小説『Tales Of The Abyss 〜Another story〜 』
作者:じーく()

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#59 果たせなかった約束

































ヴァンの言うとおりだ………。

アクゼリュスの崩落は止まらなかった………。

それはまるでこの世の地獄のような光景だ………。




“ドガアアアアア!!!”




大地の崩壊がアクゼリュスを襲っていた。



「うわああ!!!!」

「なんだ!!!!!」


坑道にいた人たちは………。


「ぎゃあああ!!助けてくれえええ!!!」


なす術がない………。



“ズガアアアアアアアア!!!!!”



次々と大地が崩壊していく………。

そして、坑道も崩れてゆく……。


「くそっ!せめて!!子供と女だけでも!!避難を!!!!」


必死に叫ぶが………。


ここにいるのは………動けない病人ばかりだ………。



“ゴガアアアアアアアアアアアアア!!!!”



坑道の中でも最も広い空間が……一気に崩れるのをみた。




「!!!」




ガーランドは………その瞬間……全て理解した。

自らの運命を…この街の運命を悟ったのだ。


その時彼がとった行動……。


それは………。



「レイィィィl!!!サラァァァァ!!!」


彼は、最後の力を振り絞り最愛の娘………そして妻の下へと駆け出したのだ………。

位置的には、間に合わない……だろう。

だが、それでも………、

坑道が崩れてきても……。

足を止めることはなかった。



そして………。



その極限の中、もう1つ脳裏に浮んでいた。

それは……もう1人の息子の………。



「アッ……」




“ドゴオオオオオオッ…………”




その音は……坑道の全てが崩れ落ちる瞬間だった。




side out













セフィロトにいたメンバーは……。

ティアの譜歌に守られながら………

ゆっくりと………アクゼリュスから落下していく………。


「ど………ッどうなってるの!?私たち どうなっちゃうの!?何処まで落ちていくのーーーー!」

アニスが叫ぶ………。

無理もないだろう……。

底の方に見えるのは……いや、底なんか見えてない。

ただ……見えていたのは、紫色の不気味な空間だった

「今はティアの譜歌を信じましょう!それしか………ッ!?」

ジェイドも、今の状況で……冷静でいられるのには限界があったが……。

そういい、アニスを……そして皆を落ち着かせる。

そして……ジェイドに抱えられていたアルは……。

「う………………………うう………………」

徐々にではあるが……意識を取り戻しつつあった。

それを見たジェイドは安堵し、

崩落していく大地を………アクゼリュスを見つめていた。




















そして落下した先は………

紫色の泥のようなものに浮いている大地の……アクゼリュスの残骸の上だった………。

まず……真っ先にしたこと……それは、




「生存者は?いませんか!?」




必死に皆でその小さな大地の周辺を探すことだ。

その残骸の大きさは……決して大きいとはいえないが……。

ひょっとすれば、自分達のように助かっている人もいるかもしれないからだ。

だけど………その希望は………打ち砕かれる事になる。

なぜなら……。

その場所にいたのは……アクゼリュスの人たちと……そして、神託の盾(オラクル)の死体だけだった……からだ。


「だ………だれ………か?だれ………か………ッ!」


アルも声にならない声を………振り絞る………。

傷は……ティアとナタリアに治癒をかけて貰ったが……。

全くと言っていいほど、塞がっていない。

全身から出ていた血も止まっていない。

だが……血が出ていても彼には関係ない。

つい先ほどまで意識がなかった体にムチを打ち………。

全身を襲っている痛みなど忘れて………。

そして、仲間の制止も振り切って………

………生きている人を探していたのだ。







「ぁッ………………………」






捜索のさなかの事。

アルは膝が崩れ落ちていた。

それをティアが見つけると……。



「ッ!アルっ!血を流しすぎよ!まずは落ち着いてっ!!」


ティアは膝をついているアルを見て………傍に来て譜術を掛ける。

だが………アルは全く反応しなかった………。

ただ………目の前の亡骸を見て………。


「ファ………ファン……… さ………ん………?」


アルは止まった時が動いたかのように……呟いていた。


そう……アルが見つけたその亡骸は……… ファンだったのだ。


「………え?」


ティアは、反応がなかったアルの声に驚いて………

治癒をしていたせいか、その時初めて、アルの膝のそばに………人が横たわっていたのがわかった。


「ッ………ア……」



そしてアルに話しかけようと、したが………



「ティア………………。」



傍にまで来ていたジェイドはティアの肩に手を置き………

今は、何も言わないほうが良い………と、目で告げた。

ティアも……直ぐに理解したようだ。

アルは………。



「なん………で? はは………寝てるんです………か? だって……… ほ………ッほら………!起きて………ください………よ……… 助かったら………皆で………飲み明かそう………って 言ったじゃないです………か。」

両の目から……… 一筋の涙が流れ落ちる………。

それは、止まることなく……。

そして、アルはファンの亡骸を……揺さぶり続けた。

揺さぶっても……揺さぶっても……何も……………。

「お……起きて………っ……。ほ…ほら……皆で………一緒に……あ………さ………まで………って……… それにっ………!あのとき………だって………いろいろ………おしえてくれる………って、やく……そく……したじゃ…………ないですか………。」

一筋だった涙が大粒となって………零れ落ちる………。

その涙は止まらない………。

その場所では……アルの……言葉、だけが響き渡る。

アルは……ファンの亡骸の前で泣き続けてた………………。










「アル………………」

「ッ………………」

ティア………そして、イオン………ミュウがそばに来る………。

アルの傍に………。

そして、ジェイドも顔をそらしメガネを上に上げていた。

軍人で……こう言った事は、経験が多少はあるのだが……。

今は考えても………考えても、アルにかける言葉が見つからなかったのだ。

言える言葉が全く……見つからないのだ………


「あ……ある…………うぅぅ………………」


アニスもそんなアルを見て、涙を流し………。


「ッ………………。」


ナタリアも…口元に手を当て………目をうるわせていた。












それは、時間にして数十分程だ。

だが……それでもその時間は永久に感じるほど長かった。

その時間感覚を戻したのが……。

「なんだよ………これ………?」

ルークが目を覚ました事でだ。

惨状を目にし唖然としていた………。

「ご………っご主人様ですの………。」

ミュウが…真っ先に気がつく………。

そして、傍に飛んでいった。


「何で?何だこれ?何でこんな事になってんだ? 全然意味がわかんねーぜ??」


ルークは………驚きながら 話す。


アルのことはイオンに任せ………皆ルークの方を向く。


「ティア………説明していただけますね?」


ジェイドが………そう言った。

「はい………。ここは魔界(クリフォト)と呼ばれる世界です………。あなた達が住んでる世界は………外郭大地と呼ばれています。それは、セフィロトによって支えられている空中大地なのです。」

そうティアは………告げる………。

事実……頭上を見上げると……光が見える。

そこが、今までいた世界なのだろう……。

そう……【外郭大地】と呼ばれている………。

「意味が分かりませんわ………………。」

ナタリアがそう言う………。

仕方ないだろう。突然そんな事を言われても……直ぐに理解できる方がおかしい。


「………………………」


アルはその事実を聞いても反応してない。

いや………何も頭に入らないのだろう……。

今は仕方ない事だろう………。



「遥か昔は………大地はこの魔界(クリフォト)にありました。2000年前………。このオールドランドを原因不明の瘴気が襲い………大気を汚染してしまったのです。そこへ………ユリアは予言(スコア)をもとに………大地を空中へあげる計画を立てたのです。」

「それが………外郭大地………」

「私たちの大地が………空中に浮いている… 信じられません………。」

皆……信じる事が難しいようだ。

無理もないだろう………。

話が………大きすぎるのだ。


「その話しを知ってるのは………ローレライ教団の詠士職以上と………魔界(クリフォト)出身者のみです。」

イオンは、アルの背中を撫でながら………そう言う。


「………………イオン。 それに……みんな……。ありがとう……… もういい………よ。」

アルは………初めてそう言った。


「………………アル。」

イオンは、まだ心配そうに見ていたが……。

アルから話しだした。

………皆はアルの方を向いて……。


「は………はは………………それに……いつまでも………ふさぎ込んでちゃ………みんなにも悪いし………。こんなに………すがりついてたら………ファ…ンさん………も………安心できない………と、思う………から。」


まだ………目から涙が零れ落ちていた………。

が……必死に顔を……戻していた。



「………………わかりました。この話の続きはとりあえず、タルタロスで行いましょう。この大地よりはまだ安心です。緊急譜術装置が発動してるはずですから、この泥の上でも浮いていられるはずです。」


ジェイドが、アルに気を使う。

大丈夫……とは言っても、この場所にいては………そう思ったのだ。


そして皆は…………死臭の漂う………この場所、アクゼリュスの残骸からから離れた。




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