さて、俺と転生者諸君の戦闘も終わり、ほどなくなのはとフェイトの戦いも終わった。まぁ、何故かは知らないというか必然的にというか、その戦いの一部始終は全て管理局と名の付く組織に見られていた訳で、事態の解決を図る為にそいつらが干渉してくるのは自明の理。
それじゃあ俺の今の状況を確認してみようか。まず、今の状況は管理局と高町なのは達高町陣営とフェイト達フェイト陣営の勝負を行なう場だった。手出しはしないがそれを観に来た転生者達とユーノ、アルフ達もその場にいた訳だ。
そこへ、なのは達の一対一の決闘の最中に俺が乱入、観客達を全て地に伏せさせた。やられたのは高町陣営の転生者達とユーノ、それにフェイト陣営のアルフ。つまり、今の状況を考えると俺は急に現れた両陣営の共通の敵となる。目的も分からない単騎勢力で、転生者の火喰隼人……管理局にとってはかなりの実力者と見られている人物を軽くあしらってみせる実力を最低でも持っている人物。それが俺。
てことは俺は両陣営にとって敵であり、現れた管理局が取る行動は――――
「そこの乱入者! 時空管理局だ、公務執行妨害及び民間協力者への暴行により拘束させてもらう!」
まぁ、当然そうなるだろうな。だが、今はそんな場合ではない。管理局は何のためにこの戦いを準備したのか忘れたのか。
そう心の中で呟きながら俺は練習してきた魔法を発動させる。発動させるのは飛行魔法。俺の魔法はデバイスを介していないのでそう上手く扱える訳ではないが、それも練習によってデバイス使用の高町なのはやフェイトと同レベルで魔法を扱う事に成功している。これまでは空を飛ぶというより空を駆ける感じだからな。
身体能力でモノを言わせて空中歩行なら出来るんだけど、実際に空を飛ぶのとじゃあ効率がかなり違う。まぁ、俺の魔力量はそう多くないから低コストな魔法である飛行魔法だとしても、ぶっ続けで1日程度が限界だろう。
そして、そんな魔法を行使して俺が向かうのは、戦闘を終えて呆然とこちらを見ていたなのはと抱えられつつもこちらを見ていたフェイト達の下だ。何故か、それは盗聴による情報で知っていた事によるもの。
「っあ゛あ゛あああああ!!!」
バチヂィ!! そんな音が響いて俺の左腕と何処からか降り注いだ紫色に輝く雷が衝突して消えた。
「えっ!?」
「きゃあっ!」
俺の行動と雷の甲高い音を聞いたなのはとフェイトは各々悲鳴を上げる。だが、なんとか雷は回避できた。まぁ……それでもジュエルシードの方は回収されたみたいだが。だがそんな物は俺にとってはどうでもいい。今は管理局と転生者、原作組の方にコンタクトを取ってなんとかこの状況を原作通りに終わらせなければならない。
何故なら、それがはやてを救う為に必要だからだ。
はやての持っている不気味な本と麻痺した足はおそらく、この先何かしらの事件を引き起こす。その際にはやては救われる、というのが原作のストーリーというのが盗聴によって分かっている。あの転生者はペラペラペラペラと自身のデバイスにこの先の事を確認したり、行動を練ったりするからな。バカみたいに重要な情報を垂れ流しにしている。
だが、ここで不安な要素がある。それが俺達転生者の存在。転生者の存在は世界にある程度のイレギュラーを引き起こす。いない筈の存在の出現、敵や主人公達の実力の変化、時系列の変動等々様々だが、今回俺が気にかけている可能性は、【はやての関連する事件の結末がイレギュラーによって変化する可能性】だ。
そいつは少し避けたい。他の転生者に全部任せるのも少し不安が残る。それなら俺が関わって上手く展開を誘導しなければならない。はやてを救う展開に
「……なのはちゃん、フェイト。ちょっくら話がある」
「! まさか……珱嗄先生?」
「珱嗄……?」
ようやく俺の存在に気が付いた二人の少女。正直、遅すぎる。
「いいから、さっさと俺を管理局の下に連れてけ。全く、普段何をしているのかと思えば……ガキが危ない事をして……後でお仕置きだな」
「あ……ご、ごめんなさい」
「謝罪は後だ。早く」
『それなら、私が貴方を此処に送るわ』
声がした方へ視線を向けると、そこには宙に浮かんだモニターがあり、そこには翠色の髪をした女性がいた。
『時空管理局のリンディ・ハラオウンです。このジュエルシード事件を担当する管理局の実質最高司令官になります』
「なるほど……それは分かった。じゃあ、俺の大事な生徒を四人も連れてこんな事態を引き起こした事も含めて……色々話して貰おうか」
転生者は別段大事にしている訳じゃないけどね。
『……分かりました。とりあえず、なのはさんとフェイトさん……あと他の皆さんも一緒にこちらへ来ていただきます。少し待っててください転移させます』
そうして、俺はジュエルシード事件解決に取り組む組織、時空管理局の拠点。アースラへとその身を飛ばしたのだった。