小説『IS 幻想の王』
作者:沙希()

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閑話 君の名



これは、刹那がクロノスであるユエルと出会い、そして師匠と呼び、長年共に闘い続け、そして永琳に名字を授かる物語である
まだユエルよりも弱かった刹那が、必死にも一人で妖怪や恐竜相手を相手にしているのである



「第六六六拘束機関解放!!」



「次元干渉虚数方陣展開!!」



「『藍の魔道書』起動!!」




「行くぜ、おらぁあああああああああ!!」





『ガァアアアアアアアアアア!!』




全身から溢れ出る濃厚な殺気と力で、刹那は向かってくる巨大な妖怪や恐竜に立ち向かっていく
切り裂いて行くたびに帰り血を浴びるも、刹那はそれでも引く事も怯えることも無く進んでいく




「インフェルノディバイダ―!!」



切り上げた巨大な性のセラミック製の大剣は妖怪を切り裂き、大地を抉る
そして刹那は体中についている血を拭い、目の前に居る大量の生物と妖怪を見るのである
大きいモノも要れば、同じ大きさなモノもいる
理性があるモノも要れば、無いものまで要るのだ




刹那は背中にセラミック製の大剣を仕舞い、両腰に付けている剣を抜き取り、構える



「魔神剣・双牙!!閃空裂破!!空破絶掌撃!!猛虎連撃破!!」




斬撃を放ち、交差する様な高速移動で相手を翻弄しながら一つ一つ倒して行く
疲労という表情を一切出す事も無く、敵を殲滅していく刹那
圧倒的な力の前に、誰人すら刹那を止めれる者はいなかった



『ば、化け物だ!!』




『こんな人間が要るなんて、聞いてねぇ!!』




『に、逃げろ!!』




「逃がさねぇ!!緋凰絶炎衝!!」





『ぎゃああああああああ!?』





『くっ、よくもやってくれたなぁああああああ!!』




「はぁああああああああああ!!極光剣!!」




数で行くと数千を超える妖怪達
目の前の数に誰もが絶望するだろうが、刹那は臆する事もを無く突き進み、躊躇い無く叩き伏せている
鬼神の如く、剣を振りかぶる顔はまさにそれに等しいのだ




この壮絶な闘いが、数時間続き、漸く終焉に至るのであった






























ここはまだ生物が要る筈の無い世界のはずなのに、村がある
そしてそこには人一番大きい家が一軒あった
そこは八意 永琳の家なのだ
中には、3人ほどの人影らしきものが見える




「ほら、ジッとしてなさい。まったく、確かに村に入らない様に妖怪を退治してっていたけど、ボロボロになるまで倒さなくても良いじゃない」




「イダダダダダダ!?永琳!傷口に薬が滅茶苦茶染みて痛い!!」




「痛いのは最初だけよ。それに痛いのは生きている証なんだから。ユエル、そこにあるハサミ取ってもらえる?」




「ほら。それよりも、まったく刹那ときたら。私も要るのだからせめて念話で伝えればいいものを。私が来れば直ぐに終わったのに」





「すいません、師匠。でも、これくらいは自分で出来ないと、師匠に追い付けないと思って」





「急ぐ事はない。お前の『全てを完成させる程度の能力』で、急激に成長している。あまり焦る事は無いのだ、馬鹿弟子」





「うぐっ・・・・・すいません」





「分かればよろしい。では永琳。私はまた妖怪の殲滅に取り掛かる。帰ってくるのは夜かもしれない」





「分かったわ。あ、でもせめてお風呂入ってから行きなさい。元が美人なのに、そんな状態じゃ村人が驚くわ」




「・・・・・・・面倒だ。帰って来てから入るとする」




そう言ってユエルは空に飛んで行き、遠くまで行ってしまった
そんなユエルに永琳は溜息を吐いて、刹那の怪我の治療に専念する




「はぁ、ユエルったらもう・・・・・潔癖症なのか、そうでないのかハッキリして欲しいわ」




「はははは。それが師匠ですから」




「まぁ、納得せざる追えない答えね」



ハサミで包帯を切り落とし、取れない様にきつく縛る
少しウッと刹那は呻いたが、なんとか持ちこたえたようである



「これでよし。今度からはあまり無茶はしないでね、刹那。アナタが傷つくのは、ユエルだけじゃない、私まで嫌になるんだから・・・・・」




永琳はそう言って刹那を後ろから抱きしめる
刹那の体には所々薬や現代の最新技術でも消せない傷が残っている
行くたびの戦場を駆け巡ってきた刹那の体には、無数の刺し傷や、抉られた傷などがところどころにある
だが、背中は違った
背中だけは、無傷のままで、傷跡一つすらないのだ
それには理由がある







逃げなかったからだ







最初の戦闘でも、刹那はユエルに闘い方を教えてもらい、人並み以上に闘う事が出来た
だが、人間以外に生息する生物や妖怪が相手なので、正直最初は誰もが恐怖するだろうが、刹那は違う
逃げることも、臆する事も無く前に突き進み、強くなって守りたいものを守るという決意をした刹那にとっては逃げるという言葉は頭になかった
逃げる事は別に悪い事では無い
体勢を立て直し、作戦を練る事で戦況が変わる事も出来る
だが、刹那は逃げなかったのだ




「アナタは守る為だけに強さを求め続けた。でも、それじゃダメなの。アナタが傷つく事は、ユエルや私だって望んでない。アナタが死んでしまったら、残された私達は悲しいのよ?」




「・・・・・・・・・・・」




「記憶の無い貴方には前に居た世界に守る人はいなかったのかもしれない。でもね?これだけは言わせて。あなたのことを大切にしている人はここにだって。だから絶対に無茶だけはしないで」





すすり泣く声を押し殺しながら永琳はさらに強く刹那を抱きしめる
そんな永琳に刹那は黙って泣きやむまでそのままにするのであった















永琳が泣きやみまで数分が経過する
いつもの様に永琳は調子を取り戻し、夕食を済ませた後刹那と2人で月を見ている
前の世界よりも、月が綺麗に見えるのだと、刹那はそう思いながら酒が入った杯を手にとり、一口含む




「綺麗ね・・・・」




「そうだな」




それ以降から全然会話らしき会話が無い
でも、これで良いのである
こんな綺麗な夜に、況してや2人の間には、あまり騒がしいのは似合わない
むしろこうやって黙って2人一緒に寄り添いながら空を見上げるのが、2人にとって何よりも楽しみであるのだから
刹那の杯が空になると、横に居る永琳は直ぐにそれを注いで、刹那は注がれた酒を飲む
その様子を永琳はジッと見つめて、口を開いた




「こんな綺麗な夜でも、アナタの青色の瞳は輝くのね」




「自分でも分からないけど、やっぱり目立つのかな」




「私は良いと思うわ。アナタのその瞳、私は好きよ?」



「ありがとう・・・・」




照れたように少し永琳に頬笑みを返す刹那に、永琳は少しドッキとした感じなり、顔が少し赤くなってしまう
今でも慣れない不意にむせる刹那の笑顔には、月の頭脳である永琳には敵わないのであるのだ
永琳が刹那の頬笑みで赤くしていると、何か思いついた様に閃いた




「蒼、月・・・・」




「?どうしたんだ、永琳?」




「アナタの名字よ。蒼月。蒼月 刹那。蒼の瞳に、今日の綺麗な月を表してみたの。これから先は名字が必要になってくるから、いいでしょ?」




そう言って満足そうな笑みを浮かべる永琳
刹那は蒼月という名字を呟きながら杯に入った酒に映し出される自分の顔と、後ろにある月を見る




「そう、だな。うん、そうだ。それにしよう。俺は今日から、蒼月 刹那だ」




これが、刹那に名字が付いた瞬間であるのだ
単純であるが、永琳が思い付いて付けたのだから大切にしたい、そう刹那は思い、名字を選んだ



















その後、2人で酒を飲み交わして行く内に、段々とお互いを求め合うようになってしまい、しまいにはその場で体を重ね合わせるのであった
初めての契りに、永琳は何度も悲鳴を上げるが、段々と快楽におぼれた声になって行ったそうな
そして、ユエルが帰って来た時には永琳は白い液体まみれで、刹那に抱かれて眠っている所を発見し、刹那はユエルから地獄の鬼ごっこを行う羽目となったのは、これまた別の話である

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