小説『めだかボックス 〜From despair to hope 〜』
作者:じーく()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

第4箱 「ここから…めだかちゃんが始まったんだ…」







劉一は…

暫く人吉家にご厄介になっていた。

善吉も友達がお泊りに来た!って感じで喜んでいる。

久しぶりに感じた・・・

家庭というものの暖かさだ・・・。

また…この温もりを味わえることに…感謝をしていた。



そして・・・病院の方は指示があった為 毎日のように通院した。



異常と言うことをストレートには言わないが、

劉一はそのことをしっかり理解していると感じたのだろう。

しかし、僕の異常性を見ても、年齢的にも暫くは通院した方が良いと瞳さんが・・・瞳先生が判断したのだろう。


そうとは言わなかったけれど、大体想像がつく。


そして、場所は変わり…


【総合病院】


検査を終えた劉一は…

「病院は別に全然苦じゃないけど・・・ 同じような検査がどんどん続くのはさすがに嫌気が出てしまうなぁ・・・ 動物じゃないんだし・・・」

そう思っていた。

その日も検査はすみ・・・ 善吉が待っている託児室の方へと向かっていた。


その道中。


周囲が急に騒がしくなっていた事に気が付いた。




「おい!! 13番―― 黒神めだかはどこに行った!? 探せ!!!」

「まだそんなに遠くに行ってないはずだ!!」


・・・・・・・・・・・・

どうやら誰かが逃げ出したみたいだ。



「黒神・・・めだかって・・・ああこの間のあのコか・・・ あのみそぎくんと話をしてから表情が凄く硬くなっちゃってちょっと心配してたんだけど・・・こんな事になっちゃったなんて。 みそぎくんも退院してるみたいだし、」


心配だったけど、

とりあえず、捜索の方は先生方に任せ。

善吉を待たせている為、先に託児室の方へ向かった。

でも・・・


「帰りが遅いと心配かけちゃうから、善吉くんに説明してから、ちょっと僕も探してみようかな。めだかちゃんを。 っと・・・ついた!」


目の前には託児所が!




【託児所】


ガラガラ………

扉を開けた向こうには…


「む・・・?」


女のコがいた・・・

と言うか・・・ 入ったと同時に、睨まれちゃった・・・ グスン・・・

って・・・


「あ!君は・・・」


中にいたのはめだかだった。

彼女は知恵の輪を解いていた。

入ってきたのが僕だと確認すると再び知恵の輪解きに戻った。

すると直ぐに知恵の輪を解いて見せた。

「ほら解けたぞ。」

そのまま善吉に渡す。

「うわあっ!すごいねきみ!りゅうくんにしかとけないって思ってたのに!!きみもすっごいや!!ありがとうっ!」

善吉は喜んでいた。

「・・・礼には及ばない 私にとっては取るに足らないことだ。」

そう言っていためだかの目は・・・

やはりあの時と同じだ・・・

「あっ!!りゅうくん!お帰りー!!」

善吉はめだかに解いてもらった事がよっぽど嬉しかったのか、弾けるまでの笑顔だった。

「うん!!ただいま!それで めだかちゃんも、こんにちは。」

善吉に一言いい・・・そしてめだかにも挨拶した。

「ふむ・・・」

「あははは!」

めだかは愛想なくこちらを向いただけで、善吉は笑っていた。

すると善吉は何やらパズルを取り出し、


「さっきの続きでさっ!これも解いてみて!!」



めだかにパズルを差し出した。


すると・・・めだかは無言で受け取り・・・先ほどの知恵の輪より遥かに早く解く。



「わあああ!!!すっごいやっ!じゃあこれ!!」



善吉はさらに・・・ルービックキューブ・IQパズル・・・etc



と出していく。

めだかはさらりさらりと解いていく。


「すごいね!君!」


ここにある知育玩具はあきらかに対象年齢が高いものだ・・・

それをあっさりと解いていくめだかを見ながらそういった。


「すごくなんかない。」


唯その一言だけ言い、

パズル解きに戻る・・・

あの時の素敵な笑顔とは違う…

そのそっけなさに寂しさを僅かに覚えたが・・・

それを吹き飛ばすくらい、善吉はハイテンションだった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


数分たって・・・

この部屋にあった全てのパズルを解き終わった。


善吉はハイテンショーン!!


ピョンピョン飛び回っていた。


「あははは!転んじゃうよ?善吉くん!!」

そう言ったが・・・

やっぱり止まらない。

「君はすっごいや!!すごいすごいすごーい!すっごくすごいや!!」

凄い!その言葉のみ!

「もう!僕のテンションも上がっちゃうよ・・・」

劉一もつられて笑顔になる。


めだかはと言うと・・・

「・・・・・・・・・さきほども言ったがすごくなんかない それにすごくたって 何にもならない 私が生きている事に 私が生まれてきた事に 何の意味もないのだから、」

そう言った。





「それは違うよ!」




つい・・・声が大きくなってしまった。

君は・・・僕の・・・大切な人が憧れた存在だったから・・・そんな風に言わないで欲しかったし、やっぱり聞きたくなかった。

それに・・・

あの時の顔の方が今の顔よりずっと素敵だ。

めだかは突然の大声に一瞬だけ驚き、直ぐに表情を戻し こちらを見た。


「意味の無いことなんて無いよ!ねえ善吉君・・・?」


すぐに善吉へと話を繋いだ。


善吉に言った訳は・・・

ほんのちょっと前まで・・・僕も世界なんて意味の無いもの・・・

こんなに苦しいのなら・・・と、

そう思っていたのだ。

そんな僕より善吉の声の方がきっと彼女の心に届くだろう・・・そう感じたんだ。



「うん!僕もこの世に意味のないことなんてないと思うけど?」



そうはっきり答えてくれた。

「・・・・・・・・・・・ だったら 私に教えるがよいお前たち、私は一体何のために生まれてきた?」

ため息交じりでめだかが言った。


「・・・わからないかな?君と善吉君は初めてあったんだよね?」


そう善吉に聞く。


「うん!」


「初対面の相手を・・・ 僕の初めての友達をこんなに笑顔にしてくれる君だもん!」


僕がそう言うと善吉が続けた。



「うん!!きっときみは みんなを幸せにする為に生まれたんだよ!! それにきっとりゅうくんも幸せにしてくれるよ!!」



笑顔で・・・今日一番の笑顔でそう答えた。



「!!!!」



めだかの表情が一気に変わる・・・・・

先ほどの表情が嘘の様だ・・・



「善吉君・・・」



僕も表情が変わったと感じた。


それに・・・覚えててくれたんだね・・・


自然と・・・その場にいた全員・・・笑顔になっていた。

そして・・・めだかは。



「私は見知らぬ他人を幸せにする為に…生まれてきたんだな・・・」



そう自分に言い聞かせるように呟いていた。

今日この瞬間から・・・

【箱庭学園 生徒会長 黒神めだか】に繋がる人生がスタートしたのだった。

-5-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




デッキ構築型カードゲーム めだかボックス カードゲーム 学園お花畑化計画
新品 \4980
中古 \
(参考価格:\5250)