小説『続・黄泉路への案内人』
作者:楽一()

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第三六話


一「というわけでお兄ちゃんと簪ちゃんを加えた特訓を始めたいと思います!」

箒・鈴・セ・簪『おぉ〜〜〜!』

葵「・・・・・何故に?」

 それは今日の昼休み。もっと正確に言うなればクラス対抗戦のトーナメント表が発表されてわずか12秒後。

一「お兄ちゃん!」

葵「どうした? 我が妹よ」

 ちょうど朝早起きして食堂のおばちゃんの許可をもらって作ったミックスサンド(無論一夏と千冬も同じ物を渡しておいた)をつまみながら一夏が話しかけてきた。

 ちなみに私の席の周りには鈴、箒、セシリア、一夏、簪がいた。簪は一夏たちに紹介したら一気になじみ今に至る。

一「一回戦は私と簪ちゃんになりました!」

箒「そうだな」

一「そしていろんな意味で私が不利です!」

セ「そうですわね」

一「一方の簪ちゃんはお兄ちゃんとの訓練で圧倒的有利です!」

鈴「そうね」

一「ということで訓練を一緒にやりたいと思います!」

箒・鈴・セ「「「そうだな(ね・ですわね)!!!」」」

簪「・・・・え?」

 簪。お前の気持ちすっごくわかるぞ。私もどうしてそういう流れになったのかわからん。それにしてもアギト、リイン、エクス、ルミル。お前らすごいな。完全なカオスという状況なのに四人でお茶会を優雅に開いてサンドイッチを食べるなんて。うん。私も混ぜてほしい。

 そう思い何故かエクスの頭をなでていた。

エ「ふぇ? マスター?」

葵「気にしないでくれ。お前らはお前らであってくれ(最後の癒しという名の砦よ・・・・)」

一「じゃあお兄ちゃんいい?」

葵「訓練の話しか?」

一「うん!」

葵「相手の手の内を見せあうのか?」

簪「さっき・・・・話したけど・・・対戦形式はしない」

葵「? ならどういうのを?」

一「基礎固めかな。お兄ちゃんいなかったとき大体そんなもんだったし」

鈴「実際あんたがいない間千冬さん、山田先生、ナターシャ先生の入れ替わりで見てもらったからね」

セ「応用まではやはり行きませんわ。一夏さんもそうですが箒さんも基礎がまだ完全に固まってませんから。それでも箒さんは剣道をしていた分型はかなり上ですわ」

 今の位置づけだとやってみないとわからないがセシリアと鈴が上位争い、それに続く形で簪が追いかける。そして箒がいて一夏といった感じか。
基礎は全員で来ているが私から見たら鶏の腹の中(一般素人)か。今のところヒヨコ(ルーキー)が千冬、ファイルス、マドカ、咲夜といったところだな。卵(ルーキー以下)が米軍、黒ウサギ隊、鶏の腹の中(一般素人)がこの学園の生徒。まぁ仕方ないと言えば仕方ない状態だろ。置かれている状況があまりにも違いすぎる。

 じゃあその上は? って聞かれると若鶏(中堅)はいわゆる&#8555;familyや騎士団の騎士達、なのは達だろう。ようは大きい戦争を経験し生き残り殺し合いをした者。後半はなのは達は除くが大きい戦争の経験という意味ではあっている。
さらにその上鳳凰(無類・無比較)で言うなれば間違いなく四聖神のうちのあのおさん方。御三家だろう。あの方たちを比べたら全てが腹の中だろう。

葵「まぁ良いだろう。ちなみに今日はどの教諭がつくんだ?」

箒「確か久しぶりに三人全員だったな」

 マジか・・・・久しぶりの復帰は久しぶりに骨が折れそうだ。



 で、今に至る。

葵「というわけでというかどういうわけか一年専用機持ち勢ぞろいなのか?」

千「正確には違うがな。後五組と三組にいる」

 以外といるもんだな。

葵「まぁ今日は対戦形式で行くぞ」

全員「え!?」

葵「ん? あぁ対戦は一夏VS簪じゃないぞ。それぞれの苦手意識を治すために一夏とセシリア、簪と鈴で組む」

箒「兄さん。私はどうすればいいんだ?」

葵「お前は見学だ」

箒「・・・・それはわたs「だが勘違いするな」え?」

葵「お前は専用機がない。だがいずれ手に入れるのは目に見えている。なら頭の中でいくつものシミレーションをしてみろ。私が一夏ならここでこうしていた。セシリアなら、鈴なら、簪なら。いくつものシミレーションを繰り返して実践でそれを行えるようにしておけ。見学だと思って甘く見るな。見学はより多くの情報と対策を生み出せる絶好の機会だ。それを逃がすな良いな」

箒「はい!」

 と言い訳じみた言を放ったが実際は互いに互いの動きを見今度の対抗戦の参考にすればより一層上に進めると判断したからだ。

千「(兄さんはやはり次の対抗戦を見ているというわけではなさそうだ)何を考えているんだ?」

葵「いずれ起きるであろう事象のために―――とでも言っておこうか」

ナ「事象? 戦争でも起きると?」

真「あり得ません。ISが登場して以来世界バランスは取れてます」

葵「今はな。いずれそのバランスはちょっとしたことで崩壊する。歴史がそれを証明しているだろう。他愛もないことで戦争は起きる。肌の色で、宗教の違いで、言葉の違いで、民族の違いで、文化の違いでな。そんな些細なことでだ」

 そしてその話している間に第一試合セシリアVS一夏が始まった。

 内容的に言えば最初のクラス代表決定者決定戦と大差ない。だが質は違った。それぞれが得意分野を伸ばしてきている。セシリアは自立稼働兵器の同時処理を行えるようにまでなっている。

真「オルコットさんの処理能力が上がってる?!」

セ(葵さんの課題役に立ってますわ!)

 私が彼女に渡した課題は簡単なようで難しいモノだ。アルファベットを右手で小文字、左手で大文字を書くように訓練するように言ったのだ。良くあるものだが効率性は良い。特に同時処理能力をあげる分には特に。やってもらえればわかるがこれは意外と難しい。アルファベット全26文字を右と左で違う処理をするのは難しい。それをこなせれば・・・・言いたいことはわかるだろう。

ナ「速度、正確性に加えて違う動作を加えるとさらに戦いにくいわね」

 セシリアの弱点はビット兵器を使っている時はセシリア自身の動きが止まる。だが今は回避、射撃と同時にビット兵器使用も可能だ。

 かといって一夏自身も上がっている。

一「そこ!」

千「反射速度、腕の振り方、力の使い方が格段に上がっているだと・・・・」

 千冬もかなり驚いているみたいだ。まぁだが、

一「いまだ!!」

 一夏がわざとすきを造りそこにおびき出されたビットを斬りセシリアに接近する。だが、

千「だが、いまだにあれの使いどころを見いだせていないみたいだな」

 そういって額に手を当て溜息をつく。うん。一夏、そこは完全に囮だ。

セ「一夏さん? ちゃんと学習しましょうね?」

 そういってミサイル発射。一夏もこれは予想しているはずだ。

一「甘いよ!」

 ミサイルを着るものかと思ったがそれを避けさらに接近。

葵「判断は正しい。でも」

セ「前ばかり見ててもいけませんわよ!!!」

 横にすでに展開されていたビットの一斉射撃。そして目の前からはミサイルとセシリアのライフル。結果は・・・・

一「うわぁ〜ん! 行き成り縁起が悪いよ〜〜〜」

 その後は一夏とセシリアは教諭陣並びに同じ生徒である箒からの意見を聞きつつ今後の反省点を克服にという流れだ。

 で、次は私もちょっと楽しみにしている戦いだ。


 簪VS鈴


 一言でいうなられ場壮絶だ。片や無尽蔵のミサイル群、片や見えない砲撃。

葵「ふむ。どっちもどっちで戦いにくいな」

 鈴の場合はミサイルという目に見える形だからよけよう思えば避けられる。だがそれ以上に数が多すぎて下手に避けるより防御をした方が得策だ。だが、防御をすればそのまま簪に斬りこまれる。

 簪の場合は目に見えない砲撃で避けようがない。弾どころか砲身も見えない。ハイパーセンサーも空間のゆがみや大気の流れの異常を捕えて避けるしかない。だが、それ以上に驚いたのは鈴の接近戦のうまさである。

葵(以外とこの中で苦戦を虐げられるのは鈴かもな)

 結果は互いに互いが死力を尽くしわずかな差をつけて鈴の勝利。簪の課題はエネルギー配分がまだ完全にできていないことと接近戦にまだ慣れていない。慣れればリンと五分の戦いをするだろう。

 鈴の場合は若干ながら龍砲に頼っている。それさえ除けば、といったところだ。



 そして迎えた対抗戦当日。

 私とセシリア、鈴、箒は教職員が入れるモニタールームに入る。

葵「何もここに来させる理由などあったのか?」

千「いざとなった場合葵がここにいた方が指揮系統としては妥当なんだ」

楯「現に一年生の対決なのに私もいるからね」

 そう。ここにいるのはIS界における最強、実質の世界最強(千冬)と学園最強(楯無)、そして一組の専用機持ち、そして束の妹。有名人どころじゃない。下手をすれば一国を、胃や大陸の一つすら平定できるレベルの戦力だ。

ナ「あら。そこにあなたが加われば世界平定も夢ではないのよ?」

葵「私には興味のない話だ(すでにあっちでは実質そうなのだから)」

セ「えらく先生方は葵さんの肩、というよりも力を信用なされるのですのね」

鈴「それあたしも思った」

楯「鳳・・・さんとオルコット・・・さんだっけ?」

セ・鈴「「えぇ(はい)」」

楯「現在緊急事態、まぁ非常事態ね。これが起こったらだれよりも命令権が優先されるのか知ってる?」

鈴「この場だと織斑先生じゃないの?」

千「ところが残念。この場合は葵の命令権の方が優先される」

 その言葉に二人は沈黙。そして絶叫が響く。だが箒だけはそうなのかという一言で終わった。

鈴「あんたはなんでそんなにのんきにできるのよ!!?」

箒「いや、兄さんの所属している組織ならそうなのかで終わるだろ」

セ「所属組織?」

箒「兄さん、神無月葵は対違法IS組織殲滅部隊ケルベロスの二番隊隊長なんだ」

 そして二人は驚愕の表情をしていた。しかも驚愕の表情をあらわせいていたのは二人だけではなくここにいた教職員全員だった。

千「だから葵の命令権が一番優先される。学園長でも無論私でもなくな」

葵「その辺は頭の片隅においておく程度で良いだろ。この場所は世界で最も安全であり最も危険な場所なんだからな」

 そして開始の合図が鳴る。

葵「始まったか」


SIDE第三者


 試合開始の合図とともに真っ先に動いたのは、

一「え!?」

簪「・・・・はぁ!」

 静かに、しかし速く動き一気に一夏の間合いに入り打鉄の専門の刀型ブレードで一気に切りこむ。

楯「わぁ〜お。斬新だね」

葵「あれ教えたのお前だろ・・・・」

 驚きの顔大半、あきれ顔二つ。誰かというと葵と千冬だ。

一「くっ・・・・(思ったより強い。このままだと押し切られる。なら!)それっ!」

 押してダメなら引いてみる。その言葉通り一夏は一回押し戻すふりをして少し、しかし素早く後退する。支えを失えば当然バランスを失うのが通り。つまり簪はバランスを崩し視線も一夏から少しだけ外れる。

 それを狙っていたのか、はたまたただの幸運なのか一夏はその好機を逃さず一気に切りかかった。

簪「・・・・これ・・・ならっ!」

 空中戦を展開していた簪は一気に地面まで急降下。体勢を立て直し打鉄弐式の十八番ミサイル八連装が一気に火を噴いた。

 それを回避していく一夏。難なくかわす―――わけではないがかわしていることには変わりない。若干苦戦しているようだが。

一(これぐらい鈴ちゃんとセシリアちゃんの攻撃のタッグと比べれば!)

 回避しつつも簪との距離を詰め、そして。

一「ここ!」

簪「・・・させ・・・・ない!」

 互いのブレードがぶつかり合う瞬間異変は起きた。

――ズガァアアアアン!!

 轟音と共に入ってきたのは、

一「なに!?」

千「あれは・・・・・」

真「か、会場内に所属不明のISが出現!!?」

 肩と頭が一体化したかのような形で、以上に手が長い深い灰色をした一つ目の機体。全身(フル・)装甲(スキン)のISだ。だが、同時にある違和感を感じる者もいた。

葵(・・・・・嫌な予感がする)

 そしてこの予感は当たることになった。

SIDEout

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