小説『ハイスクールD×B〜サイヤと悪魔の体現者〜』
作者:生まれ変わった人()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

旧魔王派の結界に閉じこめられてしまったセラフォルーとカリフ。

旧魔王派と名乗る一派は人間のカリフと共にセラフォルーを閉じこめて二人まとめて始末しようとした……はずだったが……

「いっけー☆ カチコチコッチン!」

セラフォルーの氷魔法は数多くいる旧魔王派たちを凍らせていく。

「ぐああぁぁ!」
「くっ! なんて魔力だ!!」
「流石に現魔王を名乗るだけはある……ということか……」
「だが、あの人間のガキさえ手に入れればこちらの物だ! 奴はたかだか人間のために攻撃を止める堕落した魔王だからな!」
「それにしても奴等遅いぞ! セラフォルーとガキを引き離してやって後は捕まえるだけだというのに……!」

目の前の最大の障害にして強敵であるセラフォルー・レヴィアタン

殺すべき相手を前に旧魔王派は苦戦を強いられていた。

「くそっ! これが我等を力でねじ伏せた実力だというのか!?」
「あっちは何をしている!? たかが人間のガキを捕まえるだけだろう!!」

焦燥から困惑する者も増えてきた。

そんな中で、セラフォルーは珍しく怒っていた。

「あの子に手を出すと許さないんだからーーーーー!!」

その瞬間、結界内が白銀の世界と化して……

敵を


飲み込んだ













その傍らではカリフの捕獲を命じられた悪魔たちは困惑していた。

「おい! 奴はどこ行った!!」
「だめだ! 全然見つからねえ!!」

さっき、セラフォルーと分離させるところまでは成功させていた。

そして、魔王であるセラフォルーでさえ感知させることのない認識阻害の魔法を会得した悪魔と実戦派悪魔で以てカリフの相手をしていた……はずだった。

なのに、カリフは忽然と姿を消した。

何の前触れも無く。

「いたか!?」
「だめだ!! くそっ! 小細工を!!」

一人が地団太を踏みながら全力で悔しがっていたときだった。

「ぐえ!」
『『『!?』』』

一人の断末魔が響いた。

声の元を辿って見てみると、そこには同じく捕獲を担当していた悪魔が白目を向いて倒れていた。

「な、なにが……!」

脅えた声を上げた時、さらなる事態が襲ってきた。

「ぎえ!」
「ひぎゃ!」

次々と仲間が何の前触れも無く、奇声を上げて倒れていく。

倒れ行く者を見て他の悪魔も恐怖を表情に現す。

「な……なんだよこれ! 相手は人間じゃねーのか!?」

ヒステリック気味に見えない敵から身を守る様にうずくまると、途端に声が響いた。

「くくく……怖いのか? 悪魔のくせに」
「!! 貴様っ! いつの間に……!」

突如としてカメレオンのように現れたカリフに悪魔たちが身構える。

だが、その姿からはさっきまでの勢いは感じられず、虚栄しか見えない。

「郷に入らば郷に従え……オレの国にはそんな諺があった……だからオレは貴様等のようにアサシン戦法で迎えてやったのだ。まさかここまで効果がテキメンとは期待はずれもいいところだ」
「な!?」
「このガキぃ! たかだか人間の分際で!!」

案の定、カリフの挑発で悪魔は怒りに体を震わせる。

カリフはさっきまで、普通に歩いて相手の背後に回り込んで攻撃を加えていた。

それも、普通に堂々と歩き回って

なぜそんなことができたのか?

それは、悟空もベジータも知らない気の新たな使い方である。

(この世界にも植物、小動物などの気が空気中に微量に漂っている……空気と同じ様に気がうっすらと流れるのなら、オレもその気に同調させればいけるんじゃないかと考え……至った結果がこれだ)

要は周りと一体化して姿を消すのではなく、“世界と一体化”することができる。

それこそがカリフが見つけた新たな気の可能性である。

それにより、カリフは誰にも感知されることなく辺りを動き回ることができるという訳だ。

「安心しろ。もうこれは使わない……オレはオレの持ち味で貴様等を屠るとしよう」
「この……!」

大きく腕を開いて迎え入れる様なポーズをとるカリフに悪魔は怒りに拳を震わせる。

だが、それは表面上だけのことだった。

(馬鹿め! そうやって余裕こいてるといい!)

既に暗殺部隊がカリフの背後をとっているころだった。

さっきからやられているのは実戦派の悪魔だけ

認識阻害をかけている悪魔は全員あらかじめから姿を眩ませている。

先程はマグレだったが、今度は複数で襲いかかる。

(我々の手に余ったのは予想外だったが、気配さえもしない相手に打つ手などなかろう!)

勝った!!

周りの悪魔はカリフに近づけないという芝居をしながらも、その瞬間を心待ちにする。

一秒 また一秒

後方の暗殺者も手に魔力を溜めてカリフに振りかぶる。

これで、全てが終わる。

後はこれをダシにセラフォルーを無力化できる













「……とでも思っているのかぁ?」
「は!?」

カリフは振り返ると同時に握られた拳から繰り出される一撃必殺級のフックを姿の見えない相手にぶち込む。

ぶち込まれた悪魔は血ヘドを吐きながらあばらを折られ、結界へと叩きつけられる。

その光景を目の当たりにした他の悪魔たちは驚愕に目を剥いた。

「ふん、手応えは……脇腹ってとこかな?」
「貴様っ! なぜ……!?」
「なぜ? 簡単さ。周りの空気の乱れ具合で何かがいるかくらいは認識できる」
「馬鹿な! 人間にそんな芸当が……!」
「不服か? なら納得しろよ……こんな風になぁ!!」

そこへ、カリフはそこから何も見えない空間に向かって鋭い蹴りを放つ。

「ぐあ!」

すると、腹を蹴られた悪魔が急に現れて同じく血ヘドを吐いて吹き飛ばされた。

いくらカリフでも空気の乱れを感じるだけで正確な位置を把握するのは非常に難しい。

だからこそ、カリフは難しく考えるのは止めて勘を頼りに攻撃を加えた。

勘は生きる上での最も基本的なことであり、戦いにおいてこれほど重要な事柄はない。

カリフはこれまでのサバイバルで勘を養いに養い続け、遂には未来予知レベルにまで達していた。

「勘だと……後7,8人ってとこかな?」
「!!」

カリフが戦いの終わりを感じるのも当然だった。

目の前の人間に自分たちの策を全て看破されてしまった。

もはや、武力的に勝ち目が消えた。

「お、お前は一体……」

一人が異様な物を見る様な目でカリフを見つめると、当の本人は笑って答えた。

「人間だよ」
「!?」

ここまで言われ、本当に全員がカリフに攻めあぐねていた時だった。

「こらー! カーくんをいじめるなー!」
『『『!!』』』
「ちょ、おま」

既に敵を全滅させていたセラフォルーが怒り心頭で氷結魔法を放ってきた。

カリフは慌てずにそれを舞空術で避けると、敵は何も抵抗できぬまま氷漬けにされて砕け散ってしまう。

それと同時に敵の張っていた結界も崩壊した。

半ばマンネリ化してきたこの戦いに嫌気がさしてきたとはいえ、横槍を入れてくるのはよろしくない。

「カーくん! 大丈夫ー!?」

だから、カリフは瞬時に涙目で駆け寄ってくるセラフォルーの抱擁をすんでのところで瞬間移動で避ける。

「あ、あれ?」

すかしたセラフォルーは前のめりによろけ……

「……え?」

こめかみに当たる拳に気付いた。

そして、その拳がこまえかみにめり込んでいく。

「いやああーーー! 痛いーー!!」
「人の戦いに横槍とか普段からマジ何考えて生きてやがんだオイ」
「いやーーーーーーー!! 穴空く! 頭がパーンってなるよー!」

そう言いながらカリフはセラフォルーを解放してやる。

だが、彼にはまだ言うことがあった。

「ったく……お前よぉ、なんでオレの元から離れた?」
「う〜……なんのこと〜?」
「惚けるな。お前、追い詰められたフリしてオレとは別の方向に逃げていったろ……なぜあんな真似をしたかと聞いているんだ……」

カリフは怒気を込めてセラフォルーに言うと、彼女もその迫力に気圧されるが、すぐにシュンとなって悲しそうに答える。

「だって……カーくんをこんなことに巻き込んじゃって……何も関係ないのに……」

小さく呟いた一言

それは彼女なりの優しさがあったかもしれない。

どんなにカリフが強くても所詮は人間の子供、ましてや今日知り合ったばかりである。

本当ならカリフだけでも逃がそうとしていたことはこの際黙っておこう。

そんな彼女の心遣いにカリフは表情を引き締めながら言う。

「てめぇ……ここまでやっといて関係がないだと? オレとの約束を忘れたわけではあるまいな?」
「でも……」
「あのまま不覚をとってお前が死のうが元々関係無かったんだ……だが、守ると約束した以上、お前の身に何かあったとすればオレは……」
「?」
「オレは……どうにかなってしまいそうだ」
「!!」

この言葉にセラフォルーは顔を赤くさせて狼狽する。

「え、えっと……それって……」
「言葉の通りだ……お前を守ると言ったのだ。自分で自分の約束を違うことなど言語道断!! 何が何でもお前に傷一つ付けさせる気はなかった! たとえお前が強かろうとな!!」

カリフはセラフォルーに背を向けてそっぽを向く。

「オレが言いたいのはこれだけだ……お前は奔放なくせに面倒事は抱え込む節が見られる……自分に正直になれ」
「う……うん……」

もはや魔法少女のノリなど忘れてセラフォルーも手をモジモジさせている。

顔も若干赤くなってきたが、それでもセラフォルーは言いたいことがあった。

「……カーくん」
「あ?」
「……ありがとう」
「知らんな」

予想通り感謝の言葉を突っぱねてこっちを向こうともしない。

だが、それでいい。

彼は見返りも何も求めず、ただ自分のすべきことをしたと思っているのだから礼など不要

今日会ったばかり、だが、恩一つだけでここまで尽くしてくれたのだから、カリフは一向に気にしていない。

「……ねぇ、あの……」

セラフォルーが何か言おうとした時だった。

「レヴィアタンさまー!! いずこへー!」
「早く御戻りくださーい!!」
「仕事がーー!」

遠くから悪魔の羽を生やした軍団がこっちへと向かって来ていた。

その姿にセラフォルーは火照った顔も一瞬で真顔になるくらい驚いた。

「もうバレちゃってたんだ……」
「ほう、丁度いいな……これでお前の護衛も終えることができる」
「え!? どういうこと!?」

そう言うと、カリフはベンチに置いてあった荷物を肩にかける。

「そろそろ時間だ。オレはすぐに日本に戻ってやらねばならないことがある」

どこか楽しそうに言うカリフにセラフォルーも何も言えなくなってしまった。

「……もう言っちゃうんだ……」
「あぁ、オレには目標がある。それに果たさねばならない約束もあるが、それは後回しでもなんとかなる」
「……」

セラフォルーは少し悲しそうにもするが、すぐにいつもの調子に戻る。

「……じゃあ仕方ないね☆ 助手の気持ちを尊重するのも魔法少女の運命! 涙を飲んでお別れね☆」
「……」
「あ、あはは……」

少し無理があったかと横チェキのまま苦笑していると、カリフはフっと笑う。

「やっといつもの調子になったな」
「え?」
「お前の話し方は正直ふざけている……だが、それでいてイキイキとして活力にあふれているな。そう言う自分に忠実な奴は嫌いじゃない」

そこまで言われると、セラフォルーも少し呆けてから嬉しそうに返す。

「うんうん! だって魔王だから!」
「そうか……じゃあオレは行くぜ」
「あ! ちょっと待って!」
「?」

カリフはそのままセラフォルーからある程度離れて行くと、背後からセラフォルーに呼び止められる。

すると、セラフォルーは横チェキした。

「また日本に遊びに行くから、その時もご馳走するから……また守ってね?」

その答えにカリフは不敵に笑う。

「ふ……考えておく」

そうとだけ言うと、カリフの姿が一瞬で消えた。

別れはあっという間に、まるで急ぐかのようにアッサリと終わってしまったが、セラフォルーは満足だった。

形容し難い感情を胸に抱いてカリフがいた場所を見つめていた。

そんな時、セラフォルーの部下たちが到着した。

「やっと見つけましたぞ! セラフォルーさま」
「さ、早く仕事にお戻りください」

部下もできるだけ優しく仕事へ戻るように促す。

「うん! じゃあ戻ってパパっと終わらせちゃおう!」

そう言って部下に囲まれながらも仕事に戻る。

その光景はいつものことであり、護衛の悪魔もこのやり取りに苦笑していた。

だが、この時だけはいつもと違った。

「ねえねえ! 私って可愛い!?」
「え? いや……あの……」

この後……

「どうなの!?」
「はい……男から見て魅力的だと思います……」
「本当?」
「はい」
「……うん! それなら良かった☆」
「あの……何かありましたか?」
「え? うん……えっとねー……」

セラフォルーの口から……














「結婚したい人ができちゃった☆」

特大級の核爆弾宣言がなされた。




『『『……へ?』』』

その宣言に護衛の悪魔の足が止まった。

「さーって、帰ったら仕事と一緒に探してほしい子がいるから忙しくなるよー☆ それと、アニメの企画書もつくらなきゃいけないから……これは本当に忙しくなるぞー☆」

護衛悪魔を置いてけぼりにしてセラフォルーがどんどんと進んでいくと、他悪魔も意識を取り戻す。

「え!? セラフォルーさま!! お相手は一体……!」
「このサボリ中になにがあったのですか!?」
「相手は誰なのですか!?」

護衛からの集中砲火も耳には入ってこず、セラフォルーは満面の笑みでその場から飛び立っていった。

今宵は良い夜となる気がした。


















カリフは様々な想いを胸に抱いていた。

旅立った日のこと、各地で様々な戦争に乱入して暴れたこと、海賊船を単体で潰しまくったこと、様々な達人から技も盗んだ。

だが、まだまだ機は熟していない。

まだまだ足りない

「今は東京ドームの地下で天下を取る……その後は日本を拠点に各地で試したいことを実戦していくとするか……技と精神は時間をかける必要があるからな……」

カリフの先にあるのは水平線まで続く大海原

その先の“夢”に向かって高くジャンプした。

「待ってろよ悟空!! ベジータ!! No,1はお前等じゃない!! このオレだーー!!」

それと共にカリフは海の中へと飛びこんだ。







本人の意に介さない運命の糸と絆の繋がり

今はまだ何も無いかもしれない。

だが、運命の歯車は確実に……着実に刻まれている……

舞台は日本へと……戻る……

物語は再会と共に幕を開ける……

-24-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える