小説『ソードアート・オンライン〜幻の両剣使い〜』
作者:定泰麒()

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【黒の剣士】の追憶 

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 アイズ。それは、この混沌としたSAOというデスゲームにおいて最強と呼ばれている内の1人であり、【The Savior】という【攻略組】のギルドの団長であり、俺がこの世界で初めてできたフレンドでもあった。

 そして、数多くの謎を残して失踪。さらには、その直前に【両剣】というユニークスキルを発現させていたことを公開した。つまりヒースクリフの【神聖剣】に引き続き2人目のユニークスキルの持ち主ということだ。

 かくゆう俺も、ユニークスキルの持ち主ではあるのだが…【二刀流】それが俺に与えられたユニークスキルだ。当然このスキルの発現方法はわかっていない。まぁわかっていれば、ユニークスキルとは言わないのだが…しかし最近は、不思議なものでユニークスキル使いが増えた。

 それもアイズが失踪した次の日にだ。さらにそのユニークスキル使いは、【The Savior】のメンバー達から生まれていた。そしてそれが疑問視されるのに時間はかからなかった。

 それも当然であろう。アイズの失踪。それに連動するように【The Savior】 のメンバーにユニークスキルが現れた。なにか疑うのは、しょうがないことだ。

 そしてその中で、ある説が生まれた。

 「アイズは、茅場晶彦ではないか」

 という説だ。根も葉もない噂でしかないが、ほとんどのプレイヤーがこの説を信じた。アイズの強さ、そして謎の多さ、【The Savior】メンバーのユニークスキルの獲得。そのどれもがこの説ならばあてはまると考えたのだ。俺は、この噂を信じちゃいない。別に何か理由があるという訳ではないが。

 このことがもとで、【The Savior】内でもごたごたがあったらしい。その結果、アイズの右腕のシュタインや【four piese】といったメンバーは、【The Savior】から脱退したらしい。

 シュタインは、アイズを探すと言って消え、【four piese】の面々はやることがあるといって、去って行った。

 そして、最強と呼ばれた【The Savior】は、アイズの名声とともに失墜していった。その代りといっていいのだろうか、ヒースクリフ率いる【koB】が最強のギルドとして君臨し始めた。

 【koB】は、元から名声自体も高かった。【The Savior】がいなければ最初から彼らが最強と呼ばれていただろう。団長のヒースクリフを始め、副団長の【閃光】のアスナは、細剣使いの中でもトップの方であり、剣速の速さからついた【閃光】の二つ名は伊達じゃない。

 思えば、アイズと一緒に行ったクエストはどれくらいだろうか。決して多くはなかった。両手で数えられるくらいだ。しかし一個だけクエストではないが、アイズとともに行った作戦は、今でも覚えている。




 ラフコフ討伐作戦
 
 ラフコフというのは、笑う棺桶(ラフィン・コフィン)というギルドの略称だ。ラフコフは、【TheSavior】や【koB】といった【攻略組】などではなく、犯罪者ギルドと呼ばれるものの一つだ。さらに言うと、犯罪者ギルドの中でも突出して、最悪と呼ばれているギルドであった。

 奴らは主に、プレイヤーを殺すことに重きを置いて活動している。つまりこのゲームでの死=現実の死である世界では、彼らは人殺し集団に他ならなかった。

 その中でも一番厄介な者達がいた。いわゆるトップスリーと呼ばれる連中だ。ジョニー・ブラック、赤眼のザザそして、最も最悪なのは、圧倒的なカリスマ性を持ち、かなりの実力を持ったプレイヤーであるPoH。

 このPoHというプレイヤーとアイズの間には、数々の物語がある。最初のきっかけは、アイズが一人でいわゆる狩場と呼ばれる場所に潜りLV上げをしていた時のことだ。偶然なのか狙っていたのかは、謎だがそこにPoHをはじめとするラフコフメンバーが現れたらしい。1対20人というまさに絶体絶命な状態。しかし蓋を開ければ、アイズは無傷で生還し、ラフコフは8人死亡。7人重傷という結果に終わったらしい。

 この話自体は、偶然その場に居合わせたという情報屋の女から聞いたことだ。そしてその後も何度かアイズとPoH率いるラフコフとは戦闘があったらしい。

 そしてそれは、ラフコフ討伐作戦まで続いた。もちろんこの作戦の発案者は、アイズであった。このラフコフから殺されたプレイヤーは、100人近くおり、無視できる数ではなくなっていた。

 メンバーは【攻略組】の有志達で構成され、俺も参加した。

 そして、その作戦は成功と言っていい成果をあげた。しかし、どういう訳かPoHに逃げられてしまった。

 アイズは、そのことを悔しがっていたのを覚えている。そのことは、すごい印象に残っている。普段見れないアイズの人間性を垣間見れた気がしたのだ。

 


 現在の最前線は、六十四層目

 俺は、先日【二刀流】のための新たな剣を求め、アスナから紹介された『リズベット・ハイネマン武具店』に訪れた。そこで店主であるリズベットという少女に出会った。

 リズベット、通称リズは、腕の良い鍛冶職人だった。アスナが紹介するだけはあるなと思わせられるものであった。そしてそんな彼女となんの因果か、新たな剣の素材となる物を取りに行くことになった。

 さらに、あんな所に閉じ込められるとは、思ってさえいなかった。しかしそのおかげで、リズベットとアイズの間にあった話を聞くことができた。なんとアイズの【両剣】の武器を作ったのは、彼女だったのだ。

 アイズとリズベットの間で何があったのか。なぜアイズは、自身のギルドメンバーの凄腕の鍛冶師達ではなく彼女に頼むことになったのか。それは、第一層目まで話がさかのぼる。

 アイズとリズベットが出会ったのは、あの最初の悪夢の始まりである場所。

 〈はじまりの街〉の中央広場でのことだった。




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