小説『IS 幻想の王』
作者:沙希()

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第5話 想い続けてきた少女




IS学園
それは、アラスカ条約に基づいて日本に設置された、IS操縦者育成用の特殊国立高等学校。操縦者に限らず専門のメカニックなど、ISに関連する人材はほぼこの学園で育成される。また、学園の土地はあらゆる国家機関に属さず、いかなる国家や組織であろうと学園の関係者に対して一切の干渉が許されないという国際規約があり、それ故に他国のISとの比較や新技術の試験にも適しており、そういう面では重宝されているところである




そして何よりもISにとって最大の欠点は女性にしか動かせないと言ったところである。
だから僕の周りは―――――




「(全員が女の子だらけなんだ)」




周りが女の子だらけで、視線が突き刺さる
居心地は悪いが、僕は冷静を保ち落ちつかせている
不意に、僕が隣の方を見ると窓側の席には幼馴染の箒が座っていた
凛とした表情を浮かべ、誰も近づけさせない雰囲気を放っている
僕は席を立ち、箒の元へと向かって行く




「や、箒。元気だった?」




僕は箒の目の前まで来て、挨拶をする
箒はスゥっと目を開け、僕の方を見る
前と変わることのない、睨んだような表情をしているが、束さんが言うに実際はコミュニケーションが苦手なだけであり、どんな表情をして良いのか分からないらしいのだ
そんな事を思っていると、箒が口を開いた




「何の用だ、織斑。私は今お前と喋る暇はないのだが」




「もう、折角数年ぶりに会えた幼馴染に対して言う事がそれだけ?久しぶりだね、箒。会えて嬉しいよ」




「誰が名前を呼んでいいと言った。それに私はお前に会えて嬉しくもなんともない。自分の席へ戻れ、邪魔だ」




そう言って机から本を取り出し、読み始めた
僕はそんな箒に照れているのだと思い、僕は席に戻る




そして数分立って、先生が教室に入って来た
緑色の髪で、メガネをしており、少し大人ぶろうとしている可愛らしい先生であった




「皆さん入学おめでとうございます。私は副担任の
山田真耶と言います。一年間よろしくお願いしますね〜」



ここからが、僕の学園生活が始まるのであった















箒side



私は今、とてもつまらない感情でいっぱいである
それは単純なことだ
一夏、それは長年想い続けてきた最愛の人の名前
私が引っ越して、1年後一夏が居なくなったと聞いた時は、私は衝撃を受けた
姉さんはどうでも良さそうであったが、私にとってはどうでも良いわけではなかったのだ
一夏は冬人の兄であり、千冬さんの弟であり、よく虐めを受けていた






強くて頼りがいのある世界最強の姉
なんでも出来て、姉さんと並ぶ頭脳を持った冬人と比べられていたからだ
それを、私は何も出来なかった
何度だって努力をしている一夏が虐められても、何も出来ない
理由は単純、弟の冬人が兄である一夏を虐めているからだ。




何度も蹴られ、何度も罵倒される一夏を私は救えなかった
姉と仲が良いので、私は姉の妹として接してきたので私には不愉快も同然なのだ





そしていま、私のいるこのIS学園の織斑 冬人がいる
私は途轍もなく、怒りに満ちている
アイツが私の所に来た時は殺気まで漏らしたくらいだが、アイツは全く気にもしていない様に話しかけてくる
姉さんに似ているこの部分だけ、私は正直神すら恨んだ




私は溜息を吐いて、まだ来ていない隣の生徒の机を眺めている
蒼月 刹那
もう一人のISを動かせる男の名前である
ニュースなどを見ていないので、どんな奴かは知らないので隣に来た時、どう接すればいいのか悩んでしまう
自分はコミュニケーション能力が欠落している
そのため遂素っ気なかったり、理不尽な理由で怒ったりするときがある
だから最低でもクラスメイトとして、隣同志として仲を安定させたいものだ





友人は欲しいのは確かだが、私に出来るのか不安である
はぁ、この部分だけ姉と似なくてよかったのに・・・・・・
そんな事を思っていると・・・・・





「織斑 冬人です。好きなモノは絆、家族、友人です。趣味は機械を弄るのと読書かな。この1年間、皆と仲良くやって行きたいです。よろしく」ニコッ



『キャアーーーーーーー!!カッコいい!!』




『こちらこそよろしくね、織斑君!!』



『私と仲良くしてーーーー!!』




周りの女子からの声でいっぱいになり、私は耳を塞いだ
煩い。そこまで叫ぶほどの事は言っていないだろう
アイツがどんな奴なのかも知りもしないで、なぜ嬉しそうにする?
顔なのか?顔が良いからなのか?
性格や心まで見ていないくせに、どうなっても知らんぞ




「あ、それと。そこに居る箒とは幼馴染だから、箒共々よろしく!!」




『え?篠ノ之さんって、織斑君と幼馴染!?』




『いいなぁ、いいなぁ。変わって欲しいな』




更に余計な発言を加えたので、更に騒ぎが悪化する
変わるなら変わって欲しい位だ
出来る事なら、私は篠ノ之という姓でなく、別の誰かの姓を貰って生まれてくれば良かった、と思ったくらいだ
そんな事を思っていると




「騒がしいぞ、織斑。お前はまともに挨拶が出来んのか」



「あ、千冬姉」



「今は織斑先生だ、馬鹿者。で、この騒ぎはなんだ?」



「いや、ただ自己紹介をしただけだけど・・・・」



「・・・・・・・まぁいい。次はあまり騒ぎを立てるなよ」




「はい。分かりました、織斑先生」



「あ、織斑先生。もう会議は終わられたんですか?」



「ああ、山田君。クラスの挨拶を押し付けてすまなかったな」



さっき冬人との対応とは違い、少し和らげな口調で山田先生と話している



「い、いえっ。担任ですから、これくらいはしないと・・・・」



千冬さんが現れたことで少し落ち着いたのか、少しはにかんで熱っぽい声で答える。



「諸君、私が織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが私の仕事だ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ないものには出来るまで指導してやる。私の仕事は弱冠十五歳を十六歳までに鍛え抜くことだ。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな」



私はこの後の事予想をしていたので予めティッシュを耳に詰めて耳を塞ぎ、そして手で耳を押さえつける
すると次の瞬間




「「「キャア――――――――――――――――本物の千冬様。本物の千冬様よ!!」」」



「ずっとファンでした!!!」




耳を2重の意味で塞いでいたので音は軽量されたが、それでも声は大音量で聞こえた
私は溜息を吐くと、千冬さんもそれにつられて溜息を吐く



「まったく毎年毎年私のクラスにはバカしか集まらんのか。それともあれか? 意図的に集められてるとでも?」



額に手を当てて首を振っている。
たぶん後者が当たりだろう



「まぁいい。諸君にはISの基礎知識を半月で覚えてもらう。また実習にて基本動作を半月で体に染み込ませろ。いいな。よければ返事しろ。よくなくても返事しろ。私の言うことには返事しろ。わかったか!」



「「「「「イエス・マム!!」」」」」



まるで軍隊の様に周りの女子は敬礼する
冬人はそれを苦笑いしていた



「で、では、自己紹介の続きです。それで「すいません、遅れてきました」あ、蒼月君ですね。話しは聞いてますので、席の方へ向かってください」




山田先生が話そうとした瞬間、突然誰かが教室に入って来た
少し長い黒い髪に、まるで綺麗な水を表すかのようなサファイアブルーの瞳をした男
そして顔は、まるで、私が知っている、最愛の人の、輪郭と、面影を残していたので・・・・・・私は口を開いた



「「一夏・・・・・・・」」



目の前に居た千冬さんも同じ事を呟いた
そして蒼月が私の隣来て、挨拶をする



「蒼月 刹那だ。色々と迷惑をかけるかもしれないけど、1年間よろしく」



一瞬教室がシンとしたが・・・・直ぐに歓声で覆われるのだった



『きゃあーーーーー!!カッコいい!!!』



『織斑君に続いて、2人目のイケメン、キタ―――!!』



『御母さん、お父さん!!私を産んでくれてありがとう!!』



私は耳を塞ぐ事を忘れていたが、別に今はそんな事を気にする暇はなかった
数年前に居なくなった、思い人である一夏が目の前に居る
雰囲気や目の色、姿が少し変わったといえど、それでも一夏であると私には分かる
目の前に居る人物は、紛れもなく私の最愛の人である、織斑 一夏なのだ
私がボウッと見ていたのか、それに気が付いた一夏が私を見てにっこりと笑う



「今日から宜しく頼むよ、えっと、あ、篠ノ之さんって言うんだね。これからもよろしく、篠ノ之さん」



その瞬間、私の中で何かが壊れた
今、なんと言った?
篠ノ之、さん?
は、ははは・・・・どうしてなんだ、一夏?
それではまるで、忘れているみたいではないか・・・・・



『何か用か、箒?』



『俺にかまわないでくれ、箒』



『俺を見ても、何も得られないぞ、箒』



小さい頃、一夏と一緒に居た時の記憶では、私を名前で呼んでくれていた
でも目の前の一夏はなんだ?名前ではなく・・・・・名字なのだ
私の頬に、涙が流れ落ちた
悲しかった・・・・・・・そして悔しかった
私を忘れてしまうほど、お前は自分を追いつめていたのか?
それとも、私の事が嫌いで、忘れてしまったのか?
そんな不安な感情が込み上がって来て、私は更に涙腺が壊れそうになった
だが・・・・・・



「どうしたんだ?何か悲しい事でもあったか?」



そう言って私の涙を指で拭った
近くまで顔を近づけていた
近い。そして恥ずかしい。でも・・・・・悪い気はしなかった









数年ぶりの最愛の人との出会いに、私は彼の気遣いがとても心地いいと感じるのであった






-7-
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