第十一話 ―狂人の狂気と狂器―
「おぉい、次は俺様の出番だよなぁ〜〜〜? 出番と言ってくれよぉ〜、兄貴〜????」
「オー、Mr.狂偽。まだワタシはリベンジしてないのデスよ」
「あ゛ぁん? 俺様に歯向かうのか、負け犬くぅんがよぉ〜?」
「OK。チャレンジャーとして受けまショウか!」
「おいおい、やめねぇかバカ共。ガキかお前らは」
「貴様はよくこんな所でお子様のプッチ○プリンを食べられるものだな。フハハハハ、道化が」
「んで、兄貴。今度は俺でいいよな〜?」
赤髪の男が俺の首に鎌をかけながら、詰め寄ってくる。今の時間は深夜。人通りが少ない所で、俺たちは集まる
「『逝って来い』」
ニヤリと笑いながら、俺は視線を奴に向ける
「ゲヘラテラテラ!! お任せをぉ〜!」
百代side
「お〜い、モモ先輩!」
「ん? おー、キャップ達か」
いつも通る帰り道に通る公園に、子供からずっとこの川神で過ごした人たちに出会った
私の大切な『家族』。一人はバンダナをしていて無邪気なキャップ。一人は私の舎弟で支えてくれた大和。一人は一途であり仲間のために武を振るう京。一人は努力の塊で、人一倍努力家のワン子。一人は変態ではあるが、決して曲がったことはしない岳人。一人は陰ながらサポートをして人の気持ちをわかってくれるモロ
それが私たち風間ファミリーだ
「姉さん、高校生活どうなの?」
「ふふん、何だ弟? 心配してくれるのか〜?」
「姉さんの中身が心配だから」
「よぉし、今日は気分がいいから鬼ごっこをやろう! もちろん、鬼は私な」
「逃げて!!?!? リアルの鬼が来るから!?!!?」
この日常が私は忘れられない。けれど……最近私にはもう一つの空間が出来た
それは……
「やぁ〜、どうもぉ〜」
『ゾクッ!!!』
公園の外から異常で異様な気を感じた。私は走るのをやめて、すぐさま『そこ』を見る
夕暮れなのだが、煌びやかに光る赤髪。外国人なのか、両目の色が違う赤と黄色の瞳。顔立ちはいい……好青年と思う
けれど
「あらら〜、何そんな殺気だってるのよ〜」ニヤリ
奴が笑うと、不気味だ
「な、なんのよう……ですか」
「お、おいモロ!!」
「ん〜〜〜????? なんのよう? なんのよう……ゲヘ、ゲヘラテラテラ!!!!!」
「「「「「「「!?!?!?!」」」」」」」
狂うように笑う。まるで何かを思い出したかのように顔をあげて、視線を変える
「武神の血を見たくてねぇ〜!!」
『ザシュッ!!』
「!? くっ!!!」ザザッ
「姉さん!!」
「へぇ〜、へぇ〜、へぇ〜? 面白いねぇ〜」
なんだあいつ。さっきまで見なかったが、いつの間にか奴の両手には大きな鎌を二つ持っている
間一髪避けたが、こないだの黒人よりかは遅いな
「なら〜これはどうよ〜〜〜−−!」
『ガン!』
重い! 気で腕をガードしているが、なんて威力だ。両手をクロスして、上から振ってきた鎌を防ぐ
だが……なんだ、この気持ちは。黒人との戦いも感じた、この癒される気持ち
「!? 思い出した! 姉さん!! そいつは狂偽だ!! 最近川神の不良どもをシメている奴だ!」
「狂偽? おい大和、何者なんだ?」
「狂偽 狂夜。『赤い死神』と言われてて、当然この川神に現れた『怪物』だ…!!」
「狂って有名狂偽 狂夜〜。よ・ろ・し・く〜〜〜〜〜〜〜〜−−!!」
『ガキン!!』
「くっ! ふふ、負けるかぁ!!!」
『ドォオン!!!』
「ッ!? ゲヘ! もっと狂おうぜ〜〜〜!!! 川神ィ〜!」
「フン、全くこの頃暇がなくて困るんだよな!!」
狂偽は片方を逆手に持ち、気を全部そっちに送っている
「『痛痕ノ一撃』」
「『致死蛍』!!!!」
気の量で奴の鎌はさらに大きく鋭くなり、私に振ってきた
必死に防ごうと無我夢中に気弾を打ち続ける
「!? お姉さま!!!」
突然ワン子が騒ぎ出した。この気の音よりも大きく
「姉さん!!! 猫に当たる!!!」
「え………」
無造作に打った気弾が、奴を通り越してその後ろに居る猫にめがけていった
「『静寂ノ一撃』」
『ザシュ』
「お、おい!? なんだ今のは」
「僕に聞かないでよ!?」
「何……今の。全然見えなかった、いや今動いてすらいなかった」
危機はさった。奴はそのまま猫の方に向かって抱きかかえる
私は腰が抜けた。そう、この私がだ
「狂うなら、もっと広い所でだな〜。じゃあな〜」
そのまま猫を抱えて、去って行った
広い所……良く見ればあんなに暴れたのに公園には傷一つついていなかった
むしろ仲間たちに聞いたら……
『お姉さま、あの人お姉さまが外した気弾を全て切り落としていたわ』
ー次の日ー
「うぅ〜、なんか屈辱だ〜」
「そんな事があったんだな。……さすがは狂偽だな」ボソッ