小説『ハルケギニアに蘇りし紅き狼』
作者:大喰らいの牙()

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第四話  兄弟の諍いを収めるにはこれが一番


〜真紅狼side〜
向かった先は、俺専用の飛空挺。


“ウォルフガング”


バルフレアが持ってる“シュトラール”をモデルにした飛空挺でアレよりかは多少スピードは落ちるが、その面戦力に回してある。
6・88mm砲のカルバリン砲を上と下に二砲ずつ装備してある。
他にも装備は色々あるが、また今度にしよう。


「ライフェン、操縦頼んだ」
「了解しました、王よ。発進する! 各員持ち場に付け!!」


この飛空挺を動かしている艦長はライフェンといい、我が航空隊の部隊長を務めている。
種族は翼人でモデルは鷹だ。
軽く一眠り付きたいところだが、30秒で着いてしまうので寝ても意味がない。


「ライフェン、王宮の近くでかつ広い所に着陸させろ」
「了解しました!」


飛空挺が着陸すると、それを見た衛兵が集まって来る。


「貴様たち、何者だ!!」
「俺達は、ロズピエール一世より会いたいという誘いを受けた“トゥルゥーガ公国”の者だ」
「そ、それは失礼しました!! で、ではこちらにどうぞ!!」
「あと、あの飛空挺には中に入るな、弄ろうともしないように、全員に言っておけ」
「は、は、は、ははい!! 伝えておきます!!」


先程から一人の衛兵が緊張して、言葉がどもっていた。
新人かな?
どこも大変だねぇ。
そうして、俺達は応接室で待たされることになり、しばらく待ってると新しい衛兵がやってきた。


「王がやってきますので、ここでお待ちください」
「ああ………」


そうして、衛兵が消えてからキョロキョロと周りを見渡す。
ここがガリア王国の城………“グラン・トロワ”か。
石造りにしちゃ、なかなか凝ってるな。


「(真紅狼様)」
「(なんだ、タマモ?)」
「(外の兵達がこちらの様子を伺っています………どうします?)」
「(放っておけ。ただし、攻撃してきたら戦意を失わせる程度までにしろ)」
「(分かりました)」


タマモは霊体化して、姿を見えない様にして警戒した。


「遅れて申し訳ない。私がロズピエール一世だ」
「いえ、こちらこそ。私が“トゥルゥーガ公国”の国王の蒼騎 真紅狼といいます」
「………見慣れぬ文字だが、貴国の文字かね?」
「ええ。と言いましても私だけしか使ってませんが…………っと、そちらは貴殿の息子さん達ですか?」


ロズピエール一世の後ろに双子がいた。
一人は豪傑だが思慮深い顔つきともう一人は華奢で朗らかで優しい笑みを浮かべていた。


「こちらは私の息子達で兄のジョゼフ、弟のシャルルだ」
「“トゥルゥーガ公国”の蒼騎 真紅狼だ」
「「………/………よろしくお願いします」」


ジョゼフは答えず、シャルルだけが手を伸ばして挨拶して来た。


「申し訳ない。蒼騎殿、ジョゼフは今反抗期なもので…………」
「いえ、構いませんよ」
「ジョゼフとシャルルは下がりなさい」
「「………/………はい、失礼します」」


二人は下がろうとしていたので、二人に言いたいことがあって呼び止めた。


「ああ、お二人さん。後で少し話をしたいから、分かる様なところにいてくれないか?」
「僕達にですか?」
「ああ。そうだ」
「………分かりました。では、この先の中庭で待っていますので、父との会談が終わり次第………」
「ああ。向かうとしよう」


シャルルは『では………』と言って、ジョゼフと出ていった。
コイツ等の諍いの原因は自分を偽り過ぎなんだよな、だからこそ俺は解決策を持って来ているから、後でやらせよう。


「息子達に話とは………?」
「まぁ、ちょっと………。でも、良い結果になると思いますよ」
「そうかね………」
「では、本題に入りましょう。『私に会いたい』という知らせを受けて来ましたが、何用でしょう?」
「うむ。貴殿の国はどんな種族を受け入れたりしていると言う事を聞いたが、何故だ?」
「では、質問で返すようで申し訳ありませんが………何故、差別するのですか? 杖も使わず、魔法を唱えるだけで異端と言われ、人との外見が多少違うだけで忌み嫌われる…………おかしいじゃありませんか?」


エルフは耳が長いからといって嫌悪する。
杖なしで魔法を唱えるからって、化物と言葉の暴力をぶつける。
おかしいだろ。
それは、彼等が独自に築いた文化の為だからだ。


「だが、彼等は………我々では理解できない様な現象を引き起こしては我々に弓を引いて来ている!」
「自分達が理解できなくなると、それを見なかったことにして都合のいい解釈なんて、人として最低ですよ。はっきりいいましょう、俺にとってはそいつがどんな格好して、どんな魔法を唱えようが関係ありません」


いきなり口調が変ったことにびっくりしていたが、ロズピエール一世は何も言わず、俺の次の言葉に耳を傾けていた。


「エルフだろうが、翼人だろうが、精霊だろうが、竜人だろうが、竜だろうが全て俺は、俺の国は受け入れます。迫害、一族抹殺、棲み処を奪われた………色んな奴等が来ましたが、俺はそれを受け入れました。彼らも“生きている”んですよ」
「………そうか、その件はもう話すこと無い。違う事を聞いてもよろしいかね?」
「どうぞ」
「貴殿の国は、法律がないと聞いたが本当かね?」


今度はそっちか。


「ないと言えば、ないですね。三カ条さえ守って頂ければいいので………」
「その三カ条とやらを聞いてもよろしいか?」
「はい。


『一つ、何があろうとも、絶対に生きて帰って来る事』


『一つ、己が護りたい者の為に全力を尽くせ』


『一つ、もし、護るべき者が外道や畜生に穢されたりしたら、容赦なく殺せ』


この三つです」
「これだけかね? もっとこう横領とか盗みとか………」
「ありません。だいたい馬鹿でも分かる様な事を一々法律に掲げることもないでしょう? 『他人の物を取ったら泥棒』………そんなもの自然と分かってるものです。だからこそ、そんなモノ掲げるよりかは、もっと大事なコトを皆に守ってもらった方がいいじゃないですか。ですが、他国は一々、掲げてまで法律にするのはそれを破る者がいるから掲げている。はっきりと明細に掲げることでしか守れないから………違いますか?」


すると、ロズピエール一世は突然笑った。


「ハッハッハッハッハッハッハッハ!! そうだな、貴殿の言う通りだな!! これは一本取られたな!!」
「……………………………」
「確かに我々はそうやって法律に掲げることで守ることでしか出来ない。長い間、国王をやっているが………よっぽど、貴殿の方が“人”を知ってる様だ。貴殿のような若者に教えられるとは…………私も年かな」
「まだまだやっていけますよ」
「有難う。私の聞きたいことはもう十分聞けた。出来れば貴殿の国と末長くやっていきたいのだがよろしいかね?」
「構いませんよ。こちらこそ、よろしくお願いします」
「うむ。………して、何故、貴殿は先程息子達と話をしたいなどと言ったのかね?」
「ここからは推測なので、聞き流してしまっても構いません。おそらく兄君は魔法が使えない。そのことが彼の非常に大きなコンプレックスになっている。対して弟君は魔法も人柄もよい………だが、貴方が次期国王に指名したのが兄君ということが彼の心の中に負の感情を産みだしてしまった。だが、弟君はその感情を押し潰して兄君を祝福した。…………それが気にいらない兄君の憎しみは募る一方。互いが互いを憎しみ合っている。と思うのですが………?」


原作知らないと分からないことだけどな。
まったくもって原作読んでいてよかったぜ。


「そうだ…………貴殿の言う通り、ジョゼフとシャルルの二人は何時からかまったく喋ることが無くなった」
「そうですか………まぁ、これが上手くいけば、昔みたいに兄弟仲良く話せるかもおもいませんよ」
「初対面の者に頼むのも悪いと思うが…………いいかね?」
「ええ」


俺は中庭に向かった。
〜真紅狼side out〜


〜ジョゼフside〜
先程の男、かなり出来ていたな。
俺よりも人望も厚そうだ。
くそっ、気にいらない。
そんなことを思ってると、向こう側からそいつがやってきた。


「おお、いたいた」
「………父との会談は終わったのですか?」
「ああ。もうな、今度はキミたちの番だ」
「………俺達の番だと?」
「そう。これからキミ達には素手で喧嘩をしてもらいます!」
「「………はぁ?!」」
「ほら、杖をだす! あ、急所を狙うのはナシね。………互いに言いにくいことがあるんだろ?」
「「……………!?」」
「心の奥底で溜まってるモノを溜めたままじゃ破裂しちまうんだし、ここいらで拳に乗せて殴り合え。言いたいことも言えるし、気持ちもスッキリする」


そう言って、そいつは少し離れた。
俺はどうするか、困っていたがすると突然…………


ドゴッ………!


「がっ!」
「………兄さんがなんで次期国王になれるんだ! 僕の方が色々と勝ってるのに!!」

俺は立ち上がり、シャルルの殴り返した。

「俺だって知らねーよ!!」

バゴッ………!

「ぐっ!」
「シャルル! お前はいつも俺のことを祝福してくれたが、それが嫌で嫌で仕方が無かったんだよ!!」


そこから、俺達は溜まってた鬱憤を晴らしながらシャルルと殴り合った。
〜ジョゼフside out〜


〜真紅狼side〜
殴り合いを扇動してから、10分ぐらいが経った。
今も兄弟喧嘩は続いているが、お互いボロボロで立ってるのもやっとの状態だった。


『に………兄さん………早く………た……おれ………なよ!』
『お前………よ………り…………も早く…………たお………れ…………てたまるかッ!』


いやー凄かったんだよ。
ボディブローをジョゼフが叩きだしたら、シャルルがジャブをブチかまして。
互いの顔なんか、腫れまくってる。
そして…………


『これで……………………』
『終わりだ……………………!!』


バキィ……………!


互いが同時にストレートを放ち、それぞれの頬に入った後、同時にダウンした。
終わった様なので、二人の元に向かう事にした。


「よぉ、お二人さん。どうだい気分は?」
「溜まってた鬱憤が晴れて、しかも清々しい気分です。蒼騎殿」
「そうかい。ジョゼフは?」
「俺も久しぶりにこんな喧嘩をして、楽しかったな」
「たまには、馬鹿みたいに喧嘩するのも悪くは無いだろう? それとな、ジョゼフ、お前が魔法を全部試したのか?」
「どういうことだ?」
「伝説の魔法…………“虚無”を試したのか?」
「そんなのお伽話じゃ…………」
「何故決め付ける? 何も試していない奴が決め付けるなど悪い癖だぞ?」
「……………………………………」
「試して、それでもダメだったら俺の元に来い」
「………分かった。試してみよう」


何事にも一歩踏み出せれるかが大事だ。
その一歩を踏み出せることが出来なければ何も始まらない。


「そろそろ俺は国に帰るか」
「もう帰るのか?」
「ああ。仕事溜まってんだよ。それと、俺の名前は“真紅狼”と呼び捨てで構わないぞ」
「一国の王を呼び捨てなんて………!?」


シャルルは畏まっていた。
たく、しょうがねぇな。


「シャルル、俺達は親友だ。親友なら呼び捨てで呼ぶのが礼儀だろ?」
「そうだぞ、シャルル。真紅狼がいいって言ってるんだ、呼ばなくてどうする?」
「兄さん、何時の間に馴染んでんの?!」
「おー、ジョゼフは馴染むのが早いなぁ」


本当に早いな、コイツ。


「分かりました。真紅狼。これでいいですか!?」
「おう。いいぜ。今度はウチの国に来い。色々と案内してやるよ」
「真紅狼の国か…………暇を見つけていくとするか! シャルル!」
「そうだね…………行く時は連絡します!」
「ああ。楽しみに待ってるよ」


そうして、俺はウォルフガングに乗りこんで自国に帰っていった。
あ、ロズピエール一世に挨拶してねぇや。
ま、ジョゼフ達がなんとかしてくれんだろ。
〜真紅狼side out〜


溜まった書類整理したくねぇなぁ………(;_;)




―――あとがき―――

えー、あらすじ紹介で書き忘れていましたので、ここで追加しときます。

原作開始前からこの物語は始まっています。
表記ミス申し訳ありません。

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