教室の窓から見える山がうっすらと雪化粧をしていた。
2週間前、東京はあんなに暖かったのは嘘みたいに冬がちかづいている。
あの山の反対側に東京がある。東京から雪化粧は見えるのだろうか?
見えないだろうな。
「先生、その漢字間違ってます。」
急に現実に引き戻された。
「あっ本当だ。悪いね」
慌てて黒板消を持ち、修正作業に入ろうと黒板に向き直った。
「先生、最近ぼーっとしすぎだよ」
「具合悪いの?」
「なんか最近授業もつまんないよ。昔の先生に戻ってほしい」
子どもは見ていないようで見ている。わかってないようでわかってるのだ。
突然の言葉に驚き、動揺を隠しきれなかった。
持っていた黒板消しが足元に落ち、スニーカーがチョークの朝やかな赤がついた。