小説『ソードアート・オンライン〜Another story〜』
作者:じーく()

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33話 白銀と漆黒・3




























その場に現れたのはざっと見て、約10名のプレイヤー。


「尾けられてた……みたいだな。」


リュウキがそう呟く。

その出てきたメンバーの中心にいる男を見て正体がわかった。


「クライン……」


……ギルド≪風林火山≫のメンバー、そしてクラインだった。


「追跡スキルの達人がいるんでな。」


クラインはそう答えた。

尾けていた事を否定はしないようだ。




「……しつこい男は嫌われるんじゃないのか?」

リュウキはそう言いながら、抜きかけた剣を肩にかけた。

「うるせぇっよ!それは兎も角、キリト!お前が全部のツリー座標の情報を買ったっつう情報を買った。そしてら 念のため49層の転移門に貼り付けといた奴が お前が何処の情報にも出ていないフロアに向かったっつうじゃねえか。……オレはこういっちゃ何だけどよ。お前……お前らのコンビは戦闘能力じゃ群を抜いてる。それにゲーム感もそうだし、リュウキのよくわからねえ【目】ってやつもそうだ。すげえと思ってるよ。……2人とも、攻略組の中でも最強……あのヒースクリフ以上だとな。だから……だからこそなぁ。お前らをこんな所で死なすわけにはいかねえんだよ!キリト!リュウキ!」

伸ばした右手で真っ直ぐに指差し、さらに叫んだ。

「たった2人なんてやめろ!俺らと合同でパーティを組めば良いじゃねえか!蘇生アイテムはドロップさせた奴のもので恨みっこ無し、それで文句ねえだろう!」

……確かにこの男の……クラインの言葉は身を案じる友情から出ているんだろう。

だが………。

キリトは譲れない。



「それじゃあ、意味なんだよ。」



キリトはそう答えた。

目の前で死んでしまった嘗てのギルドの仲間。

彼らを……蘇えらす為には……。

この方法しか無いんだ。


そして、その気持ちは、リュウキにもよくわかる。

あの時、あの場所で……。

キリトの目の前で仲間が………仲間を失ってしまったんだ。

キリトのように付き合いがある奴らじゃない。

だが……。

目の前で理不尽に奪われる命。

あれは……あの苦しみは味わなければ……わからない。

そして、悔いるキリトの姿。

それは、かつての自分と……。









リュウキは剣を持ったままだ。

そして……。


「心配してくれるのはありがたい……が、2人で十分。それでもオレを、オレ達を止めると言うなら……それはアイテムの争奪戦……。奪い合いだ。どうしても と言うのなら……オレ達を斬ってでも止めろよ。」


そうクラインに言い……自分の身長よりも長い剣の柄を握りこんだ。

「ッ………。」

そこまで、言われたら……クラインは何もいえない。

斬ってでも、止める。

……そこまで 考えていなかったようだ。

だが、クラインはどこか……悲しい目をしていた。









エリアに第三の侵入者が姿を現したのはまさにその瞬間だ。









“バシュバシュバシュバシュッ!!!”









しかも 今度のパーティは10人どころじゃなかった。

ざっと見ただけでその3倍……近くはいるだろうか。

「……お前らも尾けられてたな、クライン。」

キリトも武器を構えた。

「……ああ、そうみてェだな!」

50mほど離れたエリアの端から、風林火山とオレ達を見つめる集団の中には、何人か顔見知りもいた。

風林火山のメンバーがリーダーであるクラインに顔を近づけ 低くささやいた。

「あいつら……≪聖竜連合≫っす。フラグボスの為なら、一時的オレンジ化も辞さない連中っすよ!」

それは……キリトは勿論リュウキもよく知っている。

トップギルドの一つだ。

そう……最強ギルドと謳われる血盟騎士団と並ぶ名声も誇る。

個々のレベルはリュウキより上は絶対にいない。

キリトと同等の者もいないだろう。

だが……。数が多い。

「……相手がデジタルデータなら、楽勝……と言ってやりたい所だがな……。」

柄を握る手に更に力が込められる。

リュウキも戦えば物量の差でタダじゃすまないだろうと考えていた。



その時だ。




「くそっ!!くそったれがっ!!」




クラインが叫び声を上げる。


「行けッ!キリト!リュウキ!!ここは俺らが食い止める!お前らは行ってボスを倒せッ!だがなぁ!アレだけ大見得切ったんだ!死ぬんじゃねえぞ!オレの前で死んだらぜってえゆるさねえからな!!」



クラインの怒声と共に、風林火山メンバー全員が構えた。


「………悪い、クライン。」


キリトは背を向ける。


「死ぬかよ。お前らも死ぬなよ。」


リュウキもそう言って背を向けた。

もう、時間は殆ど残っていない。

後数分で指定時間なのだ。

2人は最後のワープゾーンへと足を踏み入れた。





























モミの巨木は そのワープの先、ねじくれた姿で静かに……それでいて圧倒的な存在感で立っていた。

他に樹の殆ど無い四角エリアは積もった雪で真っ白に輝き、全ての生命が死に絶えていた平原に見えた。

そして……視界の端の時計が零時になるとどう氏に……何処からともなく鈴の音が響いてきて、その音に誘われるように梢の天辺を見上げた。

漆黒の夜空、光が伸びていた……。

それはよくよく眺めて見ると奇怪な姿をしたモンスターに引かれた巨大なソリらしい。

「……それで、サンタクロースのつもりか?」

リュウキは……強く柄を握る

「……耳障りだな。」

キリトも同様だった。

その奇怪な姿をしたモンスターは、サンタを思わせる巨大なソリから飛び降りてきた。



“ズズンッ!!”



盛大に雪を蹴散らして着地したのは背丈がゆうに3倍はあろうかと言う怪物だった。

その姿は顔の下半分からは捻じれた灰色のひげが長く伸び、下腹部にまで到達している。

リュウキが言うようにサンタを思わせる成り立ちだが、あまりに醜悪にカリカチュアライズしていた。

だが……。



「………用事があるのは、お前にじゃない。」
「ああ……さっさと出してもらうぞ!」






“キィン………”







それは白い世界。

闇夜の白い世界に写る、漆黒と白銀。


対照的な二者が……剣が交差した瞬間だった。






≪おおおおおおおおお!!!!!!!≫






2人はクエスト開始を待たない。

それは、まるで特攻するように……。










2つの剣閃が≪背教者ニコラス≫を穿ったのだった。













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