小説『続・黄泉路への案内人』
作者:楽一()

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第六話


 さて近況報告はしたな。あれから月日も流れたことも言ったな。その中で一番大きかった出来事。それは、


―――回想


束「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っく〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!」

葵「ん? 束って!? お、お前!? いま包丁使ってる危ない!!」

 いま私は夕飯の支度をするためにキッチンに立っている。といっても背は少し一夏と箒より高いぐらいなので結果踏み台を使っている。つまりそこに強い衝撃を当てると結構危ない。

葵「ととっ。それよりどうしたんだ束? また何か新しい何かでも開発したのか?」

 束は頭が良い。まるで乾いたスポンジのごとく知識という水分を吸収する。私が知っていることもぽろっと吐いただけで簡単に理論を納得してしまう。道実といい勝負だろう。

束「おぉ! さすがあっくん! 束さんの未来の夫たるはあっくんはそうではないとォギャカオオオオオオオオオオオ!!?」

 すると、束の目の前にいきなり誰からの腕が伸び、アイアンクローが炸裂。まぁ、こんなことする人物は一人しかいないんだが。

千「誰が! 誰の! 未来の夫だって!?」

 ある程度下ごしらえも終え、包丁を洗い場におき、火を消したのを確認して、

葵「まぁ千冬。その辺にしておけ。本当に束がこの世からおさらばするぞ?」

 だんだん音が【メキッ】から【メキョッ】に変わり、いまわ【ガギィッ】とだんだん鈍い音に代わって言ってる。止めなかったら頭がい骨陥没で悲惨な状況になる。主に台所が・・・・。

千「ん、兄さんがそういうなら」

 あと、千冬も束の前ではこういう。なので、私も千冬と束だけなら呼び捨てにするようにしている。まぁ一夏たちがいたらさすがに色々と聞かれるので束はさん付、千冬は千冬姉さんと呼んでいる。

 束がアイアンクローから解放された束はちょっと文句を言ってきたが、私が何か用があったのではというと、

束「そうだった!! あっくん! さぁ行こう! 束さんの楽園(君との愛の巣)へ!」

 いま副音で何かまずい発言をしなかったか?

束「気のせいだよ! それよりレッツラゴー!」

 おい。心を読むな。あと、千冬。そのさっきのこもった視線で見るな。お前もお前で成長がすさまじいんだ。束を文で言うなら千冬は武だ。鍛えた本人としては成長はうれしいが、それを教えた本人に使わないでくれ。

 まぁそれをすっ飛ばしてこいつはなにやら道場の使われていない部屋に来た。若干物置状態になっている。

千「ここに何かあるのか?」

束「慌てないあわてない。ちーちゃん。さて、ぽちぽちっとな!」

 壁の一部を外すと番号式のロックキーがありそれを解除すると、足元から階段が出現した。何これ? 何のダンジョン!?

 まぁ、その階段を束を戦闘に下りて行くとまるで雲の巣のごとく張り巡らされたコード。大小様々だが、それに接続されてるコンピューターの数も膨大だ。どっかの研究所かと突っ込みを入れたくなった。

千「地下、しかもこれだけのパソコンよく集めたな・・・」

葵「電気代がバカになりそうだ」

千・束「「突っ込むとこそこ!?」」

 え!? 気にならない!?

葵「ん? 束、あのパワードスーツは何だ?」

 目に入ったのは白を基調としたゲームやアニメ、または映画などで使われそうなものだった。いわゆるSFの産物。まぁ、この場合フィクションではないのだが。

束「おぉ! さすがあっくん! お目が高いね! それはねIS、インフィニット・ストラトスって言うの!! これは宇宙空間での活動を想定したもの!! これが実用されればあの広大な大海原(宇宙)へ人類は一歩前進するんだよ!! すごくない!!?」

 なるほど。そういう意図から作られたのかこれは。ということはIS生みの親だったのか束は。

千「だが可能なのか? これが宇宙に行けるというのは?」

葵「理論上は可能だろう。それにこれが実現されればかなりのメリットがある」

千「どんなだ?」

葵「まずスペースシャトルが不要となる。単騎で大気圏突破が出来れば燃料費が大幅にカットされる。つまり燃料高騰などに左右されなくなり安全性が確認されれば月数回は宇宙に行けるだろう。つまり、国際宇宙センターの開発も進む。これ、JAXAや日本政府に入ったのか?」

 すると、束はあからさまにいやな顔をした。

束「あいつらはこんなもの実現不可能だといって一瞥したよ」

 無機質でありながら、底冷えするような声だった。だが、検討すればこれはかなり有効だ。宇宙開発において遅れている日本から見れば検討するぐらいしてもいいと思うんだが。・・・あれ? 確かISの欠点は。

千「なにかあったのか?」

束「このISの最大の欠点は女性にしか動かせないってことなんだよ」

 そうだった。ISは女性にしか動かせない。その圧倒的スペックは現代兵器を軽く上回っている。結果国家はISに多額の軍事費を費やすことになり国防を担うようになった。この結果いままであった男尊女卑という世界観は崩れ女尊男卑の世界となった。

???『あ・・・・は・・れ』

葵「ん? 誰か呼んだか?」

束「ううん? どうかした?」

千「私は束と話していたが?」

 千冬と束は違う。

アギト「〈あたしも違うぜ?〉」

リイン「〈リインもです〉」

 アギトとリインも違う。

(マスター、もしかしたら)

(そのISではないのか?)

 そんなバカな。だが、神姫という存在もいるわけだし・・・・とりあえずもう一度触れてみるか。
 そう思いISに触れてみると、

???『あなたは誰だ?』

 聞こえちゃったよ。えっと、こういう場合どうするか。

葵「〈聞こえるか?〉」

???『あぁ。聞こえる』

葵「〈私の名前は神無月葵。お前は?〉」

白『私は白騎士だ』

葵「〈このISのことでいいのか?〉」

白『あぁ』

 管制人格みたいなものか? その後白騎士、もといISにはどのような能力、機能が備わっているのか聞いてみる。そこである疑問が思い浮かんだ。

葵「束。ISのエネルギー源は何だ?」

束「あぁ。それはねぇ〜―――」

 そこからISの基本的な説明を受ける。大体白騎士と同じ回答だった。だが、そこである欠陥を見つけた。

葵「束、大気圏突入の際の防護的な役割を担うのはどうなっているんだ?」

束「そりゃ、もちろんエネルギーシールドだよ? それで十分賄えるはずだし」

 さらにもう一つ皮膜装甲(スキンバリアー)というのもある。だが、もう一つ欲しいな。

千「なにか思うことでもあるのか兄さん?」

葵「うむ。もう一つバリアーがほしいと思ってな」

束「二つでも十分だと思うだけどなぁ?」

葵「この世に絶対はない。二つより三つ。絶対防御がほしい。宇宙空間では何が起こるか分からん。起動条件はエネルギーが0になった瞬間でいいだろう。操縦者を死なせないようにするために。そうだな、システムは――――」

 そういってコンソールを叩いて行く。


SIDE束


 いま私は目の前で起こっていることが分からない。みたことも無いコンソールを週間に出し計算、設計、仮定エネルギーなど様々な者を同時進行をしていく。それを行う作業スピードは明らかに私を上回っていた。

葵「っと、こんな感じでどうだ?」

 そして、なにより彼が立案した防御層。彼が行った絶対防御の名にふさわしい堅固だ。

束「・・・・すごい」

千「あ、あぁ。素人の私でもあれがすごいというのはわかる」

 すると、あっくんがこっちを見て、

葵「あと束。細かいところで少し気になる部分がる。一気に修正するが良いか?」

束「え? あ、うん・・・」

 その後もスピードを落とすことなく一気に討ち続けて行く。最終確認は私がさせもらったけど少し無理をした部分もかなり余裕が出来ていた。穴が開いていた部分をきっちりふさいだ感じ。

葵「そういえば束、お前これからどうするつもりだ?」

束「これから?」

 あぁ。そういう意味か〜。さすがあっくん。大局見てるね〜。

束「そうだね〜。ISの絶対的力を世界に知らしめる。そうすれば―――」

あっくんのこのシステムのおかげで操縦者の心配もいらないだろうしね。

葵「・・・一つだけ言っておく。方法によってはお前の居場所を自分自身でなくすことになる」

束「・・・・覚悟の上だよ」

 その作戦とは、

束「この日本、国会議事堂に向けてミサイルを五〇〇〇発放つ」

葵・千「「・・・・・・・」」

 すると、普段凛々しいちーちゃん、冷静なあっくんからは想像できないほどの驚きの顔をしていた。

葵「・・・千冬、私は今耳がおかしくなったみたいだ。ミサイルを五千発国会議事堂に向けて放つといったやつがいるんだが?」

千「そうだな、兄さん。私も不思議と兄さんと同じことを聞いたみたいだ」

葵「いまからこの町の、いやこの世界で随一の耳鼻科医にかかりたいほどなんだが? むしろ精神医か?」

 ひどいなぁ〜〜!? 二人とも!!?

束「束さんは本気だよ!?」

千「なおさら悪いわ!!?」

 でも、ちーちゃんは溜息をつきながらも、

千「で、どうするんだ?」

束「え?」

千「それはただの鎧だ。なら刀か槍、武器が必要だろ」

束「そうだね」

 すると、あっくんが、

葵「なら、接近戦用武器が良いだろう。作成してみるか」

束「あっくん! 束さんも一緒にするよ!!」

 そして、来るべき日のためにちーちゃん専用機、白騎士の調整と、その期待にふさわしい最高の武器『雪片』を作成した。


SIDEout


――回想終わり。そして今私は日本のはるか上空にいる。

-5-
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