小説『ハイスクールD×B〜サイヤと悪魔の体現者〜』
作者:生まれ変わった人()

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 地球へ帰還したカリフは困惑した。

 目の前には一人、髪を逆立てた少年が睨んでいる。

 そして、そんな少年は自分の父親であるベジータに酷似していた。

 そして、ここはカプセルコーポレーションで間違いない。

「なんだお前は? 人の家にズカズカと……」

 少年が構えを取っているが、カリフにとってそんなことはどうでもよかった。

(こいつ……ベジータの気とは違う……)

 なのに、目の前の状況はどういうことだろうか……

(隠し子か?)

 一瞬そう思ったが、そんなことをブルマが許すわけもないからその可能性は捨てた。

「くたばれ!!」

 今まで無視していたガキがオレに拳を上げてくる。

 しかし、今はそれどころではないからガキの拳をスレスレで首だけ動かして避ける。

「なに!?」
「この程度で驚くんじゃねえ……」
「!?」
「素人が…」

 驚愕するガキの首に気を当てて気絶程度で済ませた。

 ガキが崩れるのを確認してからとりあえずコーポレーションに入ろうとするが……

「誰だ!?」

 なんか警備員っぽい奴に見つかった。

「……別で探るか」

 ここではまともに話せそうもないし、こうまで喧嘩をふっかけられると殺したくなりそうだからという理由ですぐさま上空に飛んで場所を移した。

「速く!! 不審人物が……!」
「……どこだよ?」
「あそこに……ってあれ? どこに……!?」

 数分経って警備員が集まったのだが、そこには人影一つなかった。

「ぼっちゃん!!」

 気絶していたコーポレーションの御曹司だけを残してカリフは街へと降り立ったのだった。
























 カリフの不安が次第に大きくなっていく。最初は杞憂だと思っていたにも関わらずに不安が現実になったのだと思わざる得ない証言が次々と出てきたのだから。

 西、東、南、北の都は未だにカプセルコーポレーションのおかげで快適になってきているということ。今では『五代目』社長が切り盛りしているおかげらしい。

 皆が口を揃え、新聞までもが口を揃える。

 『今はエイジ974』だと……

「なんだ……これは……」

 冗談にしては笑えなくなってきた状況にカリフは困惑を隠せない。

(なにが一体……そうだ!!)

 カリフはもう一つ、思い出した場所がある。

 悟空の家。

 あの未開の地ならなにか情報が隠されているのではないかと思い至り、急いでパオズ山へと武空術で飛んでいった。

 程なくしてパオズ山の上空に辿り着いたカリフは更なる異変に気付いた。

(気が……悟空たちの気が感じられない……)

 それどころか小さい生き物の気しか感じられない……それが意味するのは一つ。

 人っ子一人もいない。

「くそっ!」

 不可解な出来事の連続に苛立ちながらも悟空の家へと向かった。

 そして見つけた。

 壁が崩れ、今にも崩れそうに苔も生え、生い茂った雑草に埋もれていた状態で佇んでいた。

 明らかに長年ほったらかしにされた状態にも関わらず、カリフは古びた小屋の中に入る。

 舞い上がる埃を腕の一振りで生み出した風で吹き飛ばす。

 そして、家のなかのボロボロになった棚や机の中をしらみつぶしに調べ、一枚の写真を見つけた。

 あまりに埃被ってボロボロな写真を丁寧に磨いて確認する。








 そして、カリフの『なにか』が砕けた……

 不安が確信に、予想が残酷な現実となってカリフに突き刺さった。

 写真に写るベジータと悟空で確信してしまった。

 今はエイジ974……

 あれから紛れもなく……200年が経った。

 そんな事実を確証させる証拠は不十分だったが、直感で感じた。

 ここは……地球……



 しかし、ここは自分が住んでいた地球ではない……

 なにもかもが変わってしまった地球

 自分が知っている物など何もない。自分だけが取り残された世界

 自分を知る人物はもういない……

「痛っ!!」

 突如として起きる頭痛と不快感に外へ出る。

 新鮮な空気を吸い、小屋を見ると過去の面影が思い出される。

 はしゃぎ回る悪ガキたちとそれを宥める兄、楽しそうに喋り合う母親たち、飯にかぶりつく父親たち

「が……ぁ……」

 ―――痛みが取れない……

 だが、200年も経てば人の命など消滅する……

「が……はぁ……」

 ―――胸が焼ける……

 つまり、全員がこの世にはもういない

「あ”……あぁ……」

 ―――ドス黒い感情が湧きあがる……







 カリフの気が感情と共に昂る。

「あ”あ”あ”あ”……」

 それには絶望、悲しみ、後悔などの負の感情が溢れてくる。

 だが、彼の感情を圧倒的に支配する感情があった。

 “怒り”

「あ”あ”あ”あ”あ”あ”……!」

 もはや理性が保てなくなってきた彼は一つの記憶が呼び起こされる。

『じゃあな!! 修業頑張れよ!!』
『また悟天とあそんでやってけろ!』
『帰ったら試合してあげるから帰って来い』
『次に会ったらカリ兄ちゃんより強くなってやるんだ!!』

 それは昔、去り際に交わした約束。

『だったらオレ悟天よりも強くなって先に倒してやる!!』
『元気でやんなさいよ』
『次に会ったらミッチリと鍛えてやる。ありがたく思え』

 そして、今は無き過ぎ去りし約束が頭の中で反芻していた。

「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”……!!!!」

 約束と恩だけは果たすことを信条にしたカリフにとって許し難い行為。

 約束を守れなかった自分の弱さに対する怒りがこみ上げる。

「があ”あ”あ”あ”あ”……!!!」

 人とは思えない絶叫と共に気が高まり、無意識的に髪が金に変わり、金色の戦士・スーパーサイヤ人へと変わる。

 それと共に活気あるある街が、山が、海が、地球が揺れた。

「………!!!!!」

 怒りも絶叫も気も高まり、スーパーサイヤ人2へと変わり……

「■■■■■■■……!!!!!!」

 ついには天をも突く咆哮が放たれ





 カリフの発する金色の光が



 世界へ









 覆い被さった。











「……」




 怒りに燃え、後に胸に空虚感が支配したカリフは俯いたまま動かない。

 彼は強い金のオーラを覆い、眉毛も消え、金髪も足元に届くくらいに異常に長くなっていた。

 彼は境地に達し、限界をまた一つ越えた。

 選ばれし金色の戦士だけが達しえる究極の境地。

 スーパーサイヤ人3

 彼が望んでいた強さが手に入った。








 彼の大事な者を犠牲にして、手に入れた力がそこにあった……

「……」

 生気の消えた金色の戦士は力の余波で起きた風に長髪をなびかせて











 その場に力無く、涙も出さずにうなだれるだけだった……




 もはや彼の心の内を知ることは神でさえもできえないことだ。

-5-
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