去年の十一月まで、あたしには年上の彼氏がいた。
歳の差は九歳。
周りに紹介できるわけもなく、彼氏がいること自体、隠してた。
彼氏の存在を知っていても、歳までは知らない人もいたくらいだ。
その彼の名前は、亮(りょう)。
亮は仕事も忙しく、メールをしても返事が返ってこないのが当たり前。
「電話してもいい?」と亮からメールが来たときは、大抵がデートのお誘い。
そのデートも基本的には密室コース。
待ち合わせの駅から、彼の車。そしてホテル…。
帰りは待ち合わせした駅まで送ってもらい、その日のデートは終了。
あたしは、それに耐えられなかった。
辛いだけになる前に、別れたかった。
丁度そのころ、クラスメイトの望(のぞむ)に告白された。
望が理由ではないけれど、引き金となったのはたしかだった。
弱かったね。ごめんね。亮。
「亮…別れよう?」
「考えさせてくれ」と亮は言った。
でもあたしの気持ちは変わらないかった…。
「亮は考えさせてほしいって言ったけど、あたしの気持ちは変わらないよ?
辛くなる前に別れよう?」
「了解しました。お元気で。」
半年間の恋愛に終わりが来た。
それからあたしはすぐに、亮のアドレスも今までのメールも消した。
彼氏がいたことを知ってる人には、「スッキリしたよ」って嘘をついた。
だって弱いあたしが辛いなんて言ってはいけないと思ったから…。