小説『ハイスクールD×B〜サイヤと悪魔の体現者〜』
作者:生まれ変わった人()

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「来るな化け物!!」

 とある星、無法者が根城にする惑星があった。

 そこには強姦、殺人などの犯罪歴を持つ犯罪者が徒等を組んでいた。

 好きな時に好きな物を略奪することがこの星の日課となっていた。

 だが今は、そんな星に混沌が訪れていた。

 様々な種族の異星人がある一点に銃を乱射していた。

「死ねぇぇぇぇぇぇ化け物ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 星の住人達の周りは凄惨たる光景が広がっていた。

 体を縦に引き裂かれている者、腸をぶちまけて事切れている者、上半身を引きちぎられて下半身を血に塗らす死体、首を抉られて倒れる者様々だった。

 爆煙と血の匂いが充満する建物での攻防線は苛烈を機分けていたかのように思われていた……が

「是非も無し」
「え?」

 そんな無機質な声が聞こえた直前、その場で銃を乱射していた住人のほとんどが腹から内臓を、頭から脳しょうをまき散らして破裂した。

「ぎゃあああああぁぁぁぁ!!」
「いてえ……いてえよぉ……」

 死に至らなかった者も手足が急に『弾き飛ばされた』

「ふははは……少し押しただけで壊れたな」

 そんな地獄の中で一人だけ楽しそうな声を上げる。

 その正体こそが、犯罪惑星の住人を皆殺しにし、今さっきも高速で九十人近くを絶命させた人物。

「心配するな。一瞬で楽にしてやる」

 犯罪者を追い詰めた少年・サイヤ人のカリフは爆煙の中から堂々と現れた。

 手に持っていた“誰かの”腕にかぶりつきながら……

「美味」

愉しそうに笑っていた。

「ひぃ!!」

 仲間と思われる腕を美味しそうに食べる少年に犯罪者は命乞いを始めた。

「待ってください!! 金は上げますから命だけは……!」

 住人は銃を捨ててカリフに命乞いをする。地面に手を置いて涙を零す。

 それを見下ろしていたカリフはというと……

「ほぅ……貴様はそんな命乞いに耳を貸したことがあるのか?」

 カリフは腹の虫を鳴らしながら呟いた。

「永久に眠れ」
「へ?」

 その瞬間、カリフは住人の頭を噛み砕いた。



























 時を遡り、カリフが旅立ってから二年が経った。

 彼は惑星という惑星を渡り、修業を続けていた。

 目的は一つ、自由に生き、強くなるためだった。

 無人の惑星で修業し、星ぐるみで徒党を組む犯罪者を相手に切磋琢磨を続けてきた。

 生意気な者は片っ端から殺し、塵に変えてきた。

 だが、それでも弱き者と罪なき者には極力手を出してこなかった。

 そして、彼は未だにスーパーサイヤ人2で止まっていた。

 つまりは伸び悩んでいたと言う訳だ。

「はっ! はっ! ふっ!」

 宇宙船に設置されている重力制御装置を稼働させてシャドーボクシングを行っている。

 設定は50G

 仮想の相手は今までに戦ってきた自分の父。

「ちぇらあぁぁ!!」

 渾身の拳を振るうが片手で受け止められ、カウンターの拳が返ってくる。

「ちっ!……くそがぁ!!」

 舌打ちしながらカウンターを肘でガードし、ラッシュを連打する。

「だだだだだだだだだだだだだ……!!」

 それでも紙一重でかわされ続ける。

 だが、それでもカリフのラッシュの嵐は止むことはなく執拗に攻め続ける。

(反射能力、基礎体力全てがまだ奴に及ばない……なら!)

 カリフは一つに狙いを定めていた。

 防御が疎かになっている右わき腹。もちろんカリフ自身も気付いている。

(もっと……もっと自然にさり気なく……)

 戦いに長けている者であれば人体急所と隙に本能的に気付く。実力があればあるほどその傾向も顕著に表れる。

 相手がこの隙に気付かないわけがない。

(さあ、ここだ!! 来い!!)

 僅かに見える台風の目。だが、至って自然に、まるで攻めに夢中で疎かになっているように見せて……

 しばらくラッシュの嵐を相手に叩きつけるが、全て紙一重に避けられる。

 そんな膠着状態が続いていた時だった。

(来た!!)

 遂に自分の僅かな隙を狙ってフックを放ってきた。

 それに合わせ、狙っていたかのように華麗な捌きでラッシュを止めてカウンターに入る。

 常人なら筋肉が引きちぎれるほどの激しい攻防を僅か九歳の少年が仮想相手に繰り広げ、高い戦術を以て修業する光景はあまりに異質。

 そんな修業も遂に佳境に入った。

 カリフのカウンターが相手の顔面に吸い寄せられていく。

「くたばれええええええええええぇぇぇぇ!!」

 思いの丈を叫び、彼はその拳を振り切った。

 同時に飛び散る汗がキラキラと光る。

 やった

 カリフは密かにそう思っていたが、爽快な気分が一瞬で崩されることになった。

「なに!?」

 仮想相手はカウンターを顔面スレスレで空いていた片手で難なく受け止めていた。

――――呆ける時間があるのか?―――
「なんだ…!!」

 一瞬だけ聞き慣れていた上から発言が聞こえたと思った瞬間、今度は相手から拳の嵐が叩きつけられた。

「ちっ!!」

 咄嗟にガードするが、ここで自分と相手の圧倒的な差に気付かされた。

「疾っ!!」

 相手の拳が残像として残るほど速い。

 自分が一を繰り出せば相手は十の反撃に出るといった感じだ。

 しかも重さも相手が何枚も上手。

 圧倒的、万事休す。

 そう呼ぶに相応しい状況にカリフはというと……

「ふはははははははははは……!! そうだ!! それでこそオレが認めた男!! オレの父親であるが所以だっ!!」

 敗色濃い戦いに酔いしれ、歓喜した。

 己の目指す道はまだまだ遥か彼方に位置する。

 だからこそ、自分はまだまだ強くならなければならない。

 まだまだ強くなれる!!

 頭で新たな目標ができたことでガードがほんの少し緩み……

「しまっ!!」

 相手の拳がガードをこじ開け





 顔面に





 打ちこまれた。
















「前回より30秒……更新……」

 シャドーを終えたカリフは重力制御を普通に戻し、うつ伏せになって休んでいる。

 流れ出る汗は止まることを知らず、小さな水溜りを作る。

 その他に残るのは荒々しい呼吸音と少しの爽快感だけだった。

「今日はここまで……明日は……」

 足が言うことを効かないので寝返りまで壁まで転がると壁に貼り付けられた紙を朗読する。

「明日で地球だから……地球に着くまでに軽いシャドーを50本を5セットでいいか……」

 カリフが地球を出てから丁度二年目の日、彼は地球に帰る。

 理由は、そろそろ本物のベジータ、悟空、悟飯との組手で自分の実力を知るため。言いたくは無いが、この三人からなにかを得ることができればまた一つ強くなれると考えての帰還。

 もう一つの理由は口うるさい母親からの電話。

「めんどくさい」

 一度だけそう言って電話切ると、後からひっきりなしに電話のベルを鳴らし続けられた。

「帰ると言うまで止めないわよ!!」

 そう言われ、ウンザリしながらも帰ると約束し、イタ電を止めさせた。

 不本意とはいえ、約束したのだから帰らねばならなくなってしまったが、後でブルマから今の状況を聞いてみると面白いことが分かった。

 それは、悟空のスーパーサイヤ人3化、アルティメット悟飯、フュージョンなる技を行使した弟たち、魔神ブゥなる新たな強者、そして、レパートリーの増えた飯の数々。

「二年離れただけで、面白いことになっているじゃあないか」

 それが事実ならば帰ってくるのも一興。

 そう思い、地球への帰還を楽しみにしながらオレは今日の反省を纏める。

「やっぱオレとしたことが、隙を見せて後手に回ったのが原因か……」

 さっきまでのシャドーを思い出して反省をまとめていた。





 夢と希望に満ちた地球への帰路。

 少年は眠りにつこうと寝る準備をしていた。

 そして、忘れていたのだ……

 無限の宇宙には無限の数の予想外な出来事が起きるのだと……








 カリフが寝静まった直後、軌道から外れて猛スピードで向かってきた小惑星に掠った宇宙船がバランスを失い、ある惑星へと墜落していった。

 その惑星の名はニーヴィー

 星全体が氷で覆われた絶対零度の星である。





























































































































































「ヘックション!!」

 カリフは突然に感じた寒気に目を覚ました。

 鼻水をすすり、汗で冷えていた体に更なる冷気が叩きつけられる。

「さむ……」

 外を見ようとするが、外は吹雪で白しか見えない。

 なんでこんなところにいるのか分からないカリフは早めに離れようと宇宙船の電源を入れる。

 電源が付いて明るくなった部屋の中でコクピットをいじくる。

「よし、異常はないな」

 そう言って宇宙船の無傷な状態に安堵しながら自動操縦に切り替え、ポイントを地球に合わせる。

「寝不足か……」

 設定を終えたカリフは無理矢理起こされ、解消しきっていない眠気に負けて再びベッドに戻る。

 ベッドに入ってすぐに眠ると、宇宙船は浮かび、大気圏を抜けて惑星ニーヴィーから地球へと向かった。

 だが、カリフは知らなかった。


 ついさっきまでこの吹雪の止まない惑星では急激な火山活動が起きて、地表が少し暖まって辺りの氷が溶けていたことに……



 そして、カリフは気付かなかった。





 時間を記すコクピットの電子時計の年号に……

 彼が最近見た年号はエイジ774年




 もちろん今の電子時計も変わらずに時を刻んでいた。

















 エイジ974年と表示させて……






 彼を乗せた宇宙船は地球へと向かうのであった……

-4-
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