天月家
日本最古の異能を持つ由緒ある一族の一つ。
その家の名を背負う者は皆、天使より美しく、堕天使より賢く、悪魔より強いと言われる。
その中でも、現128代目当主は一族の内ですら、ずば抜けての天才だという。
その力は歴代の当主達は愚か、開祖すらも超越し?史上最強?の名を手にする程という噂。
一族のその力及び存在は、天使、堕天使、悪魔の三大勢力の上層部によって永い間隠蔽されてきた。
しかし、その沈黙の破れる?刻?が刻一刻と迫っていた。
とある街の上空にて…
「フム…、ここがサーゼクスの馬鹿とセラフォルーのアホの妹共が管理する街か…」
そう呟く綺麗な銀髪の男は空中に立っており、街を見下ろす。その表情はまさに好奇心旺盛な子供の様である。
キョロキョロと見渡していると、腹に風穴を開けられ倒れている少年悪魔と、その風穴を開けたであろう中年堕天使の姿が男の目に入る。
だが、男は少年悪魔に何か違和感を感じる。
「ん?…ほほぅ。あの少年、なかなか面白ぇモン持ってんじゃねぇか」
そう嬉しそうに口を歪ませる男。まるで気に入った玩具を見つけた様子である。
そしてその場から男の姿が消え、次の瞬間には倒れた少年の側に立っていた。
堕天使は、突然の男の出現に驚きを隠せない。
「な!?なんだ貴様は!何処から来た!?」
「答えてやる義理は無ぇな」
男はそう堕天使に吐き捨てる。
「そうか。まぁ、誰でも良い。見られたのならば殺すだけだ」
堕天使は明らかに動揺していたが、手に光の槍を作り、男に向かって投げる。光の槍はそのまま男に刺さるかと思われたが、男は槍を難なく回避。
そのまま一瞬で堕天使の目の前まで移動し、
「死ねや」
ボソッと呟きながら堕天使の頭部を蹴り抜いた。そう、蹴り抜いたのだ。堕天使の頭はザクロのように弾け飛び、即死。
「詰まんねぇな、オイ」
男は何事も無かったように少年の元へと戻ると、そこには紅髪の美女がいた。そして女は男に問いかける。
「あなたは何者なの?」
その言葉を聞き、男は思う。?また面倒な事にならなきゃ良いケド…?と。
リアスSIDE
私は新しく入った眷属悪魔の兵藤一誠が堕天使に襲われているのを感知し、すぐに向かった。
目的地に着くとそこには、お腹を貫かれ倒れている兵藤くん。そして銀髪の男が堕天使と相対していた。
一触即発の空気の中、堕天使は光の槍を投げる。そのまま槍が男を貫くと思われたが、次の瞬間、私は目を疑った。
銀髪の男は槍を避け、一撃で堕天使を殺したのだ。
しかもその速度は、ほとんど私の目に映らなかった。確実に私の『騎士』よりも圧倒的に速い。速すぎるのだ。
見たところ、気配は人間みたいだけど…。
私は倒れている兵藤君の元へ行き、そこに戻ってきた男に警戒しながら問いかける。
「あなたは何者なの?」
「通りすがりの一般人Aだ」
………ナメられてるのかしら。
「一般人は普通、堕天使を一撃で倒したりできないわ」
「必死だったからな。人間死ぬ気でやれば何でもできるのさ」
顔色一つ変えない上に、汗一つかかないで何が必死よ!
「ンなことよかソレ、イイのか?」
そう言って、死にかけで倒れている兵藤君を指差す。
そうだわ、このままだと死んでしまう。私が魔力で治療しても助かるかどうか…。
どうしようかと考えていると、男は兵藤君に手をかざし、その手に緑色のオーラを纏わせていた。
私は男の行動を不審に思い、警戒態勢をしく。
いつでも攻撃魔法を放てるように、魔力を手に集中させながら男に問う。
「何をしようとしているの!?」
「暇つぶし」
そう言う男の手から発せられたオーラが兵藤君の体を包み、傷を塞いでいく。
なんだろう、この回復力は。治療魔法の専門家でもこう簡単には行かないだろう。
そして思わず私は呟く。
「凄い…」
瞬く間に傷は完治し、規則正しい呼吸を取り戻して眠る兵藤君。
「あ、ありがとう」
「ああ、それよりその制服は駒王学園のか?」
「ええ、そうよ」
「ちなみに何年?」
「3年よ?」
そう答えると男は何か面白いモノを見つけたような笑顔になっていく。その姿はまるで闇夜を照らす満月のような美しさだった。
「そんじゃ、先輩にあたる訳だ。俺、2年に転入するからヨロシク頼むわ、先輩♪」
笑顔でそう言うと、男は闇に消えていった。
私は不覚にも、その男の笑顔にドキッとしてしまった。