小説『IS 幻想の王』
作者:沙希()

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第7話 過去の決別と、クラス代表



休み時間が終わる前に、篠ノ之さんと一緒に教室に戻った俺は直ぐに席に着き、授業が始まるまでにとりが作った電子パッドを取り出し、紫との連絡を取っている
幻想郷ではいつも通り平和な日常である事を聞いて安心をするに対し、この世界では更に負のエネルギーが高まった様である



「何をしているんだ?」



不意に、篠ノ之さんが俺がメールを打っている電子パッドに目を向けてきて、話しかけてくる



「うん?あぁ。連絡を取ってるんだ。色々と企業関連で忙しいから、少しは手伝いになれる事くらいはやろうって」



「そうか。で、連絡相手は誰なんだ?企業と言ったが、まさか社長とかそういう人達からか?」



「まぁ、そんな感じ。それよりも、篠ノ之さんの読んでる本って見た事無い本だな。出版社も書いてないし、自分で書いた本?」



「いや、これはだな・・・・・ある人からの贈り物なんだ」



「ある人?」



「あぁ。私が小さい頃、一人だったんだ。前までは親戚の人達がいたから、一人では無かったんだが、ISの登場で私はそこから引っ越す事になったんだ。
そして引っ越し後、私の・・・・・・大切な人が失踪したと聞いてショックを受けたんだ。あまりにも唐突だったから、その時嘘だと何度も否定したけど、やっぱり帰ってくる答えは一緒で、そして外に飛び出した私が外で彷徨っていると出会ったんだ」



そう言って篠ノ之さんは大事そうに本を持ち、嬉しそうな笑みを浮かべる
屋上で見せた、思い詰めた時の表情でなく、何処にでもいる可愛らしい少女の様な笑顔であった
でも、それでも、笑顔では隠し切れていない何かを感じる



「その人は私にこの本と、刀を渡してこう言ったんだ。『何時までも泣いてちゃいけない。その大切な人が例え居なくなったとしても、必ずしも出会えないという事は無いんだ。この世界は、何時だって誰にだって平等で、優しいモノだから。だから、強くなれ。強くなって、その大切な人を守れる強さを、見つけて見せろ』って。子供のころだったが、その言葉の意味なんて深くは考えた事はなかったんだ。でも、今で分かるような気がするんだ」



「そっか・・・・・・・・」



「だから私は、大切なものを守ってみせる。私は、大切な人を守れる強さを見つけてみせる」



今までの様な不安な感情が消え去っている瞳
さっきの話で、どうやら何か決意をしたようである
だから俺はこう言うしかない・・・・・



「じゃあ、頑張らないとな。君、いや、お前が強くなる所を、俺は何時でも見守っていくよ、箒」



「!?・・・・あぁ!ありがとう、刹那」




―――――キーンコーンカーンコーン――――



箒が俺の手を取り、嬉しそうな顔をしてお礼を言ったと同時に授業開始のチャイムが鳴り響いた
先生が教室に入り、授業開始の挨拶を済ませ授業を始める
俺は挨拶後、席に着いて不意に箒を見るとさっきまで歪んでいた顔が柔らかくなっており、俺は少し安心する





箒からの負のエネルギーは一切感じなくなったが、何か他のモノを感じる事は俺には出来なかった














箒side




気分が良い、いや、心が軽くなったと言った方が良いのだろうか
授業が開始され、私はノートを取りながら不意に隣に居る刹那に目を向ける
刹那は黒板に目を向け、私を含めて皆と同様ノートを取っている
私は、また救われてしまったようだ・・・・・・・










前の屋上でもそうだったが、さっきの事でもそうだ
私は机から誰にも見えない様にスゥっとさっきまで出していた題名の無い、出版社も著者名も無い本をほんの少しだけ出す
小さい時、私が家を飛び出し、外で彷徨っている所に私はある人物に出会った
私を励ましてくれた、例え最愛の人が居なくなっても必ず会えると教えてくれた、私に、私に守る為の決意と生きる意味をくれた










そして巡り合えたんだ、最愛の人に
記憶が無かろうと、名前が違っていようと、姿形が少しだけ異なっていようと戻ってきてくれたのだ
信じていた、帰ってくると、また出会えると
数年の時を、最愛の人を必ず守り通す為に独学で振り続けてきた剣
苦しくても、悲しくても、全ては最愛の人の為だけに費やしてきた全ての時間が無駄ではない事を、漸く証明された










おかえり、そして、よろしく
過去のお前でなくても、私はそれでもお前が好きだ
織斑 一夏でなく
ただ一人の人間である、蒼月 刹那として、私はお前を愛し、そして、必ず守り続けて見せる





side end









箒が過去の決別と、守る決意をし、刹那がノートを取っていると急に千冬が何かを思い出したかのように黒板から生徒へと視線を向けた
そして千冬の口から出た言葉は来月行われるクラス対抗戦の代表決めであるのだ
周りからはザワザワと騒がしくなり、段々名前が挙がっていく
織斑 冬人   蒼月 刹那の男の2人だけが呼ばれたのだ
冬人の方は少し驚いたが、やる気満々に対し、刹那と言うと――――




(紫の話じゃ、負の塊に支障をきたすからあまり面倒な事には巻き込まれるなって言われてたな・・・・)




などと考え事をしていた
だが紫にはもっと別の理由があるのは刹那でも勘づいている。
クラス代表を行うとなると、この世界で刹那の圧倒的な実力と戦闘能力が露見される可能席があるからだ
幾ら学園長と交友が深いからと言って、完全に防ぎきれるわけでもない
最近知った事だが、暗部である更識家が探りに来る可能性があるからだ






「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを、物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります!わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのです!サーカスの練習に来ているのではありませんわ!大体こんな国にこの様な施設が有ること事態が可笑しいのです!極東なぞのわざわざ遅れている国にこの様な重大な施設を作るなど!」





「イギリスだって大したお国自慢無いじゃないか。世界一不味い料理一位、何年覇者だよ」




(あぁ、そういや、十蔵と玲子の部屋にでも行こうかな。ユエルから寮に住んでるって聞いたし、丁度夜は暇だろうからお邪魔させてもらおうかな)





「あ、あなた・・わたくしの国を侮辱すると言うのですか!?」





「先に侮辱をしたのは君のほうだろ」





(刹那さん、少し良いですか?)





(ノエルか?態々念話まで使ってどうした?)





(えっとですね、今日部屋にお邪魔しても良いですか?なんか今日はすっごく疲れてて)





(あぁ、ほぼ毎日負の塊を浄化してきたからね。いいよ。俺の『楽を伝える程度の能力』で何とかするから。あ、場所は十蔵と玲子の部屋でいいか?今日は十蔵と一局打ちに行くんだけど)





(はい!!あ、それとユエルさんは今日は一旦幻想郷に戻るそうです。なんでも連れて行きたい人が要るとか何とか・・・・)





(・・・・・まぁ、大体分かった。じゃあ、今日の夜、十蔵の部屋に集合って事で。十蔵と玲子にはちゃんと訳を話すよ)






(はい。あ、それと、もうクラス代表とか決まりましたか?)






「さっきからアナタは言いたい放題!!もう許しませんわ!!」






「自分の立場を理解しなよ、代表候補生。他人の国を侮辱しておいて、
底が知れるね」






(・・・・・・少し待ってくれ、ノエル。今どうやら周りが煩い)





(まぁ、予想してましたけどね。その話は夜に聞きます。では、また)




ノエルが念話切り、刹那は少し息を吐いてキャンキャンと犬の様に叫び散らしている2匹の二足歩行動物を見る
隣に居た箒は刹那の表情を悟ったのか、2人を見てやれやれと言った感じになっている
箒以外の周りの生徒は刹那がどんな表情をしているのかも、気が付いていないのだ




「ハンデはどのくらいつける?」





「あら、早速お願いかしら?」




「いや、僕がどのくらいハンデをつけたらいいのかなーと」





「織斑くん、それ本気で言ってるの?」





「男が女より強かったのって、大昔の話だよ?」




「しかも、467個しかないコアの1個を専用機として持ってるのに」





どうやら話の内容からするにISを装備している相手にハンデを付けてやると、織斑が口に出し、対する周りは逆ではないのかという、こいう事だろう
刹那は周りの話しに呆れと、落胆と言った感じの表情へと変わった
そして段々ヒートアップするであろうと予想をしたので













「黙れ」






『!!???』




刹那は神気、妖気、魔力、殺気をおよそ合計で3割の量を出し、さらに重圧のある言葉を加えると箒以外の周りは驚き、静まり返って刹那に視線が集中する




「お前らは静かにできないのか?隣のクラスはもう授業中なんだから、黙っていろ。とくにそこの2人は迷惑だ。騒ぐのは大いに結構だが、もう少し節度をわきまえろ。織斑先生の顔を見て見ろ。滅茶苦茶迷惑そうな顔をしているぞ」





「・・・・・・・・・」





『・・・・・・・・・・』





刹那の言葉に、箒以外の生徒は視線を千冬に集中させる
千冬は何とも迷惑そうな顔で腕を組み、カツカツと足踏みをしている
それに察したのか、さっきまでの騒ぎが嘘の様に静まり返り、誰も一言すら喋らなくなった
刹那は漸く言った感じで溜息を吐き、席に座る





「織斑先生。さっさと終わらせたいのでクラス代表戦でもしてください。それなら手っ取り早いですし」





「・・・・・わかった。では、蒼月が言った様に、蒼月を含めて織斑、オルコット3人で闘って決めてもらう。異論はないな?」





『は、はい!!ありません!!』




「さて、異論が無いという事で授業を再開する。(さっきの一夏の重圧、あれはタダものでは無かった・・・・・・・・)」





千冬は授業を再開し、テキストを読み始める
その間、クラスでは誰も喋るモノもおらず、授業が終わるまで空気が悪かったのであった


-10-
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