七
【おい、ひと!】
世にも恐ろしい教育的指導を体験し、ぐったりと地面に転がっていると、先に復活した子猫がトコトコと私のもとへやってきた。
「『人』って……種族名じゃなくて名前で呼ぼうよ」
呆れながら身体を起こすと、子猫が首を傾げた。
【なまえってなんだ?】
あぁ、そういえばこの子は生まれたばかり。何も知らないんだった。
「名前っていうのはね、個々を区別するためにあるんだよ」
【?それってひつようなのか?】
「え、必要でしょ」
【我等に人のような個を区別するモノはない】
「そうなんですか?」
母猫は地面の上に寝そべり、顔をこちらに向けて言った。
【我は母でありその子は我の子。そしてお前は人の子。それ以外何の区別する必要がある?】
確かに、人間ほど数がいれば区別のために名前など特徴が必要になるが、本能で生きる動物には必要ないだろう。
「それもそうかぁ」
まぁ、いいか。
私たちしかいないわけだし。問題ないだろう。
【〜〜〜〜っおい!】
子猫がぴょんぴょん飛び上がり、叫んだ。
実はさっきから呼んでいたのだが、母猫と話の最中だったし、あえて無視してたのだ。
「何?」
子猫は無視されたことに怒ったらしい。
身体がプルプル震えている。
か、かわいい〜〜〜〜〜っ。
思わず飛びつきたくなるのを押さえ、先を促す。
【おまえ、かあさまとちがうのに、なんでここにいる?】
どうやら教えられなくても、本能で私がこの場に異質だと感づいたらしい。
「それは神が…………」
あ、そうだ!
神!
すっかり忘れてたが、母猫は神のこと知ってるんだった。
「そういえば、何故神のこと知っていたんですか?」
母猫に訊くと、【それは明日父にあってから話そう】と言われた。
父。母猫のお父さん。
どうやらここには羽根つき猫が他にもいるようだ。
早く会ってみたいなぁ。
【それより、人の子よ。お主、腹はすいておらんのか?】
食欲は「ぐ〜〜っ」あるようです。
頷くと、残された巨大鶏を目の前に置かれた。
【さぁ、食べるといい】
い、いや。食べるといいって……こんなに食べられません。
【あぁ、そういえば人は生で肉は食べないのだったか】
そう言った母猫は鶏を咥え空中に放り投げた。
巨大な鶏の姿がどんどん離れていく。
母猫はのっそりと体を起こすと、口を開け――。
ゴオオオオオオオオオッ
炎を吐いた!?
その炎は天高く伸び、放り投げられた鶏を包み込む。
炎がやむと、目の前にはこんがりと焼けた鶏が……。
羽根つき猫は炎を吐ける種族らしいです。
私の隣では子猫が目を輝かせて母猫を見ていました。
この可愛い奴め!
ちなみに、焼き鳥はみんなで分けて食べました。
中まで火が通っていて、とても美味しかったです。はい。
〜あとがき〜
お待たせして申し訳ありません。
暖房といった高価なものが部屋にないので、風呂上りの体があったかいうちに書いている唯野歩風呂です。
寒さで指が動かずなかなか筆が進みませんでした。
お正月休みでいろいろな人が読んでくださってうれしい反面、筆が遅くて申し訳なく思います。
今年は四月から社会人一年目になるので、ストレスで筆が進むか遅くなるかわかりませんが、
なるべく日を空けずに更新……できたらいいなぁ。
なんにせよ、今年もよろしくお願いいたします!
唯野歩風呂