東京でも有数の学生街の駅で地下鉄を降りた。
構内から出ると外は雲ひとつない晴天だった。街は土曜の昼下がりのせいか道行く人は皆浮かれているように見えた。
突然会いに来たら喜んでくれるんだろうか。それとも迷惑なのか……
大丈夫、きっと喜んでくれるだろう。
浮かれた街の雰囲気が自信のかけらもなかった私を後押ししてくれた。
佐和子からもらった地図の通りにコンビニを曲がると、目的のビルの後姿が見えてきた。
少し緊張しながらビルに近付き大きく息を吐く。
ゆっくりとした足取りで正面に回った。
そこで信じられないものを目撃することになってしまった。
晃が後ろを向いてたっていた。そして優海ちゃんが泣きながら晃に抱きついていた。
急に真夏の昼下がりに外を歩いている時のような、頭がクラクラして倒れそうになる感覚に襲われた。
向かいの工事現場の騒音が頭の中を通り抜けて行った。
「美香先生……」
優海ちゃんが私に気がついた。
振り返ったあいつと目が合った。気のせいか申し訳なさそうな顔をしていた。
「どういうこと……」
私が声が震えながら尋ねた。
「どういうことって見ればわかるだろう。こういうことだよ」
あいつが平然と言い放った。
「優海ね」
優海ちゃんが必死に何か喋りかけたのをあいつが阻止した。
「俺、やっぱりさ、Aランクの女じゃなきゃ嫌なんだよね。最初はさお前珍しくて面白かったけどさ、もう飽きた」
そう言うとあいつは優海ちゃんを抱き寄せた。
「……そう、わかった」
私は必死に声を絞り出し、後ろを振り向いた。
ショックを受けていることを知られまいと、来た道をゆっくりとした足取りで歩いた。目から溢れてくる涙が止まらなかった。
歩けば歩くほど工事現場の騒音が小さくなっていた。