小説『めだかボックス 〜From despair to hope 〜』
作者:じーく()

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第3箱 「この世に意味は…どうなんだろう?…けど、僕は…救われたんだね。」




女の子と男の子…

めだかちゃんとみそぎくんがいなくなって…

暫くして。


「劉一くーん! 三番検査室に入ってくれるかな?」


声が聞こえてきた。

どうやら、自分の番が来たようだ。


「はい。わかりました。」


そう言い、検査室へと入っていった。

相手は、瞳先生じゃなかったが、とりあえず。

いろいろと問診をしたりテストをしたり・・・

それは何時間にも及んだ。






疲れてはいないが・・・


「善吉君を待たせちゃったな・・・」


急いで託児室の方へと向かった。




【託児所】


そして託児所の中に入ると…

善吉は何やら座り込んで考え事をしていた。

「善吉君ゴメンね。遅くなって」

後ろから声を掛ける。

「あっ!りゅうくん!んーん!大丈夫だよ!」

こっちを向くと笑顔で答えてくれた。

「何をしてるの?」

善吉に近付き問いかけると・・・

「これがどうやっても解けなくてね・・・・」

すこし残念そうな顔をする・・・

それは知恵の輪だった。

聊か2歳児には・・・いや幼児向けの知育玩具とはいえないと思った。

「ああ・・・それは難しそうだね。善吉君は解いてあげたら嬉しい?それとも最後まで自分の力でやり遂げたい?」

およそ幼児に言う幼児の言葉ではなかったが・・・

そう聞いてみた。

「えー!どうやっても解けないんだ!解いてくれた方がうれしいよ!」

善吉は迷わずそう答える。

「そっか、じゃあ貸してごらん。」

そうやって知恵の輪を受け取る。

そして解こうとした時、

テレビに目を向けてしまった。

託児室にはあまり似合わない内容の話しだ。

それを見ると・・・




カシャン・・・・・・




知恵の輪を落としてしまった。

「りゅ・・・りゅうくん?どうしたの??」

驚いて善吉も近付いてくる。

「あ・・・あれ? おかしいね。僕どうしたんだろう・・・」

涙が・・・次々出てきた。

目からあふれ…流れ落ちる…

それはテレビの内容のせいだ。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ある幸せの家族が・・・

突然不幸な事故にあい・・・

夫のみを残し、皆他界してしまうと言う・・・

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



なんでこのような内容の話が流されているのかは理解できない。

幼児には難しすぎる内容だろう。



だけど・・・



「りゅうくん!どこか痛いの?大丈夫なの??」

善吉も目に涙を浮かべながら心配してくれていた、

「善吉君・・・僕・・・とっても悲しい事があったんだ・・・」

幼児に話すことではない。そして幼児が話すような内容ではない。

明らかに傍から見れば異常だったが、そんなのは関係なく話す。

「大切な・・・ものをなくしちゃってね・・・ もう戻ってこないんだ・・・ もう・・・何もかも・・・終わりのような感じがするん・・・だ・・・ 」

涙を流していた。

「りゅう…くん・・・」

善吉も・・・幼いなりに必死に慰めようとしてくれていた。

…頭を撫でてくれた…

だけど…涙は止まらない…

「彼がいったこと・・・正しかったのかな・・・? この世に意味なんてないんだ・・・ こんなに悲しいんだ・・・」

賛同してしまうかのように…そう呟く。


「まってよ!意味なんてないことないさ!」


それを聞いた善吉が叫ぶ。


「…え?」

 
声量に驚いて善吉の方を向く。

「確かに・・・りゅうくんはつらい事があったんだよね・・・ でも・・・それでも意味ないなんてことないよ!」

そう言い切る。

「なら・・・なんで僕は・・・こんなに悲しい気持ちになるのかな・・・ 苦しい気持ちに・・・」

劉一は・・・顔を俯いた。

「僕はりゅう君に会えて嬉しかったよ!!お友達が増えたしね!意味がないなんて事は無いよ! りゅう君が・・・辛いのは・・・僕には分からないけど。 それは、君はこれからきっと幸せになる為に!今があるんだと思うよ!そうだよ!きっと!きっと!今のことが吹き飛んじゃうような幸せがりゅう君を待ってるからだよ!」

・・・善吉の明るい・・・無邪気な笑顔は・・・

僕の心を溶かしてくれるようだ・・・

そっと・・・優しく・・・包み込むように・・・・・



「・・・・ありがとう」


劉一は焦点が合わない瞳で、善吉を見る…


「僕は…君に出会えたことが…幸せだよ…ほんとだ…よ…  ありがとう…」


心からそう思えたのだ。

そして再び善吉が頭を撫でてくれた。

不思議と・・・心が落ち着くような・・・

そんな感じがしていた。





たくさん泣いた…

もうかれちゃったと思っていたのに…

そして、たくさん撫でてもらった…

人と人の温かさを改めて教えてもらった…

初めての友達に…………










暫くして…



「さー!仕事終わったわ。善吉くーん!りゅーくーん!帰るよー!」

善吉と遊んでいると。

瞳さんが帰ってきた。


「お疲れ様です!」「おかえりー!!」


善吉と劉一がそれぞれ言う。

もう涙はなく、すっかりと元気になっていたようだ。


「うん!ただいまぁー!じゃあ 帰ろっか。」

そう言うと・・・そのまま2人と手を繋ぐ。

「え・・・っと 僕は??」

「ん?りゅーくんも一緒にね。」

笑顔でそう答えた。

その言葉を聞いて善吉は喜ぶ。

でも僕は・・・

「ご迷惑・・・じゃないですか?」

そう答えた。

すると・・・

「こぉーら!」


コツン!


瞳さんが軽く拳を作り頭を小突いた。

「子どもがなーに遠慮してるのよ!大丈夫!ぜぇ〜たい 1人になんてさせるわけないでしょ? 一緒に帰りましょ?」

そう言う・・・ とても優しい笑顔で。

「そーだよ!!りゅーくん!」

善吉も同様に優しい笑顔だった。

「あ・・・ありがとうございま・・・す・・・・」

本日・・・

3度目の涙。


「ははは… 我慢なんかしなくていいんだよ?劉一…私は、私たちはどこにも行かないから…一緒にいるからね…」



ギュッ……・…



そういって…抱きしめてくれた…

「あ…う… お…かあ……」

劉一は…うまく言葉が出ない…

そして、

涙は嫌なものだとずっと思っていたけれど。

認識を改めよう・・・と…

そう感じた。

この涙は…

そう、

幸せの証なのだと感じた。


その日、3人は善吉 瞳 劉一の順で・・・

仲良く手を繋ぎ帰宅した。

・・・・・・・・・・・・・



外から見ると・・・

親子にはみえないだろうな・・・・・ 苦笑







-4-
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