小説『ハイスクールD×B〜サイヤと悪魔の体現者〜』
作者:生まれ変わった人()

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前書き:突然ですが、妹の設定が難儀してきたので方針としては“妹なんていなかった!”ということで小鳩ちゃんにはご退場していただきます。その代わりこの作品は未だに完結してないだけあってだれかオリキャラ出して尺を稼がないといけないので設定に無理が無い程度のキャラをださせていただきます。

ご了承ください。




























学園での戦いが終わり、カリフは教会側の二人と一緒に去って行った。

そのことに帰りながら朱乃と小猫は通学路の最中に心配していた。

「カリフくん……どうするんでしょうか……」
「……」
「教会へ行ってしまうのでしょうか……」

いつもは素っ気ない小猫もこの時ばかりは不安を隠せずに弱音を吐いていた。

久しぶりに返ってきた幼馴染がまたいなくなる怖さはもう経験した。

「それはあの子が決めることですわ……私たちはいつも置いてかれてばかり……」
「朱乃さん……」
「ごめんなさい……ちょっと疲れただけですわ」
「……」
「心配しなくてもカリフくんは教会には行きませんわ。あの子が節制だとかお祈りだとかするような子かしら?」

その言葉に小猫も笑顔を浮かべる。

「そう……ですね。好き勝手してこそのカリフくんですから」
「うふふ」

二人で話しながらも鬼畜家のドアを開ける。

「ただいま帰りました」
「おじゃましますわ」

帰った挨拶を交わすも返事が返ってこない。

そのことに朱乃は疑問に思う。

「あらあら、どこかにお出かけでしょうか?」

頬に手を当てて困ったように言うと、小猫が代わりに答えた。

「遠くで声も聞こえます。別の声もあるので多分お客かもしれません」
「では、気付いてないだけですのね?」

そのまま明りの点いているリビングの部屋へと入ったのだった。



「これが日本の『すきやき』というものなのか……肉が甘いのに美味い……」
「あぁ主よ。この懐深き家族を貴方様の懐へお導きください……アーメン」
「へぇ、きみたちはキリスト教なのかい? 宗教のことは良く分からないけど」
「大体はそんな感じです」
「ゼノヴィアちゃんは日本の食べ物は初めてかしら?」
「あぁ、あっちではあまり進んで食べようとは思わなくて。まさかジャパンの食文化がここまでの進化を遂げていたなんて……」
「甘いわね。こっちの『寿司』も中々の物よ? あれこそまさに故郷の味だわ」
「おら野菜も食え。ていうかオレが買ってきた肉ですから」

さっきまで敵対していた信徒二人が幼馴染とその家族と一緒に鍋を突いていたのにはマジメに驚いたものだ。

「あら? 二人共おかえりなさい」
「「はい……」」

数少ない安らぎの空間がまたカオスに塗り替えられてしまった。






そんなこともあり、リビングのテーブルにはゼノヴィアとイリナに対して朱乃と小猫が向かい合っている。

食事も終わったまではよかったのだが、ゼノヴィアたちも小猫たちが住んでいることは知らされていなかった。

互いに立場もあり、緊迫した空気が流れている。

そんな中、ゼノヴィアが第一に開口した。

「まさか悪魔さえもここに住まわせているとは……あの子も人が悪い」
「あらあら、そんなに嫌なら出ていけばいいのですわ……あなたたちが」
「いえ、ここの人たちには恩があるの。だからここの人たちの安全を守らせてもらうわ。悪魔からも堕天使からも」
「……」

互いに笑顔ながらも水面下で果てしない何かの攻防戦が続く中、カリフが話題に入ってきた。

「早速でこの調子か。幸先がいいな」
「カリフ、悪魔と同じ屋根の下で住むなんて聞いてないんだが?」
「聞かれなかったからな」
「……」

シレっと答えながらカリフはゼノヴィアに指をさす。

「そもそも『寝床が欲しい』って言ったから住まわすんだ。文句あるなら路上なり土手なり洞窟なりに行くがいい」
「そ、それは……困るわね」

イリナが仕方ないと言った感じで諦めていると、カリフは釘を刺すように教会組だけに囁いた。

「もし、この家で面倒を起こしたらお前等を消す」

突然の警告に二人は緊張を隠せない。

「この家の中ではオレたちがお前たちの言う『法』だ。オレの強さはある程度把握できるお利口さんならそんな真似はしないと思うがな……」
「き……肝に銘じておくよ」
「それでいい……一般家庭から身元不明のミンチ死体が二つ出た、なんて面白くないか?」

明らかな脅迫に二人は冷や汗をダラダラ流して首を横に振る。

近付いている顔がまたさらに恐怖を際立たせている。

カリフは確認した後、二人から顔を離した後、洗面用具を手に持って鼻唄を歌う。

「どこに行くの?」
「近くに銭湯があるらしいじゃないか? 妹が行きたがっているから便乗した」

仕方ないから付いて行くと言った口調だが、声自体は中々楽しそうだった。

「あらあら、お気を付けて」

朱乃に手を上げて返しながらリビングを出ていく。

彼が完全に出て行ったのを朱乃と小猫が見送ってお茶をすする。

そんな平然とした二人を信徒二人はある意味尊敬までした。

「まだまだ修行が足りないな……」
「そう……かもね」
「あらあら、うふふ……」

辟易とする二人に朱乃は微笑みながらそう零したのだった。




信徒二人組を泊めてから一夜が明けた。

カリフはいつも通りの番長スタイルである一室の前に立ち、思いっきりドアを開けた。

そこには『生徒会室』と立派に装飾された立て札が取り付けてあった。

ドアを開けた先には生徒会メンバー全員の視線が集まった。

「あら、あなたからここに来るのは珍しいですね」

現、生徒会長のソーナがそう言うと、カリフはソーナの前にまでやって来て単刀直入に言った。

「早速だが、匙を貸しちゃくんねえか? ちょっと手伝って欲しいことがある」

その言葉にソーナを含めた生徒会メンバーと本人である匙が反応した。

「お前が俺に? 本当に珍しいな」
「手伝い……と言っても補佐というか修業の一環って感じだな。それで?」

ソーナに聞くと、彼女は溜息を吐いた。

「正直、今の生徒会は匙に抜けられるだけでも滞ってしまいます。それに、我が会員を無闇に危険な目には会わせたくありませんので」
「か、会長……感激っす……」

ソーナの一言に匙は男泣きを見せていたが、カリフはそれでも笑みは絶やさずに続ける。

「安心しろ。命の危険はない上に匙にとってはでかい経験にもなる」
「内容は?」
「今後の状況次第。場合によっては匙は役目ごめんにもなる」
「……」

ソーナはしばらく考えたが、すぐに答えを出す。

「分かりました。匙の身の安全を確保してくれているなら構いません。今の匙にとって経験は大切な時ですから」
「わりいね」
「あなたは『やる』と言ったら必ず成し遂げる実績と不死鳥を一蹴する実力があります。それくらいの信用が無ければ任せませんよ」
「後は本人のやる気次第だけど……」

そう言いながら匙を見ると、本人は得意気に笑っていた。

「行くに決まってるだろ? ここで後輩の頼みを断るほど俺は薄情じゃないからな」

自信満々に言う匙にカリフは一呼吸入れた。

「なら、すぐに行くぞ。内容は大まかな内容はこの後伝える」
「おう! では会長、行ってきます!」
「ええ、しっかりと励むんですよ?」
「はい!」

匙はそのまま生徒会全員に挨拶を交わして生徒会室を後にして一足先に出て行ったカリフの後を追いかける。





「て言うかなんで俺を指名したんだよ?」

付いて行く内にだんだんと気になったから聞いてみた。

今は私服に着替えてミーティング場所とやらに向かっている最中である。

その問いに対してカリフは真顔で言った。

「そうだな、お前もまたドラゴンに魅せられた一人……とでも言えばいいか?」
「まあな!」

胸を張ってふんぞり返る匙に続けて言った。

「ドラゴンは力の象徴であり、無限の可能性を秘める生物だ。だからお前を鍛え、その強さを見てみたいのだ」
「ふーん」

そこは素っ気なく匙が相づちを打つ中、カリフが聞く。

「同類としてイッセーはどう思う? 前に顔合わせしたって聞いたがな」

聞いた瞬間、匙は不機嫌になって吐露した。

「あんなのと一緒にすんな! エロ三人組の一人と同類だなんてこっちから願い下げだ!」
「だが、実力はそこらの中堅よりは上だ」
「は!? あんなのが!?」

匙ですらそこは初耳だった。

聞いたのは転生の際に八個の駒を使ったことと、ライザーを倒したってところだけだったのだが。

学校ではエロとバカの代名詞となっている奴が自分よりも強いだなんて到底信じ難いことだった。

「奴はお前と違って場数が桁違いだからな、そうなるのは当然だ」
「だ、だけど……!」
「お前じゃあ勝てんよ」
「!?」

核心を付くように告げる言葉は匙の声さえも奪った。

それはカリフの強さを垣間見て、目の前の人物の言うことが信用で来てしまうことも関係している。

「……そりゃあ少しは気付いていたさ。俺も神器を持っているけど、あっちはロンギヌスのブーステッド・ギアだから……」

悔しさからつい愚痴を零してしまった。

カリフはそんな匙を笑って見やる。

「ま、そのための今回の依頼だ。同じドラゴンならお前もイッセー同様に伸びしろはある」
「随分とあいつと俺を買ってるんだな」
「まあ、興味本位だ」

街中を歩いていると人ごみが多くなってきた。

「この件なら相当な刺激と濃い経験ができるぞ」
「おぉ! 早速男の見せどころってか!?」
「あぁ、普通の悪魔じゃちょい難しいな」
「構わねえぜ! それくらいしねえと生徒会員としても男としても悪魔としてもハクが付くってもんだ!」

胸を叩いて宣言する匙にカリフは無言で紙を渡す。

四重に折られた紙を訝しげに見る匙。

「これは?」
「今回の内容だ。口頭はめんどくさいから紙に書いた」
「へ〜……」

折られた紙を開くとそこには簡単に書かれていた。












『堕天使コカビエル&エクスカリバーを破壊する』

ダッ! ←匙は逃げだした

ガシッ ←カリフは匙の首筋を片手で掴む

「離してくれ! こんなことに俺を巻き込まないでくれ!」
「美味しい話じゃないか。普通じゃ絶対にできない経験だぞ?」
「そりゃ普通じゃないよね!? だって下級悪魔のやることじゃないもん! ていうか堕天使幹部と戦うとかエクスカリバーとか戦争させる気か!?」

その言葉を無視して匙を引きずる。

「まあ、これが終わればお前は一皮剥けるぞ」
「一皮どころか全身の皮を剥がされて殺されるうぅぅぅぅ!」

匙の悲鳴にも耳を貸さずにカリフは待ち合わせ場所のファミレスの中へと入って行った。






そこで待っていたのはゼノヴィアとイリナ、そしてイッセーと小猫に木場だった。

「あれ? 匙?」
「ひょ、兵藤? なんで……」
「いや、こっちの台詞だっての。お前、別件があるって俺の誘い断ってたじゃん」
「お、おい……まさふげぇ!」

聞きたくなかった事実に匙はカリフを見るが、カリフに空いている席に投げ込まれる。

カリフは小猫の隣に座る。

「意外と多く集まったな。まあ、こんなもんだろ」
「まあ、お前が俺たちの誘いに乗ってくれるってのも珍しいけどな」
「待て兵藤……お前の頼みってまさか……」

イッセーと話す内容に匙は痛みを我慢して聞いてみる。

「俺たちはエクスカリバーを破壊するために教会側と手を組むことにしたんだ」

また別の所でとんでもないことが起こっていたのと、自分はとんでもないことに首を突っ込んでしまったことに深く頭をうなだれた。

そこで、小猫が問いかける。

「匙先輩、他にカリフくんに何かするか聞きました?」
「え、えぇと……エクスカリバーとコカビエルを敵に回すなんて……」

小猫は頭を抱えながらも淡々と答える。

「匙先輩……一ついいですか?」
「な、なんだい? 塔上小猫ちゃん……」
「私たちはエクスカリバーを見つけて祐斗先輩に壊してもらうだけなんです……コカビエルとは絶対に組しないことにはしているんです」
「だって、聞く限り相当やばいんだろ? 死ぬと分かってて行くほど俺たちも酔狂じゃないよ」

小猫とイッセーの言葉でだんだんと二人の言いたいことを理解してしまった。

要は『鬼と血の契約を交わしてしまった』と言いたいらしい。

匙は涙を流してイッセーに縋りついた。

「助けろください! コカビエルとなんて冗談じゃねえよ!」
「心配するな三分くらい奴と組手するだけだ。逃げるだけでもいい。放棄したら後ろから聖水付きのナイフでザックリといかせてもらう」
「いやだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

イッセーも匙のことが気の毒になってきたのか、今度から気を付けるように助言してやろうと思った。

「もちろん、イッセーもだ。お前は五分いけるだろうな」
「ははは……もうやだこの人……」

このとばっちりも何とかしてほしいと願うだけだ。

そんな中、ゼノヴィアはカリフに言った。

「話を聞く限り、君はコカビエルと一戦交えようとしているようだが、悪いことは言わない。止めておけ」
「何故?」
「何故って……聖書にも記される大昔の大戦を生き抜いた堕天使なのよ? いくらあなたでも……」

イリナの忠告にもカリフはどこ吹く風と言った感じだった。

「オレの辞書に敗北はない。あるのは『勝って支配する』生き方だけだ」
「だからと言って……」
「実際はコカビエルが出てくることはそうないだろう。そこはまた後にして、今回は互いの情報提供のために集まったからな。そっちを進めよう」

カリフに構っていると、色々と脱線しそうなのでそこらで終わらせる。

そして、ここからはカリフは注文した料理に舌鼓を打つだけで会話はしなかった。

まず、ゼノヴィアたちは元神父であり現堕天使勢のバルパー・ガリレイという『皆殺しの大司教』の二つ名の人物のことを教えた。

バルパー・ガリレイ、かつて、木場の人生を狂わせた『聖剣計画』の責任者であり、処分を下した張本人であることを明かす。

そして、木場からはこの街でフリード・セルゼンというはぐれ神父が聖剣で神父たちを殺しまわっている旨を伝えた。

情報は多くないが、有益な情報に双方共に進展があったことから彼等は悪魔と教会側としてではなく、ドラゴンと人間と教会側として手を貸すらしい。

そこまで話がまとまった時、食べ終わったカリフが言う。

「とりあえずはその白髪神父を見つけるまでは各々自由に行動でいいな?」
「あぁ、そうなるな。それが?」

そこまで聞くと、カリフは口周りを拭きながらゼノヴィアたちに指を刺した。

「俺は独自ルートで情報を集めてコカビエルを炙り出す。後はいつも通りだ」
「大丈夫なのか?」
「あぁ、既に白髪が一定周期で公園近く、南の住宅街外れ辺りに目撃されていることも分かっている」
「え? 今話したことをなんで?」

イリナが聞くと、携帯を見せる。

全員がそこを覗き込むと、そこに送信済みのメール内容が書かれてあった。

『長髪白髪のバカそうな奴見た奴は連絡。入れなければ消す』

これだけで一分足らずで既に十件くらいは届いていた。

「こ、これは……」
「街の奴隷にん……もとい、チンピラとかにも知り合いはいるから要請しておいたぞ?」
「今、なにか物騒なワードを……」

カリフはその場から立って悠々と店を出ていく。

「まあ、匙は極力オレと行動するように」
「あ、やっぱり……」

後ろからの落胆の声にも耳をかすことは無かった。

ここから、カリフは再び別行動をとるようになる。




ファミレスで別れて以来からカリフは一点の場所へと向かって行った。

そこは郊外に構えられている変哲もない縦長の建物

だが、看板には『花山組』と簡素に書かれているだけ。

カリフはズンズンと臆することも無くある一室を蹴り破った。

部屋の中にいたのは強面でポン刀を手入れしている男だけだった。

「なんだ兄ちゃん? 来るとこ間違えたんか?」
「いや、ここで合っているんだがね……なんだお前等新人か?」
「お?」

カリフの言葉に二人はポン刀を携えながら表情を歪ませた。

「耳にクソが溜まってるってんならここで見逃してやるがよぉ……あまり“暴力団”ナメんじゃねえぞ」
「クソはお前等だ。てめえ等はさっさと花山出せばいいんだよ。下っ端風情が調子に乗るな」
「このガキぃ!」

一人がメリケンサックを付けて殴りかかってもカリフは動揺すらせずに不敵に笑うだけ。

拳がカリフに当たる直前、一人の人物が奥の部屋から出てきた。

「何してんだテメェ等はよぉ〜〜〜!」
「え?」

その男は殴る素振りで止まった男の前にズカズカと詰め寄ってくると、ツバを飛ばしながら怒鳴る。

「歯ぁ食いしばれぇっ!」
「おごっ!」
「ぶっ!」

その瞬間、男は二人の部下に力強くビンタを喰らわせて張り倒した。

二人はカリフの前で倒れると、再び男のヤジを受ける。

「テメェ等組長の顔潰す気かコラッ! その方は組長と盃を交わし合った旧知の……!」
「いや、いい。お前の説教を聞かされると日が暮れる」

カリフ二人を叱責する男を手で制すと、男はカリフに頭を下げる。

「申し訳ございやせん! なにぶんこいつ等は入ったばかりでして教育が行き届いてねえんです! ですからこの責任は……!」
「だからいい。それより花山は?」
「こちらです!」

その男の言われるがままにカリフは奥の部屋へと進んで行く途中に振り返った。

「出世したじゃないか? いい銀バッチだ」
「ありがとうございます!」

綺麗にお辞儀してカリフを見届けると、起き上がる部下は血を拭きながら男に聞く。

「あの……さっきのお方……は一体……」
「組長のご友人か何かなんですか?」

男はお辞儀を解いて真摯に部下に言い聞かせる。

「……それはまた後で教えてやる。だが気を付けろよ? あの人は組長と盃を交わしたが、誰に対しても容赦はしねえ……俺がああでもしねえと今頃お前等は良くて骨折、最悪、二度と歩けねえ体になってたろうよ」
「そ、それほどすか?」

生唾を飲んで緊張する二人の前で冷や汗が吹き出す。

「あの人は組長でさえも喧嘩で負かす実力の上に世界中のネットワークも半端じゃねえ……鶴の一声でマフィアがゾロゾロ集まるって話だ」

嘘のような途方も無い話を幹部が臆しながら話す姿に戦慄し、部下二人はカリフの入って行った部屋を見つめていた。






外で密かに説教されている中、奥の部屋でカリフはソファーに座って男と対面していた。

体長はパっと見て二メートルは越えていそうな巨漢、体中の生傷、そして胸の金バッジ

もうカタギの人間じゃないことは一目瞭然であった。

「それじゃあ、ウチは白髪のイカれたような男を探せばいいのか?」
「ああ、お前のシマでやらかしてるからな。だからこうして来たんだよ。花山」

花山と呼ばれた男はカリフと相対する。

「確かに最近ではそう言った目撃例も報告されているが、何一つ見つかってないってのも事実だ……心当たりが?」
「まあね。聞くか?」
「止めておく。余計なことで組の奴等を危険には晒したくない」
「そうかい。護る物があるってのも難儀だね。お、サンキュ」

花山に無言で酒をグラスの四分の一にまで注がされ、カリフはそれを受け取って飲み干そうとするもすぐにむせてしまう。

「ゲホ、ゴホ!」
「まだアルコールは慣れてないのか? 唯一の弱点の克服にはまだ時間がかかりそうだな」
「やかましい。その内にお前と飲み比べてやるわ」
「そうならないように願うぞ。これだけがお前に勝てる唯一のことだからな」
「フン!」

密かに笑いながら言う花山に不機嫌そうに鼻を鳴らしてグラスを置き、カリフは部屋を出ていこうとする。

「もう行くのか?」
「ああ、その白髪を探さなくてはならないんでな」
「そうか、まあお前には『気を付けろ』なんて余計なことだから言わん」
「お前のそう言う所好きだよオレは」

二人で軽口叩き合いながら話す。

「じゃあ何か妙なことがあったら連絡する。母親大切にしてやれよ」
「恩にきる。後、最後のは余計だ」

そう言いながら部屋を出て事務所を出る。

背後から聞こえる幹部の挨拶も無言で手だけで応じ、建物を後にする。

その途中でカリフはすっかり日が暮れたのを確認した。

「……今日は帰るか」

そうしてカリフはまた騒がしい家へと戻って行く。



ゼノヴィアたちとイッセーたちが疑似同盟を結んだ数日にカリフは再び生徒会室の前にまでやって来た。

理由としては後ろ向きで後進的な匙を連れ出すことと、今のオカ研のムードなど胸糞が悪くなる事であった。

小猫と朱乃は教会関係者と一緒に寝食を共にしているためか緊張と警戒で碌に眠れもせずにストレスが溜まっている。

リアスたちもそんな二人にはほとほと参っているようだ。

そんなこと知ったことではないのだが、関わると碌なことにもならないから最近は生徒会室によく顔を出している。

そしていつものように入るのだが、そこには珍しく匙がいない。

「あれ?」
「こんにちは、早速で悪いのですが匙は兵藤くんたちと用事らしいです」
「用事?」

テーブルに座りながらのソーナの説明にカリフは首を傾げる。

(どんな風の吹きまわしだ?)
「どうしましたか? 不思議な顔をして」
「いや、あいつにしては行動が早いなと……」

不思議がっていると、ソーナはまた不思議そうに聞いてきた。

「何があったのですか? 匙は兵藤くんとは相性が悪いと思ってたのにさっきときたらまるで旧知の仲のようでしたが……仲良くしてくれるに越したことはないのですがどうも……」
「男が女を理解できないように男にも女には到底理解できないことがある、ということだ」
「そういうものですか?」
「そういうものだ」

納得してなさそうなソーナを余所にカリフも思う所があった。

「まあいいか。そんじゃあ時間とらせたな」
「はい」

カリフは悠々と生徒会室から出て行った。

何もすることないから何で暇を潰そうか悩んでいた所だった。

〜〜♪

携帯の着信が鳴ったのを感じてポケットから取り出して開く。

しばらく眺めているとカリフはほくそ笑んだ。

「ほう……やっと尻尾を出したか……」

まるで玩具を見つけた子供のような無邪気な笑顔を浮かべ、その場から瞬間移動で消えた。

カリフがいた廊下には窓から入る冷たい風が吹き渡っていたのだった。



時同じくして街中の人気のない場所

そこでは既に戦闘が行われていた。

「フリード!」
「あらら〜? イッセーくんではあ〜りませんか〜? へぇぇぇぇこの件にも関わってるんですか〜? あの時よりもドラゴンパゥワ〜も高まってるか〜い?」
「気色わりい奴だな!」

聖剣で木場と鍔迫り合いしているフリードにブーステッド・ギアを装備して相対する。

小猫も匙も囮として来ていた修道服を脱ぎ捨てていた。

「伸びろ! ライン!」

匙の手の甲にはトカゲの頭のような物が装着されており、その口から黒く長い舌を伸ばしているようだった。

ラインがフリードの足に絡みつくと、フリードも不快な表情を浮かべる。

「しゃあんなろー!」

エクスカリバーで切ろうとしてもまるで実体が無いかのようにすり抜ける。

「これでお前は逃げられねえ! 木場! 後はお前の番だ!」

この勝負、目的は木場によるエクスカリバーの破壊となっている。

彼が憎しみのあまり『はぐれ』にならないようにイッセーたちが考案したことである。

もちろん、イッセーも譲渡しか使わないサポートとしてその場にいる。

「ありがたい!」

木場は匙に感謝しながらフリードに斬りかかる。

だが、ここでフリードはさらに笑みを浮かべる。

「ところがどっこい。そんな剣じゃこのエクスカリバーは……」

フリードの斬撃が木場の魔剣を砕いた。

「!!」
「無駄なんすよ」

その場でよろける木場にフリードは次なる斬撃を加えようとしていた。

「死・ね」

イッセーたちはなんとかしようと体を動かしたときだった。




「お前か? この辺を荒らしてるって奴は」
『!!』

全員に聞きおぼえがあり、心の底から響くような声にイッセーたちはおろかフリードでさえも固まった。

全員が向くと、塀の上に座っているカリフの姿があった。

「よう」
「カリフ!」

軽く会釈していると、フリードは狂ったような笑みをカリフに向ける。

「あららのら〜。またもや数奇な運命でござんすな〜。誰かと思えば憎たらしいぼっちゃんでしたか〜?」

軽口を叩くが、フリードの目には明らかな殺意が放たれていた。

その殺意に気付くと、カリフは立ってお辞儀する。

「いや“初めまして”。早速だけど一回ボコるから」

その言葉に匙以外の全員が違和感を覚える。

「初めまして? バカじゃねえの? 俺っちのことお忘れでぃすか〜?」
「……お前誰だ?」
「は?」

ここでフリードも違和感を覚えた。

明らかに態度も違いすぎる。

本当に忘れているかのような……

「……冗談だよな? このフリード・セルゼンをお忘れだと?」
「フリード……イッセーも言ってたが……まさかお前……か?」

どう見ても反応がおかしすぎる。

首を傾げてらしくもなく唸っている。

「……初めて会った場所は?」
「え、え〜……と……」

最後の質問にさえも言い淀んだカリフを見てフリードは確信した。

「……マジで忘れちった? 俺と君の熱い物語を……」

この直後にカリフはさも当然のように答えた。

「今まで食べてきたパンを覚えるとでも?」

もう確実だった。

カリフは完全にフリードのことを


あれだけボコボコにしたり、トラックで潰したことも全部



忘れていた。

そのことに気付いたフリードは手で顔を覆う。

「は……はっははははははははははははは……ざけんなテメエぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

笑ったかと思えば突然に止めてカリフへと勢い良く飛び出して行った。

もうそこには下品なジョークを言う余裕が無いほどにフリードは怒っていた。

斬りかかろうとするも、カリフはその場から一瞬で消え、代わりに塀を叩き斬ることになった。

一瞬で背後を取ると、フリードがさらに怒り狂っていた。

「このクソガキがああぁぁぁぁぁぁ! あれだけやってくれて俺を忘れたと言いてえのかああぁぁぁぁ!?」
「弱い奴を覚えて何の得が?」
「ぶっ殺す!!」

カリフはひたすらフリードの攻撃を紙一重で避けるだけ。

「逃げんなコラァァァァァァァァァァァ!」

避けるだけ

「いい加減死にやがれやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

避けて避けて避けて避けまくるだけ。

イッセーたちから見たらカリフもフリードも目に映らないスピードで攻防を繰り広げているとしか思えなかった。

唖然としていると、大振りを外してこけたフリードと余裕でコサックダンスを披露しているカリフだけが残った。

フリードは起き上がり、顔面に血管を浮き立たせて怒りを体現していた。

「っんで当たんねんだよぉぉぉぉぉ! 今の俺っちはエクスカリバー・ラピッドレイで最高速度に達してるってのによぉぉぉぉ!」
「お前が間抜けなだけでは?」
「うがああぁぁぁぁぁぁぁ!」

もはや人の言葉を怒りで忘れたフリードの嵐のような斬撃をカリフは余裕で避け続け、軽く足払いでコケさせる。

もはや圧倒的としか言いようが無かった。

「すげぇ……あいつってあんな強いのか……」

匙は初めて見るカリフの生の戦いに開いた口が塞がらなくなっていた。

ライザー戦を見てたけどここまで来ると予想以上だった。

イッセーも改めてカリフの底力に驚愕している所に第三の刺客の声が割り込んだ。

「フリード。何をしている」

声のした方向には神父姿の初老の男がいた。

「んだよバルパーのじいさんよぉぉぉぉ!」

その出された名にイッセーたちは驚愕と共に男を見る。

「バルパー……ガリレイっ!」
「いかにも」

木場の憎しみの視線に頷き、すぐにフリードの方へ視線を向ける。

「そろそろ報告の時間だと思って迎えに来てみれば……人間相手の子供相手に何を手間取っている」
「こいつただの人間じゃねえんだよぉ! ついでに言えば足になんか絡まって逃げらんねえし!」

フリードの半ば八つ当たりにバルパーは溜息を吐く。

「聖剣の使い方が不十分ではないか。お前に渡した『因子』を有効に使え。お前の体に流れる聖なる因子を聖剣の刀身に込めろ」
「へいへい」

エクスカリバーの刀身が光り出す。

「こうか、よっと!」

フリードがエクスカリバーで匙のラインを絶つと、すぐにフリードはバルパーの近くまで退く。

「待て!」

木場が叫ぶが、フリードは舌を出して小馬鹿にしたような態度を取る。

「君には興味なんかありましぇ〜ん! だから次回は大人しく殺されてくだちゃいね〜」
「それと君はカリフと言ったな……聖剣使い相手によく耐えたと褒めてあげよう」
「能書きはいいからさっさと親玉出しな。下っ端の言葉などオレの心には響かない」

指で挑発してくるカリフにバルパーは笑うだけだった。

「たしかに君は強い……だが、君の親御さんはどうだろうか?」
「……あ?」

表情を歪ませるとバルパーは意味ありげな笑みを浮かべただけだった。

「それではここは撤退といこう」
「仕方ねえ!」

そう言いながらフリードは懐から玉を取り出して地面に投げつけた瞬間、光が爆ぜた。

誰もがその光に視界を奪われ、光が治まった頃には既にフリードたちの姿は無かった。

木場は必死になってフリードたちの気配を追う。

「逃がすか! バルパー・ガリレイ!」
「あ、おい木場!」

イッセーの声にも耳を貸さずに木場は行ってしまう中、背後からイッセーたちを追い越す姿があった。

聖剣を携えたイリナだった。

「やっほ。イッセーくん」
「イリナ! なんで……!」
「悪いけど説明している暇はないの! 今、鬼畜さんの家が襲撃されて……!」
「!! それはどういうことですか!?」

小猫がイリナに詰め寄るも、イリナは必死に謝る。

「ごめん! 取り合えずあなたたちはすぐに帰って! ゼノヴィアが今抑えているから!」
「イリナはどうすんだよ!」
「このまま追跡を始めるわ!」
「おい! ちょっと……!」

イッセーの声も聞かずにイリナもその場から離れていく。

そこへカリフも振り返って自宅の方角を見据えて走ろうと構えると、服の裾を小猫に掴まれる。

「私も……!」
「……掴まってろ」

時間が惜しいのか小猫を振り落とさないように抱きかかえ、その場から瞬間移動で消える。

「ちょ! 小猫ちゃんたちまで!」
「おい兵藤! これってマズくないか!?」

もはやその場にはイッセーと匙しか残っていなかったが、そこへ更なる乱入者が現れた。

「力の流れが不規則になってると思ったら……」
「最近、急に仲良くなったと思ったら……」

その二つの声にイッセーと匙は体を震わせて振り返る。

そこには、決して逆らえないそれぞれの主人たちが仁王立ちで待ち構えていた。

「「これはどういうことかしら? イッセー|匙」」
「部長……」
「会長……」

重なる声に二人は抱き合って戦慄と恐怖を分かち合っていたのだった。

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