小説『超短編集4『人形少女の淡い夢』』
作者:加藤アガシ()

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【メリーゴーランドの考察】




もう大分前からメリーゴーランドが好きだ。

別にアレにのって、ぐるぐる回りたいわけじゃない。

あくまで、メリーゴーランドの気概(システム)が好きなんだ。


そもそも大人になると、

恥ずかしいのか結構ミンナ乗るのを避けがち。



それも含めてメリーゴーランドにはなぜか哲学的イメージを持っている。

馬に乗って同じところをグルグル回り続ける。

なぜかモーツアルト的リラックス音楽に、やたらと派手な電飾。




乗っていることよりも見ていることに意味があるような。

乗っているヒトを一部にして一種のショーに仕立てしまうような。

そんな不思議な空間をつくっているよ。





親たちは自分の子供をニセモノの馬に乗せ、それを外から見守る。


ずっと同じところを回っているのを、ずっと見ている。

ニセモノの筋肉質な馬や、異様に装飾された馬車に乗った子供たち。

本当は床が動いているだけ。

回っているだけで、まったく先に進まない。



でも時間がくれば全員下ろされる。

音楽が止まる。

次の子供がやってくる。

時々、恋人たちもやってくる。

あの空間に戻るために。味わうために。

嘘の行進。

メリーゴーランド。またはカルーセル。


そして、みんな笑っている。

回り続ける。




だから泣けてくるんだ。


あのワザとらしいほどの装飾がやたら美しい。




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