小説『ハルケギニアに蘇りし紅き狼』
作者:大喰らいの牙()

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第二十六話  加速する恋模様・・・?


〜真紅狼side〜
ラグラドリアン湖によるお茶会も終わり、俺達はいつもと変わらぬ日常を過ごしていたら、俺は一つ有る事を思い出し、建築をやってるゴウトに連絡した。
その後、ゴウトとその部下達は自分達の道具箱と資材を持ってきた。
俺は、それを輸送艦に運び込み、ゴウト達を乗せてトリステイン魔法学院に向かった。




移動中・・・




俺達は、魔法学院に近い所を着陸地点とし、輸送艦を地面に下ろす。
そして側面のハッチを開けて、中から資材を取り出しては一緒に乗せた荷車に乗せて行く。
そして、魔法学院に向かっている途中で学院の外から輸送艦の姿が見えたのか、ギーシュがこちらに走ってやってくる。


「陛下! 一体どうなされたんですか?!」
「いやなに、お前がほら! 『大浴場を創って欲しい』って言ってたのを思い出して、こうして資材を持ってやって来たんだよ」
「今から、施工するんですか!?」
「おう。ゴウト、デザインをシンプルなモノにして作ったら、どれぐらいで終わる?」
「そうですな。今回は彼の使い魔が手伝っていただけるなら………一日半で終わりますな」
「………だってよ。ギーシュ、お前だって朝練で汗かいた後、風呂に入れなくて気持ち悪いのをどうにかしたいだろ? それに、毎晩入ってるわけではないんだろ?」
「ええ、まぁ………」


ギーシュはバツが悪そうに頷く。


「それじゃあ、衛生的に良くないし、体の免疫も弱っちまう。だから、創ろうぜ!!」
「………そうですね! 創りましょう!!」


ギーシュはしばし悩んだ後、今の現状をどうにかしたい気持ちが勝ち、流されていった。
そしてギーシュは門の前で立っている守衛に話を付けて、俺達は中に入れてもらった。
入れてもらうとすぐさま良い立地を検討することにした。
俺達はあれこれと検討するつもりだったが、どうやらギーシュがすでに場所を決めており、水回りや風通しなどが完璧だった。
ただ、周辺の視線についてはちょっと甘かったがそこら辺は木々を植えたり、仕切りを立てることで話は決まった。


「よし、では、ギーシュ。お前の使い魔を呼んでくれ」
「はい、ゴウトさん。ヴェルダンデ、来てくれ!」


ギーシュが叫ぶと、目の前の地面からひょっこりと現れた。
ゴウトは、ギーシュに穴を掘って欲しい要カ所を説明すると、それを今度は分かりやすくギーシュがヴェルダンデに説明する。
ヴェルダンデは自分の主が言った事が理解出来たのか、地面に潜ると凄い勢いで穴を掘っていった。


「よくやった、ヴェルダンデ! ご褒美にミミズをたくさん食べてくるといいよ!!」


ヴェルダンデは、嬉しそうな動きを見せた後、再び穴を掘ってどこかに行ってしまった。


「さて………と、では、陛下。これから風呂とその周辺を創りますので……」
「ああ、俺は鉱石の加工だな」
「はい。お願いします」
「はいよ」


俺は鋼鉄の箱を乗せた荷車を引っ張って、少し離れた。
離れていく最中にはすでに、「カンッ! カンッ! カンッ!」と、木槌で材木を叩く音や「シュッ……シュッ……」とカンナで木を削ったりと音が鳴り始めていた。


「いやぁ、本当にやってくれるとは………、有難うございます」
「まぁ、俺達の国で過ごしちまった以上、“いつも”の日常がないとお前も辛かろう?」


そう言いつつ、火山に棲む海竜種、“炎丈竜”(アグナコトル)の厚皮を使った軍手をはめて、俺は鋼鉄の箱から強燃石炭を取り出して、金槌で叩く。


ガァン……!
ボォ………ボボッ……


亀裂が入った強燃石炭は、中から高温の炎が漏れる。
俺はそれを確認すると、空のもう一方の鋼鉄の箱に投げ入れる。
それを繰り返していくとギーシュが気になったのか、訊ねてくる。


「陛下は何をやってるんですか?」
「ああ、これ? この鉱石がなんだかは知ってるよな?」
「ええ、強燃石炭ですよね?」
「そうだ。コイツは燃石炭よりも火力が高いが、持続性がなくてな。瞬間的に使うモノには役に立つんだが、それ以外はどうもな。で、今やってるのは、その火力を保ちつつ、持続性を長く持たせる為に加工しているんだ」
「持続性を高めるんですか?」
「おう。これは最近、分かった事なんだがな………この強燃石炭に亀裂を入れると中に風が入り、外からも中からも冷えが始まる。するとだ、この強燃石炭は中に溜めている火力が燃え上がり、中から温めようと燃え上がるんだよ。その結果、冷えないように中で燃え上がり、保温効果を持続させて、かつ火力もそのままで維持する。………ということが分かったから、今はその加工をしている」
「へぇ、そんなことが分かったんですか………」
「この強燃石炭と紅蓮石、真紅蓮石が風呂の水を温める・保温の二つの役割を担っているんだ。ところでよ、ほら、カトレアの元妹だった………えーと………」


俺は名を思いだそうとするが、中々思い出せない。
すると、ギーシュが名を言ってくれた。


「ルイズですか?」
「あ、そうそう、そいつ。彼女とその使い魔の彼は一体どこに行ったんだ? 突っ掛かってくると思って、“角王剣アーティライト”引っ張って来たんだが………」
「ルイズたちなら、朝早くからどこかに行きましたよ。確か魔法衛士隊の隊長らしき人間と共に………」
「ふーん?」


ここまで来たってことは、俺の記憶だと確かアルビオン編だったか?
まぁ、流れは滞りなく動いてるし、激流に身を任せてみるか………はてさて、どうなるかねぇ。
俺達は最近の日常を語りながら仕事を進め、夜前までには土台が完成した。


「さて、今日の仕事は終了だな」
「ですな、続行してもいいですが暗いと大怪我に繋がりやすいですし」
「陛下とゴウトさんはどこか泊まる場所とか考えているんですか?」
「いや、ここに立ち入り禁止の触れを張って、輸送船の中に寝るつもりだ。一応居住スペースも少ならずしも搭載してあるしな」
「なら、僕からマルトーさんに頼みこんで食事を出してもらう様に言っておきますし、一緒に食堂で食べませんか?」
「あー、いいのかよ? 他国の人間と共に食事とか怒られねぇの?」


まさか、ギーシュがこう言ってくるとは、型破りな行動を侵食させ過ぎたかもしれん。


「陛下、ギーシュの行為を無碍にするのも悪いですし、どうでしょう? 受けてみるのは?」


ゴウトの口からそんな言葉が出てくるとは思わなかった俺は、少なからず驚いていた。
まぁ、弟子がそこまで言ってくるなら乗らせてもらうか。


「そうだな。御相伴に預かろうかね」
「じゃあ、僕はマルトーさんに話してきますね!」


ギーシュは、走って料理場に向かって行った。


「……あとで酒でも持っていくかな」
「持って来てたんですか?」
「ああ、最近飲んでないし、月見酒も悪くは無いだろう?」
「まぁ、分かりますがね」


俺達は、一度輸送艦に戻って汗を軽く流した後、着替え直してから食堂に向かった。
〜真紅狼side out〜


〜ギーシュside〜
厨房に駆けこんだ僕は、マルトーさんに事の顛末を話すと「よし、分かった。ここの生徒とは別にトルトゥーガ風の食事を出してやる!」と士気が上がり、いつもの倍の速度で調理機器の音が響いていた。
すごい、今の彼らにはヘイスガでも掛かっているんだろうか………。
僕は厨房を出て、陛下達を食堂に案内しようと思ったその時、食堂に向かう廊下で大きな声が聞こえた。


『まぁ、蒼騎陛下が何故ココに!?』
『これはこれは、アンリエッタ王女。御無沙汰しております。今日はプライベートでこちらに来ましてね、“王族”の肩書きは無いに等しいのですよ』
『普段から、肩書きを投げ捨ててる貴方が何を言ってるんですか………』
『そこは黙ってろよ、ゴウト』


そう言えば、現在学院には王女殿下が滞在していたんだっけ!
素で忘れていたよ。
急いで僕もその場に向かう。


「陛下!」
「んお? おう、ギーシュ、マルトーはどうだった?」
「全員にヘイスガが掛かった様に創り始めてます」
「マジか………。なんで掛かるんだよ、おかしいだろ、それ」


蒼騎陛下は呆れていた。
僕もその辺の理由を詳しく知りたい。


「………ギーシュ……さんでしたか? 料理長に何を伝えたのですか?」


僕と蒼騎陛下の会話が気になったのか、僕に声をかけてきた。
僕は態度を変わらず質問に答える。


「蒼騎陛下の国の料理を出してもらえるように頼んだのですよ」


すると、年相応らしい表情を出すアンリエッタ様。


「まぁ! 蒼騎陛下の国のお料理をですか? 私、蒼騎陛下の国のお料理はどんなモノなのか、興味がありましたの! 私も蒼騎陛下と同じものを食べてみたいのですが料理長に頼んできてくださらない?」


………これは、遠回しに「言ってこい」って言われてるな。
ヘイヘイ、行きますよ、王女様。


「分かりました。今伝えて来ますので、しばしお待ちを………」


僕はアンリエッタ様の前で一礼し、その場に立ち去ろうとした時、陛下と目が合い、「やれやれだな」と言っていた。
だから僕も目で「やれやれです」と語り、再び厨房に向かいマルトーさんに事情を話した。
すると、マルトーさんは「王女様の頼みと言ったら断れねぇが………口に合うか怪しいと思うんだがなぁ………」と呟きながら創っていた。
そうなんだよね、こちらではパンや肉料理だが、トルトゥーガでは米や野菜といったこちらではあまり口にしないモノばっかで構成されている。
それに食器も違う。
こっちはナイフにフォーク、スプーンだが、あちらはほとんどが箸だった。
料理によっては、フォークやナイフ、スプーンで食べる料理も出てきたが基本は箸がメインだ。
当然の如く、こちらの料理を食べると言う事は、手慣れている食器ではな無くなることである。食事にありつけるか怪しいな。
ま、アンリエッタ様御自身が望んだ事だし、僕達が口出すわけにもいかないな。
そして、食事の時間になった。


蒼騎陛下達は隅のテーブルに座り、マリコンヌやアンリエッタ様達はいつも通り真ん中に座っていた。
ちなみに僕は陛下達と一緒に座ってる。
マリコンヌ達の前に料理が運ばれ、いつもの祈りをやっていた。


『始祖ブリミルよ、今日も私達にささやかな食物を感謝します』
「アレでささやかって、おかしくね?」
「………ですよね」
「アイツ等、一回、ささやかの意味を調べ直してきた方がいいな」
「ところで、陛下はなんでキョロキョロと食堂を眺めてるんです?」
「いや、なんつーか、センスの欠片もへったくれも無いなと思ってさ」
「まぁ、ここは“貴族”の食事場ですし………」
「自宅でメシ食ってる方が落ち着くね」
「………ですな、ここは些か食事をするって場所としては似合いませんな。食事場と厨房を別々に創った後、強引にくっつけた。………と言った方が正しい」


ゴウトさんの指摘は見事に当たっていた。


「さて、彼らも食べ始めているし、俺らも頂くか」
「そうですな」
「マルトーさん、今日のメニューは何ですか?」
「今日は竹の笹で包んだ筍ごはんと鮎の塩焼き、それと根菜のスープだ。あちらでは“味噌汁”って言うんだっけか?」
「まぁ、そうだが。“味噌”を使ってないから、スープで合ってるな」


メイドの方達がトレーに乗せて持って来てもらい、それぞれ僕達の前に一つずつ置かれた。


「では………」
『いただきます』


僕達は手を合わせて、当り前の言葉を口にした後食事を始める。
マリコンヌ達は僕達の食事を奇妙な目を向けているが、僕達は気にせず食事を楽しむ。
竹の笹で包まれた筍ごはんは、竹の匂いが開けた途端広がり、森林に居るような感覚になる。


「うん、美味い」
「ですな。鮎の塩焼きも塩加減が絶妙ですし………」
「スープも熱くなりすぎず、冷め過ぎずと飲みやすいです」


陛下達と僕は箸で綺麗に鮎を食べているが、アンリエッタ様は慣れない箸で苦戦し、毟りまくっていた。
ああ、身がもったいない。
まぁ僕も最初はそうだった。慣れなかったが、慣れなければ食べれないので必死に練習して今では、自由自在に動かせるようになり今もこうして食事をしている。


「そういえば、蒼騎陛下。アルビオンの一件聞きました?」
「ああ、聞いた聞いた。議題に上がっていたな。本格的な話し合いはまだしていないが、各隊長と俺で軽く話し合った結果、アルビオンがもっとも近づく期間の間は航空隊を倍にして、三人一組で隊列を組ませるようにした」
「そうですか………僕達は未だに決まっていないみたいです。―――何せ、トリステインは誰が味方で誰が敵か分かりませんから、どいつもこいつも仮面を被ってるせいで………」


僕は王女様の耳に聞こえない様に、こそっと話す。
かなり小さな声で喋ったが、聞こえていたようで蒼騎陛下は「まぁ、国のトップがアレじゃァな、裏切りやらスパイが入りこんだって致し方ないか」と嘆息しながら答えてくれた。
僕達の食事は終わって食器を片づける。もちろん、ちゃんと洗って返す。
その行動に、マリコンヌ達は目を剥いて驚いている。


「なんで、アイツ等俺達の行動に驚いてるんだ?」


蒼騎陛下は素で首を傾げていた。


「蒼騎陛下、ここは“貴族”が魔法を学ぶ魔法学院ですよ? “貴族”がそんなことすると思います? それに陛下は王族の身ですよ? 王族自らやるなんて、トルトゥーガだけだと思いますよ」


すると、陛下はここが自分の国ではない事に気が付いた。
どうやら、忘れていたらしい。


「ああ! いつも日常的にやってる事だったから、普通に忘れてたわ。いやー、日常の動きしておかないと体のサイクル狂っちゃうからさぁ、困るんだよねぇ」
「困った生活習慣ですね」
「本当にな。遠出した時が一番困っちまうよ。ま! カトレアに抱き付けば一発で治るんだけどな!」
「はいはい、惚気話はどうでもいいです」
「おお、我が弟子が軽くあしらうことまで身に付けるとは、本当に色んな意味で成長したなぁ」


そんなこんなで食器洗いも終わった僕達は、陛下とゴウトさんは「仕事の続きを軽くやってくる」と言って、食堂を出て別れた。
この後、どうするか迷ってるとマリコンヌ達も食事を終ったのか出てくる。僕にはさほど興味を示していないのか、それとも彼等のルールで僕だけ仲間外れに決めたのか、はたまた両方かは分からないが無視して歩いていく。
ほとんどが、声を掛けずに去っていくと一人、見覚えのある女生徒が僕の前で歩みを止めた。


「………ギーシュ様」
「君は―――ケティだったね」
「はい、トルトゥーガに行かれてからお顔を忘れてしまったのではないかと心配でした」
「………そうだったのか、心配かけてすまなかったね。して、何か用かな?」
「ギーシュ様………。私………………」


ケティの声は次第に小さくなっていき、さらには顔も赤い。
この流れからして、まさか…………


「……………私、ギーシュ様の事が好きです! こんな貴族として未熟な者でありますがお付き合いさせていただきませんか!?」


わぁーー、予感的中だーー。
ケティは真剣な目でこちらを覗いてくる。どうやら、返答を待っているらしい。
どうしよう、ケティの好意は凄く嬉しい。一人の男性として、ちゃんと応えるべきなんだけど…………僕にはまだそれにふさわしい答えが見つかっていない。
すると、そのどう答えるべきか悩んでいる僕をケティは勘違いらしく、僕が喋る前に早継ぎに喋る。


「…………まさか、もうすでに心に決めた方が…………?」
「ああ、ごめん。違うんだ、ケティ」
「では、何故そんなに黙っているのですか? 心に決めた方が居られるなら、はっきりと仰ってください。仰ってくだされば、私も諦めが付きます」
「違う、違うんだケティ。僕はトルトゥーガに修業に行って、変わった。だけど、それは僕自身の“強さ”であって中身は未だに成長中でね………君の想いを応えられるほど“心”は強くなっていないし、中途半端な答えで君を傷つけたくも無い。―――だから、返答は少し待ってくれないか?」
「……………分かりました。心身ともに強くなったと感じられた時にお答えください。それまでは何時までも待ちます」
「すまない。こんな情けない男で………」
「何を言ってるんですか、私から見れば、凄くカッコいいですよ…………では、お休みなさいませ、ギーシュ様」
「ああ、おやすみ」


ケティは軽くおじぎしてから女子寮棟に帰っていった。
悩み事が増えて、空を不意に見上げた。
すると、話しをしていて気が付かなかったが、今日はとても月が綺麗だった。


「まったくこんな月が綺麗な日に、このような話を受けるとはまったくもってロマンチストだよ、僕は」


今一度、綺麗な月を眺めながら自室に戻った。
〜ギーシュside out〜



返答、どうしよっかな…………



―――あとがき―――
はい、お久しぶりです。
久しぶりに投稿できました。
前回、課題の件を話しましたが、アレ………ほんの一部なんだぜ?
多過ぎて、死にそうです。

あいまを見つけては、少しずつ書いているのでちょっと投稿ペースが落ちてしまう事をお許しください。
ですが、同時進行で何個も書いているので、書き終えれば二、三個は一気に投稿できるかと思います。


では、作中へ。
一言言わせてください。

完全にギーシュのヒロインがケ・テ・ィである!!!
どうしてこうなった!?

ギーシュの恋模様を書こうとしたら結果がコレだよ!!
最初にケティが申し出て、次にモンモランシーにしようと思ったのに………!!




ここから質問です。
tinamiで投稿している『科学と魔術』、とある超電磁砲がベースでちょっと禁書目録が混じってる物語なんですけど投稿場所を一つにまとめようと思ってるんですけど、どうですかね?
ついでに、私がこの二次創作を書き始めた作品がもう一本あるんですけど、その作品も投稿し直そうか思っていますが、にじファンの時から投稿作品です。
あ、作品は『ネギま』です。
タイトルは『新“ネギまと転生者”』です。

蒼騎真紅狼が生まれた作品ですね。

-26-
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ゼロの使い魔 三美姫の輪舞 ルイズ ゴスパンクVer.
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