第1章 試召戦争
第1問 プロローグ。それは主人公が輝くとき。
化学
【第一問】
問 以下の問いに答えなさい。
『調理の為に火にかける鍋を制作する際、重量が軽いのでマグネシウムを材料に選んだのだが、調理を始めると問題が発生した。この時の問題点とマグネシウムの代わりに用いるべき金属合金の例を一つ挙げなさい』
姫路瑞希の答え
『問題点……マグネシウムは炎にかけると激しく酸素と反応する為危険であるという点。合金の例……ジュラルミン』
教師のコメント
正解です。合金なので『鉄』では駄目という引っ掛け問題なのですが、姫路さんは引っかかりませんでしたね。
土屋康太の答え
『問題点……ガス代を払っていなかったこと』
教師のコメント
そこは問題じゃありません。
吉井明久の答え
『合金の例……未来合金(←すごく強い)』
教師のコメント
すごく強いと言われても。
橘悠里の答え
『合金の例……アダマ○チウム』
教師のコメント
あなたは何処のミュータントですか
―――文月学園。
ここは世界でも最先端を行く技術が導入された進学校である。その特徴の一つは試験召喚システム。もう一つは成績優先式の教室設備。一年生の終わりに振り分け試験を行い、その成績によってAクラス〜Fクラスの六段階にクラス分けされる。
そして新学期。ここに一人、期待を胸に登校して来る者がいた。
「今日はいい天気だなぁ」
ディープグリーンの髪を肩にかかる程度に伸ばした、アホ毛が特徴の中性的な顔つきの男子生徒『橘悠里』は、青空を眺めながら校門を目指していた。
「橘、今日は早いな」
校門の近くにいたのはいかにもスポーツマンといった体格の教師だ。
「あっ、西村先生。朝からご苦労様です」
その教師の名は西村宗一。トライアスロンが趣味なことから一部の生徒には畏怖の念を込めて『鉄人』と呼ばれている。主に生活指導担当で、粗相をした生徒に行う『鬼の補習』は全生徒から恐れられている。
「ほら受け取れ」
先生が箱から一つの封筒を取り、手渡す。
「全校生徒に手渡しなんて大変ですね」
「まあ、これも仕事だからな。ウチは世界的にも注目されているから、こういったやり方もその一環だ」
「なるほど……」
適当に会話をしながら、悠里は受け取った封筒を開封する。
「まったく、お前ももったいないことをしたものだ。お前の実力ならAクラスは確実だっただろうに……」
「あはは……。前日に芝居用の衣装を作っていたもので……」
「部活に力を入れるのは構わないが、それで風邪を引いては元も子もないだろ……」
先生の小言をバックに、封筒に入っていた紙を開く。
「残念だが……振り分け試験に欠席、途中退席した者は0点扱いだ。よってお前は―――」
『橘悠里……Fクラス』
「―――Fクラスだ」
こうして文月学園二年Fクラス、橘悠里の学園生活が始まった。