第六話 鎧の魔導士
「つーわけで依頼料は貰わなかったよ、じーさん」
クエストを終えて帰還したカイル達はマカロフに報告していた。
「うむ。依頼内容も達成しとらんのに依頼料を貰ってはフェアリーテイルの名折れじゃからのう。ようやったぞ!カイル」
「んじゃ、ちょっと呑ませてもらうわ。ミラ、ギムレット」
「相変わらず強いのいくわね、はい」
報告を終えたカイルはオフモードに入り、度数の高いカクテルをたのんだ。
「ミラも飲むか?驕りにしといでやるぞ?」
仕事を終え、気分がいいカイルはカクテルを飲みながらミラを誘った。仕事柄ミラはあまり酒を飲む機会がないのだ。
「ホント!ならホワイトレディ!」
カウンター越しに一緒に飲んで、談笑してると
「何だ〜、カイル。何ミラと仲良く飲んでるんだよ〜。私も混ぜろ」
カナがカイルの腕を自分の胸に抱え込んで抗議して来た。こうなるとカナの欲求が満たされるまで開放されないことをカイルはこれまでの経験で知っていた。
「わかったわかった。お前も飲め。おごってはやらんが」
えーー!と不満を言いながらも嬉しそうにカイルの胸板に頬ずりする。
「ちょっとカナ?カイルは私と二人っきりで!飲んでたんだけど?」
「別にい〜じゃん。減るもんじゃなし」
「減るわよ!私とカイルの時間が!!」
「カイルはモテるね〜。それに気づかないあいつの鈍さは病気だ」
口論を繰り返すカナとミラの姿を見て、グレイが呆れるように言う。その隣でルーシィが次のクエストについて悩んでいた。
「うーん、色々あるなぁ。どれにしよっかな〜」
「どした?ルーシィ、悩み事か?」
そこへケンカから逃げて来たカイルがルーシィに問いかけた。
「あ、カイル。いや、依頼が多くて迷っちゃって」
「気に入ったのがあったらいってね?もうマスターいないから」
二人の会話を追いかけてきたミラが聞いて、答えた。
「あれ?さっきまでいたろ?」
「もう定例会に行っちゃったわ。さっきのでギリギリよ」
「定例会?」
聞き覚えのない単語を聞いたルーシィは首を傾けていた。
「あー、えーっとな。ミラよろしく」
説明しようとしたがめんどくさくなったカイルはミラに丸投げした。
「任されました!定例会っていうのは各地のギルドマスターが集まって色々報告したりする事よ。評議会とは、ちょっと違うんだけど……口頭じゃちょっとわかりにくいかな?リーダス、光ペンかして」
光ペンをリーダスから借りて図にして説明するミラ。相変わらずヘタいな。あ、さいごはしょった。
「知らなかったな〜。ギルドどうしの連携にそんなものがあったなんて」
「大切なのよ、そういうつながりは。疎かにしてると」
「黒い奴らが来るぞ〜〜」「ひぃいぃいいぃい!!!」
背後からのナツのドスの聞いた声におもいっきりビビるルーシィ。
「うひゃひゃひゃひゃ!!な〜にビビってんだよ!ルーシィ」
「ビビりルーシィ、略してビリィーだね」
「変な略称つけんな!!」
どっかでブートキャンプしてそうだなおい。もうとっくに忘れ去られたが……
「はは、ビビってる君も素敵だよルーシィ。サングラス越しでこの美しさだ。裸眼で見たら潰れちゃうな」
様子を見ていたロキが口説く。
「潰せば?」
キザったらしいセリフが癪にさわったのか…辛辣な返しをするルーシィ。
「ロキ、ルーシィは星霊魔導士だぜ?」
ロキに厳しい?現実をカイルが突きつけた。
「!!き、君星霊魔導士だったのか!!ぼ、僕たちここまでにしょう!!」
何も始まってなかったと思うが……
「ロキは星霊魔導士苦手なのよね」
「昔色々あったんだと」
ミラとカイルがぼやいた。
「どうせ女だ!」「そうだ!」
ケンカしながらナツとグレイが言った……器用なやっちゃな。
「ナツ!グレイ!マズイぞ!!」
どこかに逃げたロキが慌てて帰ってきた。
「「あ!?」」
ケンカを止められて不機嫌そうな顔をしたが次の瞬間吹き飛んだ。
「エルザが帰ってきた!!」
「「えぇえぇえええ!!」」
ロキの一言でナツとグレイだけでなく、ギルド全体に緊張が走る。
「おー、帰ってきたか〜。」
この男を除いて………
ドスドスドスドスドスドス、バタン!
しばらくするとでかい角持って鎧を着た美女が現れた。彼女がエルザである。
「今戻った。マスターとカイルはおられるか?」
「おうエルザ、ここにいるぞ。ちなみにじーさんは定例会だ。つーかそのでかい角は一体何なんだ?」
エルザに呼ばれたカイルが軽い調子で皆が1番聞きたかった事を尋ねる。
「カイル!帰ってきていたか!」
「昨日な」
「あとこれは討伐先で地元の人達が装飾して持たせてくれたんだ。綺麗だったから持ち帰ったんだが………そ、その、迷惑だったか?」
少し不安気な顔をしてカイルに問いかける。
「迷惑とは言わんがどこにおくんだ?こんなでかい角。まぁいいか。魔物討伐お疲れ」
そう言ったあとカイルはエルザの頭を撫でていた。
「ふぁっ!////や、やめろカイル////」
「なんでだ?お前むかしから髪撫でられると喜ぶじゃないか」
「////////そ、それは子供の頃の話だ!!」
おとなしくなっているエルザを見て、皆が驚いている。
「いいなぁ…」
ルーシィが羨ましそうにつぶやく。他の女性陣も同じようにしていた。
「「フフフフフフフ」」
ミラとカナが黒い笑いを浮かべていた。
「「「ひぃいぃいいいい!!!」」」
近くにいたナツとグレイとハッピーが殺気をモロに受けてビビる。
「しっかし相変わらずシルクみてぇな髪だな。サラッサラだ。撫でてて気持ちいいぞ」
「/////」
褒められて顔を真っ赤にするエルザ。
「ふむっ!満足!」
充分堪能したのか、カイルは自分の席に戻っていった。
「……………あ///」
席に戻ったカイルをエルザは少しものたりなさそうな目で見つめていた。
「カイル!次は私の髪撫でてみる?癖っ毛だけどサラサラだよ!」
「わ、私もサラサラよ!カイル!」
カナとミラが対抗して頭を出してくる。カイルは嫌な予感がしたのでやんわりと断った
「ん//、ごほん!それはそうとナツとグレイはいるか!!」
「や、やあエルザ………お、俺たち仲良くヤってるぜ………」
「あい」
冷や汗だくだくになっているナツとグレイ。
「な、ナツがハッピーみたいになってる!!」
この光景を始めて見たルーシィは驚愕していた。
「二人ともエルザが怖いのよ。ナツは以前にエルザにケンカ売ってボコボコに、グレイは上半身裸で歩いていてボコボコに、ロキは口説いてボコボコに」
「あ〜〜」
納得したのか、ルーシィは頷いていた。
「相変わらず仲が良さそうで良かった。丁度いい、ナツとグレイ、もちろんカイルも来てくれ。頼みがあるんだ」
へえ、俺はともかくナツ達にまで頼むとは珍しい。こりゃなんかあったな。
「依頼先で厄介な事を耳にした。本来ならマスターの指示を仰ぐべきなんだろうが、早期解決が望ましいと判断した。三人の力を貸してくれ」
「え?」
「はいぃい?」
「俺はいいけど?」
普段のエルザならあり得ない発言にカイル以外皆が動揺してた。
「オイオイ、マジかよ。」「カイル以外とエルザが組むなんて……」
「カイルと…エルザ…ナツにグレイ。想像した事もなかったけど……これってフェアリーテイル最強チームかも…」
「か、カイルはともかくってどういう意味ですか?」
疑問を持ったルーシィがミラに尋ねる。
「ああ、カイルとエルザってコンビなのよ。聞いた事ない?チーム:銀の妖精王:(シルバリオ・ティターニア)
「あ!ある!!フェアリーテイル最強のコンビ!!」
そして出発は明日と決まった…
「そ、そういえばミラさん。カイルって強いんですか?あんまり闘ってるところ見たことないんですけど」
エルザが去った後ルーシィがミラに聞いた。
「あら、ルーシィってカイルのこと知らないんだ。なら同行するといいよ。今回は大変そうだからカイルの実力が見れると思うわ」
「ふう」「浮かない顔だな、カイル」
いつものように屋根の上で飲んでいるとエルザがやって来た。
「おう、エルザ。飲むか?」
「ああ、いただこう。それとどう思う?今回の件。私はまちがっているだろうか?」
「うんにゃ、正しい判断だ。恐らくじーさん待ってたら手遅れだろう」
「なに!それは本当か!!」
「あくまで俺のカンだがな」
「そうか、お前のこの手のカンは外れたことがないからな。頼りにしてるぞ、相棒」
「任せろ、相棒」
「そ、それとな、カイル。人前で頭を撫でるのはやめろ。さ、流石に恥ずかしい////」
「えーー、いいじゃん別に」
「そ、そんな顔をするな…見ただろう?あの黒いミラを……あれは私でも止められん」
「まあ、確かにな、でもなんでミラもカナも頭撫でたぐらいであんな怒るかね?」
「な!か、カイル、お前まだ気づいてないのか!!」
「きづいてないってなにを?」
「何でもない…ミラ、カナ、私達はまだまだ大変なようだ」
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