小説『ハイスクールD×B〜サイヤと悪魔の体現者〜』
作者:生まれ変わった人()

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いつものように時は移り行き……人は死ぬ。

それはどんな英雄にも、悪人にも、凡人にも等しく訪れる……

その時が……一人の男に訪れようとしていた。



























「悟空……」

消えゆく空間の中でカリフはその者の名を呼んだ。

もう光の彼方へ消えゆくその者は豪快に笑って見送る中、カリフは不敵に笑った。

「いつか……貴様もベジータも越える!!」

最後まで我を貫き通す様はまさに……

「首洗って待ってろおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!! 腐れ師匠ううううううぅぅぅぅぅぅぅ!! クソ親父いいいいいいいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

サイヤ人に他ならない……


























とある街、とある病院

病院は命の息吹が上がる謂わば命のゆりかご

一日に何人もの命が生まれてくる。

「ううぅぅぅぅぅぅ!! あああああああぁぁぁぁぁぁ!!」
「頑張れ母さん!! あともう少しで元気な子供が生まれてくるぞ!!」
「鬼畜さん!! もっと踏ん張って!!」
「うああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

手術室で今まさに母体から頭が出かかっている赤ん坊を見て興奮する父親らしき男

性は鬼畜というのだが、その男は鬼畜とは無縁、簡単に人の話を信じ、困っている者を放ってはおけない底なしのお人よし。まさに名前負けである。

その性格のせいで会社でも出世の機会を逃してしまう一般サラリーマンの温厚で子供好きな良き父親である。

「うあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

母親も性は鬼畜だが、その実、夫と同じくお人よしで温厚な母親である。常に夫を愛し続ける良き母親である。

「そう!! そうです!! このまま力んで!!」

医者もそんな夫婦に檄を送る。

夫婦にとっては一生に一回の一大事。

だが、病院にとってはいつもの風景である。

このようなことはここでは当たり前である。

生まれゆく命は皆平等なのだから……













この時まではそう思っていた。

今日…その日までは……












「鬼畜さん!! 赤ちゃんの頭が出ましたよ!! 後は私たちが!!」

女性の恥部から出た小さな頭……それを確認した医者はその幼子の頭を引き抜こうとした……その時だった。

―――触るなっっ!!

「!!」

突然、医者は頭を殴られたかのような衝撃と共に誰かに命令されたような感覚を味わった。

立ち止まって後ろにのけ反る医者に周りの看護婦も動揺する。

「どうしました!?」
「……聞こえた」
「え? なにがですか?」

ボソリと呟くように医者が言葉を捻り出すが、看護婦は首を傾げる。

その様子に医者は驚愕する。

「き、君たちは聞こえなかったのか……? 私に命令する声が……!?」
「い、一体なんのこと……」
「先生大変です!! 子供が!!」
「!?」

会話の最中に起きた異変と思える看護婦の声に医者は気を取り直して今にも生まれゆく子供に目を向ける。すると、そこには信じ難い光景があった。

「これは!?」
「す……すごい……」

なんと、子供が“自分の”手で母親の体から決別しようとしていた。

幼くも力強く、確固たる意志を感じさせる無骨な手の動きに医者たちは驚愕する。

今までの医療の場では有り得ない現象だった。

生まれたばかりの胎児が自分の意志で以て母体から離れる。

まるで、生まれた瞬間にできた義務を全うするかのように。

あまりの光景に動けなくなった医者たちの代わりに胎児は自分で母体から決別する。

そして、完全に全身が出てきた所で赤ん坊が見上げると不意に医者と目が合った。

その瞬間、医者の体で電気が走った。

(こ、この感覚っ! そうだ!! これださっき感じた波動は!!…いや、これは波動や覇気なんてチャチな物じゃない!! もっと恐ろしくも強大な何かの片鱗だ!!)

そして理解した、さっきの命令はこの子が本能で訴えたのだと……

「こんな……こんなことが有り得るかぁぁぁぁぁぁ!? 産婦人科を任されて三十年!! ありとあらゆる赤ん坊を手中に取り上げてきたこの私が……プロフェッショナルが天上より賜りし生を受けて数分も経っていない赤ん坊に命令されたとでもいうのかああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「せ、先生!! どうしたのですか!?」

突然、今までの常識を根底から覆す未知なる存在に医者は戦慄し、看護婦はそれを抑える。

その中でも長いキャリアを持つ看護婦でさえも戦慄していた。

「吐き気をもよおす“異常”とはっ! あらゆる分野を熟知した者の知識や経験を覆されることだ……!! 私たち出産のエキスパートが何も知らぬ“乳飲み子”からっ!! てめーの意志でっ!! ありえねえっ!! この赤ん坊は私たちの常識を初めて“覆した”っ!!」

もはやその手術室はてんてこ舞いもいい所、このままではキャラが危ない!!

そんなことなどお構い無く、まるでそこらに飛んでいるハエのように医者たちを無視する存在があった。

「アブゥ……」

それはこの騒動の中心となる赤ん坊……否っ!!

(悟空……なんだこれは……なんだこれはああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!)

それは別世界に送られたはずのカリフ……戦闘民族だった。

「あぶだぶだあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!(こんなことがあってたまるかあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!)」

悟空によってカリフは精子まで肉体を逆戻りさせられ、記憶を、DNAを、パワーを、肉体さえもそのまま受け継がされたスーパーベビーとなってこの世に甦った!!

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!!」

赤ん坊は力の限り命の炎を燃え上がらせる。

「ぐああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 赤ん坊が泣いた!! いや、吼えたああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「耳がああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「先生!! 窓ガラスが、医療機器が壊れていくうううううううぅぅぅぅぅぅぅ!!」

耳を抑えて耐える医者たちは後に語る。

『我々はこの日……進化を見たかもしれない……』

今日を以て、この日に一つの命が息吹を上げた。

この出生がこの世界を揺るがすことも知らずに……

「うふふ……元気な子ね……ねぇあなた?」
「……」
「あら? 泡吹いて倒れちゃった。喜びすぎで気が舞い上がっちゃったのかしら?」

このかつてない赤ん坊の親になるであろう母親はベッドの上で耳を閉じて微笑ましく赤ん坊を眺めている。

父親は傍で泡吹きながら耳から出血して倒れている。

「きしゃあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「先生!! 今まさに生まれようとしている赤ん坊が牙を向けて威嚇してい怖いです!! ていうかもう犬歯が!?」
「ちょ……ちょっと待て!! この子噛みついてギャアアアアア!!」

今ここに、サイヤの子供が生まれたっ!!

克目せよっ!! 彼の生きざまをっ!!

-8-
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