日買いに行こうぜ」

 そうなりますか。

 地元だと品ぞろえは悪いから町にでないとダメだな。

 話が終わりを迎えていたのに大輝が

「それにしてもそれって面白いのか?」

 と面倒くさい質問をした。

「アタシはまだやったことないから分からないけど」

 俺の方を見て

「一樹なら知ってるよな」

 俺が知っている前提で聞いてきたぜコイツ

「さぁな、俺はM2Dは持ってるけどやったことはないな」

 嘘を吐くが

「なんでやったことがないのにM2D持ってるんだよ」

 智香にそこを突っ込まれた。

「この前、兄貴に貰ったんだよ」

 これは本当だ。なんでも集団PKにあってやる気を無くしてしまったらしい。

「智香、古いのでよかったらM2Dやるよ」

 兄貴が止める前に買ったものだが初心者でも操作が簡単らしい。

「兄貴、無駄に二つ持ってたからさ」

 それの一つを俺が使えばいいよな。

「なら、家にいったん帰ったら持ってきてよ」

「大体使えそうなやつを持っていくよ」

 会話が終わり智香が自分の席に戻ったのを見て大輝が

「嘘ついていいのか」

 俺が昔『The World』をやっていたことを知っている。

「まぁ、そのうち分かるさ」

 俺は眠そうな顔をするが

「昔のようにお前が素で笑うようになればいいんだがな」

 それはないな

「そうだ、やりだしたらさ昔の様に俺に話してくれよ」

 そう言えば昔は大輝に一日の出来事を話してたな。

「まぁ良いけどよ、俺が話すのは多分PKされたwとかだぜ」

 俺はふざけて言うが

「お前がPKされるか」

 腕がなまってますからと言いながらふざけてると担任が来た。

「なら、楽しみにしてるよ」

 と言いながら大輝は席に戻って行った。

 また、アレをできるんだな。

「今頃アイツらは普通に生活してるよな」

 昔の仲間を思い出しながらボッーとしていたら何時の間にか図書委員にされていた。

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