小説『ハイスクールD×B〜サイヤと悪魔の体現者〜』
作者:生まれ変わった人()

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世界は絶えず動き続ける。

それは時間と共に動き続ける。

そして、物語さえも……






「ねぇ……私の声が聞こえる?」
「……」

今、目の前にいるのは少女だ。

彼女は猫の耳を生やしたまま生気のない瞳を虚空に向けたまま反応しない。

当然か……今まで罵られ、蔑まれ、処分されかけていたのだから、保護したのも絶妙のタイミングだった。

だが、その代わり彼女は感情を失くしてしまった。

彼女の姉が力に溺れ、主の悪魔を殺してしまったことをきっかけに……

そして、私は彼女が手にしている写真立てが目に付いた。

「これは?」
「はい、その子を保護した際にずっとその写真を片時も離さずに握りしめております……それがどうなされました? リアスお嬢様」
「いえ……ありがとう」

使用人から話を聞いた後、私は彼女の元へと歩み寄って同じ目線にまで近付いた。

「ね、その写真に写ってるのはだれ? かっこいい子ね」

それは故意的に破ったと思われる写真だった。

彼女は私の言葉に初めて反応すると、虚ろに、しかししっかりと答えた。

「この……子……友達……まだ……帰ってこない……」
「……そう」
「でも……いつか必ず帰るって……帰って約束……守って……」

そうか……この写真の子を想っているからこそ今まで耐えてきたのね……

そう思っていると、その部屋にもう一人入って来た。

「リアス。お茶を持って来たわ」
「あ、ええ、ありがとう。朱乃」

私の眷族の一人、姫島朱乃だった。

朱乃は使用人に一礼しながら紅茶を私に運んできてくれた。

「ありがとう」
「いえ、それよりリアス……この子が……」
「ええ……」

朱乃もこの子の痛々しい姿に悲しさを帯びる。

しかし、朱乃はその子の写真を見つけた時、目を見開いていた。

「!! この写真!!」
「朱乃? どうしたの?」

珍しく驚愕していたが、私が呼びかけると朱乃はすぐに落ち着いたように振る舞った。

「……いえ、ごめんなさい」
「え、えぇ……」

あれほどまでに動揺した朱乃は見たことは無かった。

そのことについてはまた後で聞くとして、今は目の前の子の心を開かせよう。

そう思ったのだった。

そして、可能であれば転生させて悪魔にしよう。そうすれば周りも物騒なことは行ってこれないし、守ってあげられる。

猫&#39752;の眷族は初めてだけれど……




















「さて、久しぶりに北欧外での会合じゃ……楽しみじゃわい」
「オーディンさま。くれぐれも遊びすぎないようお願いします」
「第一声にそれかいのう……心配せずともお供は選ばせてもらうぞい」
「くれぐれもそうしてください……それでですね……」

やれやれ、どうしてヴァルキリーというのはここまで五月蠅い生き物なんじゃ?

まあよいわ。カタログの中からとびっきりの別嬪さんを選ばせてもらうからのう……

え〜っと……今回の新卒は粒ぞろい……ん?

「のう、この銀髪のヴァルキリーなんじゃが……」
「? あぁロスヴァイセですね。彼女はすごいですよ。この中でも一番伸びている新人です。今では若手ヴァルキリーナンバー1ですが」

ほう……今年でこのヴァルキリーも働くのか……これは面白そうじゃのう……

「そうじゃな、じゃあロスヴァイセを指名させてもらうわい」
「承知しました。ですが、決してちょっかいを出してはなりませんよ?」
「分かっておるわい! この者に手を出そうものならワシは殺されてしまうわい」
「またまた……誰が貴方さまを殺すどころか傷を付けられますか?」
「そうさのう……」

いるんじゃよ……人の身でありながら神以上の潜在能力を宿す者が……

「こ奴の勇者に……かのう……」

はてさて……あの小童はなにをしてるのやら……











「お姉さま……またですか?」
「あ、ソーナちゃん! おっひさ〜!」
「はい。ですが仕事から帰って来て早々にコスプレですか……それは少し……」
「えー、だってこれが私だもん☆」
「はぁ……」
「あ、今度の企画書もちょっと見て見て〜! 今回のはインパクトをおっきくしたんだけどー……」

そう言ってまた私に企画書を見せてくる……内容は魔法少女のアニメですね……

「いやー、最近はアイディアが溢れて溢れて冴えまくりだよ☆」
「はぁ……とは言っても私じゃ評価しかねますので……」
「そういうのは考えちゃ駄目! 感じるの!! ソーたんの中に眠るシックスセンスを解放するの!!!」
「その呼びなは止めてください!! まったく……」

とりあえず読んでみよう。

なんだかんだ言ってもこの話は中々よくできていると思う。

ただ、気になる所があるとしたら……

「あの、お姉さま……前々から言おうと思ったのですが……」
「え!? どこかおかしかった!?」
「いえ、そう言う訳ではないのですが……」
「だけど?」
「……この助手がグロテスク過ぎる気が……」

そう、なぜだかこの作品はバランスがある意味とれている。

流れとしては魔法少女が人間の男の子に恋し、その男の子は実は人間界の武道を極めに極めた達人、二つ名が史上最強の生物だということ。

その男の子を助手にして、魔法少女と二人は互いに戦いながらも惹かれあうというラブコメ展開も入っている。

「いいでしょー☆ いずれ現実になるストーリーなんだから!」
「はぁ……例のお姉さまを助けてくれたという少年ですか……」
「あー、また会いたいなぁ……そうしたら天界に侵攻して私のステッキとカーくんの拳がきらめいて天使や堕天使を抹殺なんだから☆」
「ご自重ください。魔王さまにきらめかれたら小国が数分で滅ぶというのに、そんな少年も一緒になったら……て聞いていますか?」

もはや妹の小言も耳に入らなくなりながら、物思いにふけっていた。

「それにしても……日本のどこに住んでいるのか聞いておけばよかった……」

今更ながら自分の失態を頬に手を突きながらぼやいたのだった。















「おぉ、また今日も圧勝じゃのう……」
「ふん、あれしきの相手をオレに当てるとは……何かの冗談かと思ったぞ?」

そう言いながら老人を睨むと、老人は冷や汗を流しながら慌てて取り繕う。

「そ、そうかのう……あれでも元軍人上がりじゃったんじゃが……」
「快楽に任せて同僚を、上司を撃ち殺した死刑囚を金で拾って戦わせたんだったな……よく大統領が許したものだ」
「お主を少しでも大人しくさせるための安定剤じゃ。大統領も納得してくれたわい」
「ま、新技のいい練習台になってくれたな」

そう言いながら思い出し笑いをする目の前の少年に老人も乾いた笑みを浮かべる。

「まさか、三年前に東京ドームの地下格闘技場に八歳の少年が殴りこんで格闘のプロを単身で完膚無きまでに殴り飛ばした後の言葉に皆が度肝を抜かされたわい……」
「オレをチャンピオンにして強敵と戦わせろ……だったっけか?」
「でも、あの子供が今や不動のチャンピオン……巷では都市伝説になりつつあるそうじゃのう」

そう言いながら老人は笑いながらお猪口に日本酒を注ぎ、カリフは自分でコップにジュースを注ぐ。

二人同時にそれらを一気に飲み干すと、二人の会話は続いた。

「この前なんて首相官邸に脅迫電話かけて単身で殴りこんだり、アメリカではホワイトハウスの警備を全員殴り飛ばして大統領と戦ったり、その他にも中国主席やローマ法王にも……」
「印象的だったのがアメリカ大統領だな……なんだか副大統領にクーデター起こされていたんだが、変な機械に乗って各地の基地を破壊し尽くしながら『何故なら私は、アメリカ合衆国大統領だからだ!』とかよく叫んでたのは傑作だった。面白かったから一緒に戦ってたらいつの間にか副大統領と大統領は宇宙でドンパチしてたな……」
「色々とツッコミ所があるが、その後の大統領とは親身にさせてもらってるらしいのう。顔パスで国に入っているとか……」
「どこもそうだけど?」

とんでもないことをさも当たり前のように喋る少年にもはや溜息しか出ない。

それでも、目の前で欠伸しながら目をこする少年の姿にやっぱり子供だと老人も複雑な気分になる。

「それじゃあ、今日の清算を済まそうかの」
「オレは食える金さえあればそれでいい。後はオレのオヤジの所に振りこんでおいて」
「欲がないのう……まあ、お主がお洒落などとは想像できんな」
「無駄口はいい。それでどんくらいだ?」
「ふむ……今日はまずまずじゃったな……今日は……」

老人はいやらしい笑いを浮かべた。

「三億ってところじゃな」
















「……母さん」
「どうしたの?」
「また“例の”通帳の残高が……」

鬼畜家では数年前から不思議な現象が起きていた。

それは通帳の残高が際限なく増え続けるという怪現象だった。

しかも、その額は普通のサラリーマンでは一生働いても稼げないような金が通帳に入り込んでくる。

通帳の預金制限がオーバーする度に通帳を変えていく。

銀行員も有り得ない通帳の量に目を丸くしてびっくりしていた。

そこで、家に急にブラックカードやらプラチナカード、更には聞いたこともない、しかし、際限なく預金を預けられる豪華な通帳が“タダ”でプレゼントされた。

最初は興味本位で通帳の中身を見てみたら……あまりの内容に父の意識がぶっ飛んでいたのを覚えている。

「また増えてたの?」
「うん……普通にこの家に核シェルターを付けても一生遊んで行けそう……」
「あらあら、それじゃあ仕事を休んで世界一周の旅にいきましょうか?」
「いや、なんか怖い……」

それもそうだ、急に一般家庭に高額なキャッシュカード、さらにはその気になれば十個の小島を買えるくらいな莫大な利益がポンポンと生みだされていく。

そんなことがあれば誰だって怖がるに決まっている。

「そんなことよりあなた、この前植えた庭の野菜が芽生えたわよ?」
「そうだな……ひとまず正体が分かるまでは使わなければいいだけだね!」

母親の肝の太さに脱帽しながら父親は庭に植えた野菜の元へと向かって行った。

莫大な財産を記録した通帳は再び押し入れに封印される。




周りの環境も移り変わっていく。

時は進み、舞台は序章へと進む。





カリフは高校一年生と同じ年齢にまで育ち……

とある事件がきっかけで紡がれた絆は再び集う……

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