小説『続・黄泉路への案内人』
作者:楽一()

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第一三話

葵「・・・・こうなるから嫌だったんだ」

 いま私はドイツ軍IS配備特殊部隊シュヴァルツェ・ハーゼ、通称黒ウサギ隊の軍事施設にいる。まぁ訓練を実際行うのは千冬で私はその補佐らしい。

???「以上がこの施設の概要だ。何か質問はあるか?」

 黒髪に赤い目で片方を眼帯にした女性、この施設の管理者でドイツ軍のIS部隊統合隊長クロイツ・ヴァーゼリッヒ中佐。彼女がここの大まかな施設との教える部隊、黒ウサギ隊の説明をしてくれていたところだ。

葵「はぁ〜。この状況をどうにかしてもらいたいものだが中佐?」

 いま私の格好は知る人がいればかなり緊張感が走るモノだ。黒のスーツに黒のネクタイ、黒のYシャツ、そしてスーツの襟にはケルベロスの部隊章が描かれた物がつけられていた。

千「兄さん、大丈夫か?(ひそひそ)」

葵「大丈夫だろ。それに今回の主な指導はお前がやることになっている。私はそれの補佐だ」

クロ「まぁ、仕方ないだろ。現在は女尊男卑の世界。そしてお前は男尊女卑の社会をぶっ壊した張本人たちが作った部隊の二番隊隊長」

葵「でも男だからこの対応―――ですか」

 前に精霊つしているのは黒ウサギ隊の隊員。だが全員の目が冷やかであった。まるで何故とか、男の分際。そんな感じだろ。

葵「とりあえず自己紹介しておけ、千冬」

千「そうだな」

 そういって千冬は前に一歩出て、

千「シュヴァルツェ・ハーゼの諸君、私の名は織斑千冬だ。知っていようが知らまいと構わん。私の役目はわたしがここにいる一年の間に君たちを使い物になる操縦者にすることだ。出来る者にはさらなる高みに、出来ない者にもその高みに行かせてやる。逆らってもなにしてもかまわん。ただし! 私の言うことは従ってもらう。以上だ」

 そう言って敬礼すると、彼女らも敬礼を返す。

クロ「さて、次はお前の番だが」

葵「私もするのか?」

千「私もしたんだ。葵もすべきだろ?」

 はぁ。なぜこうなったんだろ。そう思いつつも前に出る。

葵「私の名前は神無月葵だ。さて、諸君らは世間、ドイツ軍の内部からエリート、エースと言われ、称賛されているだろうがそれは誰かが流した幻聴だと思え。お前らはまだ自分自身で卵の殻を破ることも出来ないひよっこ(ルーキー以下)だ。織斑千冬の言うとおりにすればその殻は破れるかも知れんがな」

 すると、ある女性が前に出て叫ぶようにおらぶ。

???「それはどういう意味だ!? 私たちはお前にも劣るというか!?」

葵「そうだ。それと私は神無月葵だ。名を名乗ったのだお前も名乗るべきだろ」

???「貴様に名乗る必要などない!!! 私たちはお前には勝てる! それにルーキー以下だと!?」

葵「そういったはずだ。ではルーキー以上であるというのであれば次の質問に応えてもらおうか。お前は目の前に人質を取った男がいる。男は人質に銃を向けている。さてお前ならどうする?」

 すると女は予想通りの答えをする。

???「そんな者などISで圧倒すればいいだろ!」

葵「・・・クッ、クアハハハハハアハ!!!」

 私が笑ったことに周りの人間は呆然としてる。すると中佐が、

クロ「何故笑っているのだ? さすがに私でも怒る」

葵「なに、ISで倒す。つまりISを起動させる。それを見た男はどうなるだろうな? 考えてみろ。拳銃でも人間は殺せる。混乱した男がもしそれが原因で発砲してみろ、どうなる? 間違いなく格好のメディアの餌だ。メディアはこういうだろうな、『ISを展開したことが原因で男、人質を射殺』ってな。そして国民もそれにあおられるだろ。そしてバカな国はお前を処分する。これが連鎖だ。いいか? 世界において国家もメディアもそして国民もバカだ。我らがすべきは最悪を回避することだ。ならスナイパーで男を殺せばいい。遠距離での発砲なら相手にも悟られまい。軍人ならそれぐらい瞬時に判断しろ」

 すると、女は何かを言いたげにしていた。そして口を開くと、

???「ならお前はどうするというのだ?! 同じ場に立ったなら!!!」

葵「最悪のケースを最低2000通りは想定するな。そして、それを常に回避する作戦を立案し不可能でなければ行動にする。いままでそうしてきた。そしてこれからもな。でなければケルベロスの仕事なんてやってられるか」

???「け、ケルベロス!?」

葵「? おい、聞いてないのか? といかヴァーゼリッヒ中佐、何も言って無いのか?」

クロ「いや、言ったと思ったんだが?」

葵「まったく・・・私はケルベロス二番隊隊長を務めている。良いか? お前らなどこの体一つあれば勝てる。所詮機体性能に頼っているならその概念を捨てろ。最終的に頼りになるのは己が身体だ! 忘れるな!」

 それでも、やはり堅くなにそれを拒む軍人たち。

千「はぁ、そんなに信じられないなら実戦で経験するといいだろ。おい、お前、そうお前だ。名前は?」

 すると、さっきまで私に殺気むき出しの女性が口を開いた。ただし殺気は抑えてある。

クラ「はっ! クラリッサ・ハルフォーフ大尉であります!!」

千「そうか。ならISを展開して葵と戦ってみるといい。葵はIS無しで」

クラ「は?」

葵「了〜解」

 私はそのまま一歩前に出る。その光景に皆唖然とする。そして対戦者に選ばれたハルフォーフもまたその一人だった。

???「待ってください! ISに勝てるのはISのみ。それはあなたがいちばんご存じではないのですか? それなのに何も装備していない、ましてや男が勝てるわけありません!」

 そう言って前に出てきたのは銀髪に左目に眼帯をした女の子。歳は私と同じかもしくは一つしたぐらいだろ。

千「お前は?」

ラ「ラウラ・ボーディヴィッヒです!」

葵「あのな、やってみないとわからんだろ。さっさと構えろ。それとも恐れたか?」

クラ「!? その言葉後悔させてやる」

 ハルフォーフが展開したISを展開した。部隊名からなのだろうか黒一色だ。そして肩には大型実弾砲。

葵「〈エクス接近戦武器は?〉」

(はい! 袖にプラズマソ刃があります)

葵「〈ルミル、相手は他に何がある?〉」

(ワイヤーだ。接近と遠距離に主体が置いてあるが接近は所詮敵が近付かれた時の予防策だろ)

葵「〈分かった。アギト、リインはデータ収集に集中。徹底的にもらっていく。時間は約3分以内で終了させてくれ〉」

リイン「〈はいです!〉」

アギト「〈でも兄貴。兄貴ならもっと早く終わらせるんじゃいのか?〉」

リイン「〈確かにそうです!〉」

葵「〈手加減は必要だろ? それに全力を出すまでも無い。収集終了次第一気に終わらせる〉」

 すると四人ともなるほどと納得したようだ。


SIDE第三者


 アリーナにはクラリッサと葵がたっていた。クラリッサはISを展開し、葵はスーツ姿のままだった。

クラ「懺悔は終わったか?」

葵「ん? とっくに終わっているが? 女性をなぶり殺すことになるかもしれないがお許しを―――とな」

 すると、クラリッサは何も予告なしに砲撃を放つ。その砲撃はまっすぐと葵に直撃し爆発するはずだった。

クラ「なっ!?」

ラ「・・・・・あり得ない」

クロ「・・・・・は?」

隊員「・・・・・・・・」

 黒ウサギの連中はいま起こったことが理解できていないようだ。しかし、ただ一人だけ当然といった表情をしていた。

千(さすが兄さんだ! そうでなくては!)

 葵が何をしたか? 簡単である。クラリッサが放った弾丸を殴り落としたのだ。葵の足元には銃弾をかなり大きくしたような弾が【く】の字に折れ曲がっていた。

クラ「化け物が!!」

 クラリッサは何かが狂ったかのように砲撃を発つ。だが、一発たりと手葵に届くことは無かった。葵は蹴り、殴り、避け、そしてたまに投げ返してくるのだ。もはや人間の域ではない。しかもその行動をまるで作業をするロボットか何かのように黙々とこなす。感情という物が無いのだ。

クラ(何なんだあいつは!? 戦いへの悦びも無ければ、砲弾を喰らった反動での痛みを感じる表情も無い・・・本当に何なんだ!?)

葵「・・・・終わりか?」

 冷たい。体の芯から震える何かが走った。

クラ「ま、まだだ!!!」

 クラリッサはワイヤーを放つと、葵を捕縛する。そして、それに大人しく捕まる葵。普通なら疑問に思うだろ。さっきまで人離れした力を振るっていた彼がここで大人しく捕まるはずがない。だが、今のクラリッサはその冷静な判断が出来ていない。むしろ捕まえられたことによる歓喜の方が大きい。

クラ(よし! これで一気に接近戦に持ち込めれば勝てる!)

 そして、袖部分からプラズマ刃を出し一気に距離を詰める。そして振りかぶり、後はそれお振り下ろせば勝てるはずだった。そう。勝負はあっけなく幕を閉じだ。

葵「・・・・呆気ないな。ドイツのISは所詮こんなものか」

 本来ならクラリッサの目の前にいるはずの葵がなぜかクラリッサの背中にいたのだ。

クラ「え・・・・・かはっ!?」

 何が起こったのかもわからずクラリッサの身体はそのまま膝をつき、地面に倒れこんだ。

クラ(何が?! 何が起きた!? 確かにあいつは私の目の前にいた!?)

葵「簡単だろ。人の出せる限界領域の力でお前の腹部、足、腕の内部から攻撃し神経伝達を狂わせた。あと、腹部へ重いのを一発入れといた。結果がこれだ」

 内部から神経伝達を狂わせれば脳はその部分を無理やり修正しようとする。結果体を維持しようと無理が生じただマネキンのように何もできなくなるのだ。

葵「ISだろうが戦闘機だろうが操縦しているのは人間。その人間を使い物にならなくしてしまえば勝機はいくらでもある。そこに男女など無い、力の強さを持ち、それを自覚し理解したものが勝つ。お前らはどれか一つ、下手をすればすべてを理解していない。だからルーキー以下と言ったんだ。理解したか?」

 その言葉にクラリッサは小さくうなずいた。

葵「それでいい。ISを解除しろ」

 彼女は言われるまま会場すると、

葵「気分を害するかもしれんが我慢しろよ?」

クラ「きゃっ///!?」

 葵はそのままクラリッサを抱きかかえ(俗にいうお姫様だっこ)、ベンチに横にさせた。

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