小説『IS 幻想の王』
作者:沙希()

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第16話 真実と正体。そして2人の思い





織斑との試合を終わらせ、俺は部屋に戻ってベッドに倒れる
息を吐き、電子パッドを出して負のエネルギーメーターを見る
そこには爆発的に高いグラフが表示されており、数日前に見た時よりも変わらないままであった



「これは、能力使わなくとも精神的にまいっちまう・・・・・・・」



楽を伝える程度の能力
自分にも相手にも出来るのだが、今このグラフを見ただけで楽なんてできやしねぇよ、おい。
それにしても、今日は箒と簪に説明した後どうすっかな・・・・・・
等と考えていると



――――――――コンコン――――――――




『刹那、私と更識だ』



「おう、入ってくれ」



「失礼する」「・・・・・失礼します」



「いらっしゃい、箒、簪。取り敢えず何か飲み物とか用意するけど、何が欲しい?」




「なら、緑茶をいただこう」「・・・・・・え、えっと、ココアで」




「分かった。じゃあ、少し待っていてくれ」




俺はそう言って茶葉とお湯、ココアパウダーを取りに食堂に行くのだった 












私は今、隣にいる篠ノ之さんと一緒に刹那の部屋に居る
どういう訳か、何やら刹那が説明したい事があるらしいので呼ばれてきた
ノエルは刹那のクラス代表戦の後に、仕事が入ったらしくどこかへと言ってしまった



「・・・・・え、えっと、篠ノ之「その名で呼ぶな。私は名字は好かん」・・・ご、ごめんなさい」



「いや、すまない。別にきつく言うつもりはなかった。恐がらせてしまったのであればすまない。それと、私の事は箒で構わない」




「・・・・・・じゃあ、私は簪で良い。よろしくね、箒」



「あぁ、よろしく頼む、簪」




私は差し出された手を握る
ノエルや本音以外の友人が出来るのは初めてであり、少し自分がこれほど積極的だったのか驚いている
でも、今はそれよりも・・・・・・・・・・




「・・・・・えっと、一つ聞いていい?」




「なんだ?」




「・・・・・・どうして名字が、嫌いなの?」




ピクッ「・・・・・・・・・・・・・」



私の質問が不味かったのか、箒は嫌な顔をして天井を見上げる
まるで私がお姉ちゃんの事が嫌いだった時と、同じ表情であった



「私の姉、篠ノ之 束という存在が嫌いだった。」




「・・・・・え?お姉さん、なのに?」




「あぁ。あの人は周りの事すら考えず、あれこれ自分の事だけしか考えていない様な人だ。対人関係だってそうだ。あの人は自分の興味対象としか話さないし、関わり合おうとしない。それと、私がもっとも許せない部分は例え家族でも、親戚の友人でもあの人は人の努力を踏みにじる行為だ。あの人は、かつて私が本気で好きだった人の努力を踏みにじった」




言葉の一つ一つに、怒りを感じる
それに本気で好きだった人って、もしかして・・・・・・・・・・・・



「それに織斑 冬人だってそうだ。アイツは姉と同様で相手の能力で識別してる。自分の兄を能力が劣っているからと言って見下しているのだぞ?私は、この名字と同様で姉と冬人が嫌いだ。何知らない癖に、知ろうともしない癖に勝手に決め付ける、あの2人は私は大嫌いだ」




「・・・・・ごめんね。なんか嫌なこと言わせちゃって」




「いや、別に構わない。簪はどうだ?自分の名字は好きか?」




「・・・・・・うん、大好き。前までは、この名字の姓で縛られてきたけど、私は刹那が勇気づけてくれたおかげで好きになれた。だから私は、お姉ちゃんと仲直りしたい」




「そうか」




箒がそう言うと会話がここで終わってしまった
訊きたい事や言いたい事があるのに、何故か言葉にする事が出来ない
だけど、それでも良いのかもしれない
今は、今は何も言わないほうが良いのだと・・・・・・



Side end







俺はココアと緑茶、コーヒーを御盆に載せ自分の部屋へと向かう
すれ違う女の子達は、俺を見てヒソヒソと陰口を言っているが全く気にしていない
別に侮蔑を込められようが、馬鹿にされようがどうでもいい
信じてくれる人が要るから、俺はその人達の為にやっているだけなのだから
部屋の前につくと、俺は自分の部屋の前についてドアノブを回し、部屋に入る
すると箒と簪が何やら楽しそうに会話しているのだった




「もう仲良くなったのか?」




「ああ。もうこれで2人、いや、3人目の友人が出来た」




「・・・・・・・・・・私も」



「そっか。じゃあ、取り敢えず、はい、飲み物」



「すまない」「ありがとう」



俺は2人に飲み物を渡し、箒達の向かい側にある椅子に腰をかける
下にある冷蔵庫からペットボトルの幻想郷の水を取り出し、水を口に含んだ



「さて、ここからが本題だな。簪はノエルから俺やにとりの事は訊いたか?」



「・・・・・・少しだけなら。刹那とにとり、それとノエルは幻想郷の住人で、後は負の塊と闘っているという事だけ」



「そもそも幻想郷とはどういう所なんだ?負の塊だって」



「まぁ、まずは一つ一つ話して行くから。まずは幻想郷だ。幻想郷は、俺と箒は知っているだろうが紫とユエル、ノエルの4人で数百年かくて作り上げたもう一つ世界だ」




「す、数百年!?じゃあ、刹那が神だと言ったのは・・・・・・・」




「マジだ。それに俺は別の世界で地球が出来た数年たった世界に飛ばされたんだからな」



「・・・・・・・じゃ、じゃあ、刹那はもう人間じゃないの?」



「ああ。ノエルやユエル、にとりや紫、それに妖夢も同様にだ。で、話を戻すが幻想郷には鬼、悪魔、妖怪、幽霊、神、そして人間がいる世界だ。この世界より空気や水は澄んでいて、とっても綺麗な世界だ。だから俺達は、その世界を人も妖怪の誰もが暮らせる理想郷を幻想郷と名付けたんだ」



「と、突拍子もない話しだ」



「・・・・・・で、でもそんな場所があったら行ってみたいな」



「あははは別に構わないけどね。あそこは来る者拒まず。だけど幻想郷を穢す輩は容赦無用で排除するけどね。で、次は負の塊だな。負の塊については、2人はどれくらい知ってる?」



「私は、クラス代表戦の時に、人の感情から生まれたとだけは訊いた。後は、理性が無いとか、あるとか、そういう感じだ」



「・・・・・・・私は刹那達がずっと前から闘って来ているって訊いた」




そこまで訊いたのなら尚更だな
後はちょっと加えるだけだし



「概ねその通りだ。後は付け加えるなら負の塊は並大抵の力と、それとISでは勝てないという事だけだな」



「な!?じゃ、じゃあ刹那はどうやってその負の塊を倒してきたのだ!?試合の時のあれはISでは無いのか!?」



「うん、違う。これから先の事は誰にも言わないでくれないか?後々困るんだ」




「・・・・・・うん、分かった」「私も別に構わない」



「ありがとう。試合の時に見せたIS、あれはISとは呼んでいないんだ。あれはタダ単にこの指輪に服装を登録、というより記憶させているだけで、シールドエネルギーもPICだって存在しない。全部神気、妖力と魔力、気で浮いてるんだ。俺が試合に見せたアレはタダの武器なんだ。こんな風にね」



俺はアマノムラクモを双剣にして出すと2人は驚いた
試合の時の様な服装で無く、IS学園の制服のままで
部分展開だと思えるだろうと思い、双剣から大剣に、大剣から槍に形状を変化させていく




「凄いな」




「・・・・・・・・・カッコいい」




「ありがとう。で、この武器は負の塊を倒せる武器で、後は能力だけかな」




「「能力??」」




「うん。ちょっと待ってね。・・・・・・・・・・はぁ!!」




「きゃっ!?」「な、なんだ!?」




俺は骸殻能力を発動させ自分の体を鎧で包み込む
光が消えると簪と箒が俺の方を見て驚いた顔をする




「これはISじゃなくて、骸殻能力って言うだ。負の塊や歪みに対抗する為だけの力だ。まだまだ不完全だけどね」




「きょ、今日は驚きの連続だな。幻想郷だったり、負の塊だったり」




「・・・・・うん。なんか頭が痛くなってきちゃった」




「そういう時は、ほい」




俺は簪の頭をナデナデする
簪は少しビックリしたようだが、直ぐに気持ちよさそうな顔をして目を細める
楽を伝える程度の能力を使ったので気持ち良く感じるのであろう



「・・・・・温かい」



「もう一つの能力、楽を伝える程度の能力だ。気持ちいだろ?」




「・・・・・・うん♪癖になりそう♪」



「せ、刹那!!簪だけでなく、わ、私にもしてくれ!!」



「はいはい。よしよし」



「はふぅ〜♪」



箒も目を細め、猫の様になってしまった
俺は面白くなり、顎をこしょこしょと掻いてやると擽ったそうだったが、更に気持ち良さそうであった
だが簪がプクッと頬を膨らませ、こっちを見ている




「・・・・・・むぅ」




「取り敢えず、一応話しに戻そうか」




「あ・・・・・」



そんな残念そうな顔をしないでくれ箒
まるで捨て猫を目の前にしているかのようだから
俺は内心苦笑いをし、変身を解いて椅子に座る



「さっきの程度の能力は俺達幻想郷の殆どが持っている能力でね。ありとあらゆるものを破壊する程度の能力や、境界を操る程度の能力、空を飛ぶ程度の能力などがあったりする。程度が付くのは、それだけしか使えないという意味だと俺はそう仮設している。最後に俺のもう一つの力だけど」



「ま、まだあるのか?」



「まぁ、処理しきれないのは分かるよ。さて、最後の能力だけど藍の魔道書っていう能力なんだ」



「・・・・・・魔道書なのに、能力なの?」



「疑問に思うのも解るけどね。少なくとも俺達はそう呼んでいる。俺の中に内蔵されてあるその魔道書は、ありとあらゆるモノからエネルギーを根こそぎ奪い取り、力にするんだ。あ、でも生命のエネルギーは例外だ。できるのは時空の歪み、まぁ歪みさせあればなんでも良いんだけどね。因みにノエルも持っているよ」




「・・・・・・え?そうなの?ノエル、そんなこと一言も言ってなかったのに」




「あぁ。でもアイツのは特殊だから。俺のより精度は格段に上なんだけどね。さて、これでお話しは終わりだ。何か質問はないか?」




俺がそう言うと簪と箒はう〜ん、と悩み始めた
まぁ、こんな事を聞いていきなり理解しろだなんて言われたら、誰にだって混乱するだろう
などと思っていると、簪が手を上げていた



「・・・・・えっと。どうして、私達だけにこんな話をしたの?こいうのは、織斑先生とか、山田先生、お姉ちゃんに話した方が良いんじゃないかな?」



「あぁ、それはね。簪と箒には俺と同じで程度の能力を持っているからだよ」




「「え!!??」」




「じゃ、じゃあ、私達に話したのは、もしかして、負の塊と闘わせる為なのか?」




「・・・・・・・・そうなの?刹那」



2人はとても不安な表情を浮かべそう言った
うん確かにそうなりかねないだろうね



「そうだ。でも、お前達には選択権がある。このまま能力を理解し、鍛え上げ、俺達と一緒に闘うか。それともそのまま記憶と能力を消してそのまま普通の人として生きて行くかの2つだ」




「「・・・・・・・・・・・・・・」」




「今は答えを出さなくていい。だけど答えは成るべく早くの方が、こっちとしては有難い。明日明後日には答えを聞きたい。決断したら、俺の部屋に来てくれ」




俺はそう言い残し、少し夜風に当たろうと思い寮に出る事にした
・・・・・・・あの2人には、卑怯な言い方をしてしまったかな
内心後悔しながら、俺は寮の外へと歩いて行くのだった



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