小説『彼氏とあたし』
作者:美桜()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

去年の十一月まで、あたしには年上の彼氏がいた。
歳の差は九歳。
周りに紹介できるわけもなく、彼氏がいること自体、隠してた。
彼氏の存在を知っていても、歳までは知らない人もいたくらいだ。

その彼の名前は、亮(りょう)。
亮は仕事も忙しく、メールをしても返事が返ってこないのが当たり前。

「電話してもいい?」と亮からメールが来たときは、大抵がデートのお誘い。
そのデートも基本的には密室コース。
待ち合わせの駅から、彼の車。そしてホテル…。
帰りは待ち合わせした駅まで送ってもらい、その日のデートは終了。

あたしは、それに耐えられなかった。
辛いだけになる前に、別れたかった。

丁度そのころ、クラスメイトの望(のぞむ)に告白された。
望が理由ではないけれど、引き金となったのはたしかだった。

弱かったね。ごめんね。亮。


「亮…別れよう?」


「考えさせてくれ」と亮は言った。
でもあたしの気持ちは変わらないかった…。

「亮は考えさせてほしいって言ったけど、あたしの気持ちは変わらないよ?
辛くなる前に別れよう?」

「了解しました。お元気で。」
半年間の恋愛に終わりが来た。

それからあたしはすぐに、亮のアドレスも今までのメールも消した。
彼氏がいたことを知ってる人には、「スッキリしたよ」って嘘をついた。
だって弱いあたしが辛いなんて言ってはいけないと思ったから…。

-2-
Copyright ©美桜 All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える