小説『続・黄泉路への案内人』
作者:楽一()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

第一七話


 翌日、訓練に入る前に私は黒ウサギ隊と共に整列させられた。前にはイツ軍の将校ブライツ・ハイドリッヒ准将、ドイツ外務省ハイムス・シュタイス外交官がいた。

ブラ「さて、神無月殿私たちに用事あるそうだな?」

 まぁ彼らに聞きたいことなどただ一つ、

葵「えぇ。VTSをご存知ですか?」

ブラ「エェ知ってますよ。それがどうかしたんですか?」

葵「貴国のISに装備されたましたよ。まぁ破壊しましたが。なぜあれがISに装備されているのか聞きたい」

 あの後黒ウサギ隊の配備されているIS全機を調べてみるとやはりというべきだった。全てにVTSが搭載されていた。

 すると二人は顔を見合わせ、驚いた表情をしていた。

ブラ「いえ!? 存じません!! どうしてそんな者が!? 君は何か知っているか?」

ハ「いえ!? 私も今知りました!」

 そうか。そういうことか。

葵「そうですか。分かりました」

 私は彼らの一歩前へ近づき、

ブラ「そうですか。分かってくr「そういうと思ったか? この屑どもが!!?」ゲフェっ!?」

 私は准将の左ほほを思いっきりぶん殴った。


SIDEクロイツ


 私は今目の前にした衝撃的な光景を目の当たりにしている。神無月が准将をぶん殴ったのである。

ブラ「き、貴様!? どういうつもりだ!?」

 何を思ってドイツ軍を敵に回す行動をとっているんだあいつは!? 他の隊員も、織斑も驚いている。

葵「どういうつもり? お前らこそどういうつもりだ屑」

ブラ「なに!?」

 いくらお前の方が立場上有利だからといって屑は無いだろ屑は。

葵「お前を含めドイツ軍シュタイッザ・アッハト中将、グランツ・ヴァージッヒ少将、フォン・ジューフェッタ少将。この三人に共通していることは何だと思う?」

 三人ともドイツの軍人、そして将校。それ以上のことは何も共通点はなさそうに見えるが。

葵「分からんか? ならつけたそう。国防省フェン・ガーハット事務次官、シュナイダー・ホルス情報部部長、グラン・ファンゼIS担当局局長。これでもわからんか?」

 この人間の言葉を聞くたびに准将の顔が真っ青になっていく。

葵「准将、お前を含めいまあげた人間が中心となってVTSを黒ウサギ隊が使用しているISに入れたな? そしておそらくそれを使って私の、いや、秋山式ISのデータを取りVTSに代わる新たなシステムを作り、それをさらにISに導入。操縦者の精神状態、機体の蓄積ダメージ、そして操縦者の願望がそろって発動するようにした。違うか?」

ブラ「しょ、証拠はあるのか?! 無いならこれほどドイツ軍を侮辱したことを公開することになるぞ!?」

 そう、これはすべて憶測だ。何も無いなら神無月をドイツの敵とみなすことになる。だが、彼は、ある書類を取り出した。

葵「これでも言い逃れできるか?」

 そして私たちにも同じ物を見せた。それはVTSの設計図を始め、先ほど述べた人物の極秘会談の様子を写した写真、さらにはVTSの開発予算のための横領。

クロ「これは事実ですか准将!?」

 准将は何も言わない。つまりは、

クロ「ふざけるな・・・・何でこんなモルモットみたいなことを!!?」

 すると、准将が開いた口から出た言葉は、

ブラ「・・・・モルモットだよ君たちは」

クロ「なに!?」

ブラ「モルモットだといったんだ! ISが無ければ国防力がガタ落ちになる。よりよい力を手に入れるためには多少の犠牲もやむえない! だから人体に名のマシンを入れたモルモットでVTSの実験を行わなければならいのだ!!」

 この言葉にはさすがに私はきれて銃を取り出そうとした。軍法会議にかけられてもかまわない。だが、こいつだけは許せない!

 すると、銃が出される前に神無月によって遮られた。

ブラ「何だ!?」

葵「屑はどこまで行っても屑だな」

ブラ「なにがいい――」
――ドガスンッ!!

 彼が振り下ろした拳は、准将の頭ごと地面にのめりこんだ。同然准将の顔は地面に衝突。

葵「覚えておけ屑。私は助ける価値のある者は助けるが、殺すしか価値の無い物は殺す。クロウサギ隊の面々は助ける価値はある。彼女たちを誰が何と言おうと私はこう言ってやろう。彼女たちは立派な人間だと。彼女たちには未来を見る権利も明日をつかむ権利もある。だが、お前みたいな屑はその権利も無ければ、殺すにも値しない。何が言いたいかわかるか? ゴミは大人しくゴミ箱で回収されるのを待っておけ。お前にはそれぐらいしか価値が無いんだからな」

 そして、彼は外交官の方を見て、

葵「こいつを連れて行け。後でドイツ政府にこの書類を提出する。ケルベロスとしてな」

 すると、外交官は准将を引きずりながら去っていった。

葵「はぁ。どの世界にいっても屑はいるんだな〜。いやぁ、感動感動」

 まっっったく感動もしていない様子で彼はこちらに向きなおして、

葵「さて、アレが何を言ったかは知らんが全員聞け」

 そういって准将をあれ呼ばわりした上に指で指す。

葵「お前らがどうやって生まれて、どうやっていままで生活し、どうやって軍に入り何をしてきたかなど興味など無い。だが、これだけは言っておく」

 そういうと彼は鋭い目つきをし、さらに少し息を吸い込み、

葵「世界中のだれが何と言おうとお前らは生きているんだ! 今日この日を! いまお前らがこの大地に足をつけ、一日を大切に生きている! それにウソ偽りはない! それが真実だ! なら生きろ! 今日も! 明日も! そしてこれからも! お前らはモルモットなどと言う生き物ではない! 人間だ! なら自分の足で未来と言う道を歩め! これはお前らの人生だ! いま生きていることに誇りを持て!」

 その言葉の一つ一つに重みがあった。まるでその重みをまるで現実に味わったかのような。それがどれだけ大切なモノなのか。明日というモノが、生きるという行為が、自らの足で歩めるという行動がどれだけ素晴らしく、どれだけ尊いモノなのかを。

 誰も何も言葉を発しない。いや、発せられなかった。ここにいる者は過去に何か闇があった。そんな者たちに生きていい、明日をつかんでいい、お前らは人間だ。そんな言葉をかけたモノが何人いただろう。いや、いない者を数えた方が多い。

 私も中佐の座にいるがエリートなどではない。苦渋を味わった。何度神を恨んだか。だが今この人と気だけは感謝する。この者と出会わせてくれたことに。


SIDEout

-16-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える