小説『HUNTER×HUNTERの世界で動物とじゃれあいたいです』
作者:唯野歩風呂()

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 「な、何でこんなことに……」


 目の前には巨大な豚――――のような鼻をした蛇。


 「ブシャァァァァァ(旨そうな匂いー)!」

 「何かデジャヴーーっ!!」



 「メオオォン(いただきっ)!!」

 「羊象!?」


 モコモコした象が豚蛇を足で踏みつけた。


 「ガルルルル(一石二鳥)」

 「我らがママン!!」


 最後はやっぱり母猫が羊象の首を咬み、食物連鎖の頂点に立った。



 私と羽根つき猫親子は、母猫の父――子猫にとってはお祖父ちゃんに会いに行くと決めた次の日。子猫のモーニングダイブで起こされた私は、母猫のお父さんのところへ連れて行ってもらえると思っていたが、お土産を持っていくそうで、こうして狩りに下界へ来ていた。


 子猫と一緒に歩いていたら、いつの間にか母猫がいなくなっており、探そうと辺りを見回したところで、豚蛇と遭遇した――――という流れた。



 『もう少し欲しいな』


 豚蛇と羊象の他にも欲しいって……、母猫のお父さん、どんだけ食べるんですか?

 そういう暇もなく母猫は空へ飛んで行ってしまった。
 上空から獲物を探すのだろう。
 だが、こんな森の中に一人(と一匹)だけ残したら、さっきみたいに襲われ――――。




 ……あれ?


 もしかして、私たち囮にされた!?


 こんなところに弱者である人間を置いていたらチャンスとばかりに襲ってくるに決まってる!
 母猫はそれを利用して狩りをしていたということか!?


 「君の母親はとんでもないね!……ん?」


 隣にいたはずの子猫がいない。


 「おーい、ダンゴー」


 あまり騒がないように子猫を呼んだ。

 昨日、私はあの子猫のことを「ダンゴ」と呼ぶことに決めた。
 いつまでも「子猫」じゃ、子猫でなくなったときに呼び方に困るし、昨日小さく丸まって寝る姿に、『白くて柔らかくて丸い……お団子みたい(ぐ〜)』と思ってしまったのだ。



 暫く探したが、近くにダンゴはいない。

 もしかしなくてもはぐれた?


 いけない。こんな弱肉強食の森の中で、生まれて二日目の子猫が一匹で数分でも生き残れる確率なんてたかが知れている。


 慌てて駆け出し、ダンゴを呼びながら探した。

 後から思えば、結構バカなことをしたと思う。



 少し行くと、開けた場所に出た。
 見回すと、右の方の茂みに、先っぽが黒くその他は白い細長いものが……。

 近づくと、足音を聞いてビクッと緊張し、やがてプルプルと震えだした。


 ――ゴクッ。

 ……さ、触りたい。


 しかし駄目だ。
 猫はしっぽを触られるのを嫌う。

 我慢しなければ……。


 「ダンゴ?」


 しっぽがビクッと反応し、やがてそろそろと顔をだし――。


 『お、お前〜〜』


 グホッ!


 私と分かった途端、真ん丸お目々を潤ませ、全身を震わせる姿は悩殺ものです!!


 『どこ行ってたんだよ!』

 「うん。ごめんね」


 小さな体を抱き上げて背中を撫でてやると、必死になってしがみついてきた。
 ちょっと爪が刺さって痛いが、気にせず撫でる。


 その時――。


 「グルルルルゥ」


 ビクッ


 獣のうなり声に、思わず固まる。
 腕の中でダンゴも固まっているのが分かる。


 恐る恐る振り向くと――。



 『うまそうだなぁ』

 『ちっちゃいけど柔らかそうだなぁ』

 『みんなで分けて食べようなぁ』


 そんな声が茂みの中から聞こえ、赤い瞳がいくつもきらめいている。


 こ、これはやばいかも……。


 一匹じゃない。
 茂みに隠れられるくらい小さいが、数が多い。


 『白いやつ、柔らかそう』

 『黒いやつもうまそう』


 じりじりと後退すると、茂みから出てきた。

 その姿は―――。



 「で、でっかい蟻!!」


 大人の人間くらいある蟻だ!
 しかも前の方にある足にはカマキリみたいな刃がある。


 そこで思い出した。
 蟻は集団で暮らす生き物。

 ということは…………。



 ガサガサ、ガサガサ



 四方八方の茂みからカマキリ蟻が出てきた!


 『持ち帰って食べるぞー!』

 『『『『『おーーーー』』』』』



 「『ぎゃあああああああっ!!!!』」




 一糸乱れぬ飛びかかりに、私とダンゴは悲鳴を上げた。



〜あとがき〜

この蟻はキメラアントとは何も関係ありません。ただのカマキリ蟻です。獣のうなり声の。

人間がしゃべる以外の動物の表記を【】から『』に直しました。
今後会話が増えるので『』の方が分かり易いし、作者も書きやすいなぁとか思って変えました。
【】の方がいいかもという方、お知らせください。

他の話も近いうちに直します。

では、次回。

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