小説『Tales Of The Abyss 〜Another story〜 』
作者:じーく()

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#120 変わらない想い



























【ベルケンドにて……】











ティアは病室に移され……

検査を受けた。

そして室内にて皆がティアを見ていた時……。



“ブゥン……”



室内へ医師が入ってきた。

「先生!ティアは……!!」

ルークが……心配そうにそう聞く。

「一先ず……命に別状はありません。」

そう……答えてくれた。

「みゅうっ!!よかったですの!」

ミュウは喜び飛び上がった。
皆も同様だった。

「ほんとに……よかった……。」

傍で手を握っていたアルも……ほっとしていた。



しかし……。



「ですが……彼女がこうなってしまった理由は……」

……医師がそこで言葉を濁した。

「何か… 問題が?」

ジェイドが聞く。

「それが……汚染された第七音素を体に取り込んでいるためです。」

「汚染された……第七音素?」

その意味が……皆よくわからなかった。

「ええ……。第七音素と瘴気が結合してしまっているのです。」

……瘴気は…人体に有害だ。

猛毒といっていい。

それと第七音素が結合してしまえば……。



第七音譜術士は……。



「なんで……そのようなことに?」

ナタリアがそう聞くと……

「推測するに彼女は……大陸降下作戦の際、パッセージリングから大量の第七音素を吸収したのでしょう。創生暦音機関は……汚染された第七音素を含んでいるはずです。」

ジェイドが……そう結論付けた。

……原因はそうだろう…。

あの時……ティアは僅かな時間とは言え……苦しそうに蹲っていたのだ




「ってことは……今後も降下作業を行うとティアに瘴気が流れ込むっていうのか?」

「……でしょうね。」




残酷な……結末になりかねない。

そして医師も……。



「今後も行うというのであれば……命の保障はできません。」



はっきりとそう言った。

「そ……そんな……。」

アルはティアの手をしっかりと握り締めた。


「あと……。」

医師は、アルの方を向く。

「貴方の怪我の件です。」

今度はアルの番だった。


「はい……。」


アルはティアの手を握ったまま……その体勢のままで聞いていた。


「貴方の腕を構成する音素が……ボロボロになっています。血中音素の損失現象も著しい……。そして、何よりも恐ろしいのが、その崩壊は、連鎖的に全身へと広がって行くとわかったのです。」


その事実に皆が驚愕する。

アル1人を除いて……。


「それはどう言う事ですか?」


ジェイドがいの一番に聞いていた。


「貴方の傷……以前診せていただきました。血液も採取し……調べてみました。その血中音素が、時と共に崩壊していくのがわかったんです。連鎖反応を起こしながら……。なぜ、そのような事が起こるのか……わかりませんでした。」


治す手段も無い。

そう言うも同然だった。


「そんな!!ティアだけじゃなく……アルまで!!」

ルークはショックを隠せない……。

「原因はわかっているでしょう?アルの力は生身の人間が使用できる限度を遥かに超えている力だからです。アルが……アルの力がいかに強大であったとしても……アル自身は人間なのです。無茶な力には代償が付く……そう言う事なのでしょう……。」

ジェイドが……アルの傷についても推察をしていた。

「………。」

アルは……黙っていた。


「貴方の腕がまだ無事なのは……それもあなた自身の力のおかげだと推察できます。ですから……貴方の力の正体がわからぬ以上は……過度な力の使用はおやめください。力が体を維持する余力がなくなったとき……反動がくる可能性があります。」


医師の忠告。

それは守らねばどうなるか。

はっきりと言われているも同然だった。





















別室にて……。


「ティアは……今は落ち着いているよ。」

アルがティアの病室から出てきた。

「アルも寝ていてください。……貴方の怪我の事……ボクの予想以上でした。これ以上はダメですよ!」

イオンがそう言うけど……。

「大丈夫。先生も言ってたけど。これ……オレの力で抑えられるみたいだから……。」

アルは笑ってそう言っていた。

「それにさ……?そう簡単に崩壊するのなら、もうオレ……きっと死んでいたと思うよ?「そんなことを言うな!!」ッ……」


ルークが……叫んだ。

「言うなよ……死ぬとか……。お前も言ってたじゃないか……目の前で誰も失いたくない……って
!それはお前も含まれてるんだぞ!」


「ルーク……。」


アルは……俯かせる。

「……今後はアルには同行は控えてもらう必要があるかも知れません。」

ジェイドがそう言うけど。







「……それだけは聞けない。絶対に。」







アルは頑なに拒否をした。

「……アル。医師にも言われたでしょう?これ以上は危険すぎます。」

ジェイドは言い聞かせるように説得を続けた。

「それはボクも同感です。少なくとも医師の判断がでるまでは……。」

イオンもこれ以上アルの同行は反対だったようだ……。

だが、アルは表情を変えず……。



「……ティアはつれていくんだろう?」




アルは……逆にそう聞く。

「………ええ。彼女がいなければ、この作戦は成り立ちません。パッセージリングの操作は彼女なしには出来ないのですから……。」

このことも苦渋の決断なのだ。

ティアの……命がかかっているんだから。



「なら、話は決定だ。……オレも行く。」



アルはそう言う。

「………アル。ティアにこれ以上の心配をかけてしまえば「ティアは…」ッ。」

割り込むようにアルは続けた。




「オレが助ける。……オレの力ならティアの体の瘴気……消す事は出来なくても、抑える事は出来る。それはアクゼリュスで確認済みの事だ。」

「「「!!!」」」




その言葉に皆が驚いた。

だが……思い出しもしていた。

アクゼリュスの坑道で……。

瘴気に苦しみ……動けない人たち。

それは何十人といた。

アルはその人たちを……一時的に安定状態まで救ったのだ。

大規模治癒術……で。

それをティア1人に集中させたら?

……効果はきっとあるはずだから。



―――……否、助けてみせる






「……駄目だって言わせないよ。ティアが死ぬかもしれないんだろ?それなのに……指を咥えて待ってろなんていわれたら、オレはなんとしてでも付いていく。オレには……彼女を失うなんて考えられない。」




強く……強く訴えるようにそう言う。

深い愛情も……感じた。


「ッ………。」


選択の余地は無いこと。

それは皆が思った。

ティアがこの作戦に必要。

そして、そのティアが死ぬ危険性を回避する事ができるのはアルだけなのだ……。



その場で誰もが……完全に納得できなかったが……。

アルの同行は認めていた。

大事に至らぬように、皆其々が注意する事。

それを大前提にしてだった。


そして……話が終わりかけていた時。



「……盗み聞きとは趣味が悪いですね。」

ジェイドが入り口の方を見ながらそう言う。

そういったその次には……。




“ガチャ……”




扉が開いた。



扉の外にいた人物とは……。

「お前は……スピノザ!」

そう……イエモンさん達の仲間だったスピノザだ……。





















スピノザは……席につくと……。

「気づいたんじゃ……自分の過ちに……。」

そう徐に……話した。

「過ち……?」

「ヴァン様に協力すれば……望みどおりの研究が出来る。そのことしか………考えていなかった。その為に……ヘンケンたちが…………」


その言葉を聞いたアニスはすぐさま駆け寄る!


「何言ってんの!!今更そんなこと!信用できるわけないじゃん!!」


憤怒だ。

目の前で……殺されていった人たちをその目で見ていたアニスは信じる事が出来なかった。

「………ッ……。」

スピノザも……。

言葉がまるで出てこなかった。

何を言われても当然のことをしたのだから。


不穏な空気が流れていた時……。


「オレ……この人のこと、信じられると思う。」


ルークが……そういった。

「ルーク!!!」

当然アニスは驚く。

「…………。」

アルは黙ってルークを見ていた。


「この人は……オレと同じなんだ。……アクゼリュスを……消滅させた……あの時のオレと……。」


「む〜〜……アルは!信じれるって思うの?」


アニスはそこでアルに聞くことにした。

ルークが言うように……スピノザが信頼できるのか?それを……。


「……犯してしまった過ちは……失ってしまったものはもう元には戻らないよ。」

アルは静かにそう言う。


「ッ……。」

その言葉に……スピノザは勿論……。

ルークもかみ締めていた。


「でも……償って……前へ向かって歩き出す事はできるってオレは思ってる。……今までのルークを見てきたんだから……。ずっとさ。」

そう言い……ルークを見て笑った。

「アル………。」

ルークは……胸がいっぱいになりそうだった……。

気を抜けば……涙が流れ落ちてしまうほどに……。



「ぶ〜〜……。」


アニスはまだ納得できてないようだが……。

「貴方の決心が本当なら……やってもらいたいことがあります。」

ジェイドがそう進めた。
























ベルケンド研究施設の外にて……。


アルは、そのまま病室に残り……

残りのメンバーは宿へ向かっていた。

「大佐ぁ……スピノザの事……いいんですか?」




アニスは……やはり納得できていないようだ。

「許したわけではありません。しかし、外殻大地を下ろし、魔界の瘴気を封じる事ができることが可能かどうか?専門家に検証してもらう必要がありますからね……。」

ジェイドらしい打算的な考えだった。

でも……!

「だけど!裏切り者だよ!」

アニスはまだ……。

「オレは信じる!」

ルークはきっぱりとそういった。

「彼の目は真剣でした。それに……ルークやアルも言っているのです。ボクは2人の事ならば……何よりも信頼できます。」

「ッ……//」

イオンの言葉に……ルークは少し照れていた。


「はは…。それにさ?アニス。見張りもつけることだし、裏切るようなおかしな事はできないさ。」

「今は信じるしかないようですね。」


ガイもナタリアも信じる方だったようだ。



アニスは……。


(何で皆そう簡単に……【他人】を信じる事ができるの……?バカみたいだよ……。)


胸中では非情に複雑な思いを張り巡らせていた……。

皆の事は自分も信じられる程までに信頼しきっている。

皆が自分を見る目も……それに同様だった。

だから……。

だからこそ………凄く苦しいんだ。


















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