第6話 動き出す歯車
俺の隣の席にいる篠ノ之さんが急に泣きだして、慰めてから数分が立つ
自己紹介を済ませ、SHRが終わり、俺は直ぐに篠ノ之さんに屋上に連れていかれたのだ
俺は手すりに手を乗せ、屋上から見える海を眺めている
一向に喋らない篠ノ之さんと言うと、俺の隣で一緒に海を見ているのだ
「なぁ、俺を読んだ理由って、何?」
「・・・・・・・・」
俺の問いに、篠ノ之さんは終始無言の状態である
少し悲しい表情をしていたので、俺は小さい時、無限世界の俺を思い出し、腰に巻いていたポシェットから袋に入った飴玉を取り出した
俺は袋に入っている何も書かれていない紙に包まれた飴玉を篠ノ之さんに差し出す
篠ノ之さんは少し分からない表情をしていたが、飴玉を受け取り、中身を取り出す
飴玉の色は、蒼く、そして透き通っていた
「いいのか?」
「飴は食べる物だよ。それに俺は君に差し出したんだ、食べて良いよ」
そうか、と言って篠ノ之さんは飴玉を口に放り込む
すると篠ノ之さんは少し複雑な表情をした
「酸っぱい?」
「あぁ・・・・でも、少しだけ甘みがある」
「はははは。だろうな。その飴、人の心情を表してるんだ。蒼は悲しみと諦め、それに後悔。他には、怒りと恥じらいを表す赤に、全てが詰まった灰色だ」
「灰色?」
「そ。例えばこんなのだ」
俺は自分が持っていた飴玉の紙を取ると、灰色の飴玉が出てきた
篠ノ之さんの顔が明らかにマズそうだと思っているだろうが俺は気にする事もなく口に放り込む
うん。甘さとしょっぱさが5分5分と言った感じだ
「おいしい、のか?」
「甘さもしょっぱさも5分5分だから、丁度いいって感じかな。で、篠ノ之さんの飴玉は青だったから、なんか悲しい事でもあるんだね」
「・・・・・・・」
「無言は肯定と見なすぜ。でもいいよ、別に話さなくて。俺は別に君が俺を見て何を思って涙を流したのかはどうでもいい。でも、何時でもいい。お前が話したくなったら、何時でも話していいから。俺は何時だって、お前が話すまでゆっくりと待ってやる。だから今は、悩みな。そんじゃあ、そろそろ時間だし、早くしないと怒られるぜ」
俺はそう言って手すりから離れて入り口に向かう
篠ノ之さんは俺後を付いて行くように屋上を去るのであった
去り際に見た篠ノ之さんの表情は、とてもじゃないがあの時の俺よりも酷い顔をして悩んでいるのであった
これは・・・・・・流石にまずいな
俺はそう思いながら自分の教室へと、戻るのであった
ノエルside
私はSHRで自己紹介を済ませた後、休み時間が入ったと同時に背伸びをする
負の塊との戦いで結構疲労が溜まりつつあり、今でも眠くてたまらない
でも流石に学校で寝るのはいけないので、寮に戻ってから刹那さんの部屋でゆっくりさせてもらおうと思っていると
「・・・・・・やっぱり、駄目。これじゃあ、全然合わない」ブツブツ
隣の席に居る、更識さんが何やらぶつぶつと画面のディスプレイと睨めっこしているのである
挨拶の時もそうだったが、挨拶終了と同時に彼女は何やら焦っている様な雰囲気を出している
少し気になったので私は声をかける事にした
「あの、更識さん?さっきから、何をしてるんですか?」
「・・・・・・・・」
チラッと私を見たが、直ぐにまた画面に目を向ける
無愛想であると思ったが、どうやらそうでもないと思った
私は後ろから覗き込むようにして、更識さんが何をしているのかを見て見ると、すっごく驚いた
「これって、ISの設計図ですか?」
「!?・・・・・見ないで」
「あ、すいません。でも、気になってしまった。あの、もしかして、自分でISを作ってるんですか?」
「・・・・・・・・うん。私にはやらなければならない目標がある。その目標を超える為に、私はこの子を完成させないといけないの」
「そうですか。凄いですね」
「・・・・・凄い?ううん、私は凄くない」
「そんな事無いですよ。ISって、作るのが難しいんですよね?それを一人で組み立てているんでしょ?凄い事じゃないですか。私はあまり手先が器用じゃないから、こう云うのは点でダメですし、パソコンの画面を少し触る程度だけでチンプンカンプンなんですよ。そんな事が出来る更識さんが、とっても羨ましいです」
「・・・・そ、そうなんだ・・・・」
「はい。あ、私、ノエル・ヴァ―ミリオンって言います。ノエルと呼んでください」
「・・・・私は更識 簪。名字は嫌いだから、名前で・・・・」
「はい。よろしくお願いしますね、簪」
「・・・・・うん。よろしく」
私と簪はお互いに握手をした後、簪は画面のディスプレイに集中するのであった
私はただ其れを、ジッと眺めていると、良い事を思いついた
今度にとりにでも頼んでみようかな・・・・・・
???Side
とある空間
そこは無限に広がった空間の中
空間に見える無数の世界の光景が見える
そう、ここは無限世界を繋いでいる鎖と刹那達の世界の間であるのだ
そしてそこに、人の形を模した黒い塊が、浮いているのである
「オ・・・オリ・・・ムラ・・・・オリムラ イチカ・・・・」
黒い人を模した塊は、名前を声に出し、刹那達の要る世界を睨みつける
その眼には、憎しみ、悲しみの籠った瞳であったのだ
黒い塊は、自分の手を抜き取り、その場に投げる
すると腕が再生し、投げ捨てた腕から複数の人の形をした黒い塊が出来上がっていったのだ
「ソウヅキ セツナ、ユエル・ヴァン・クルスニク。ソシテ、ムゲンセイカイノジュウニンドモヨ、セイゼイヘイワボケデモシテイルノダナ」
そう言い残し、黒い塊たちは刹那達が要る世界にへと飛んでいくのだった
近い先の未来に、刹那達は強敵となる存在と巡り合うのであった