小説『リリカル世界にお気楽転生者が転生《完結》』
作者:こいし()

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約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!!」

 先手を取ったのは、転生者の一人……火喰隼人。特典によって某アーサー王の直感から経験、武器までを手に入れた男。故に、その魔力量ですらこの世界で言う所のSSSランク。実質約束された勝利の剣(エクスカリバー)を連続で放ってもまるで問題な位の膨大な魔力。実に厄介だろう……だが。

「単発の一撃か……全く面白くないな」

 その程度なら、何もせずとも躱せる。アホみたいに馬鹿でかい攻撃だし、もしこれが遠隔操作の出来る物なら厄介だっただろうけど。

「隙ありィ!!」

「残念、そこは隙じゃない」

 避けた先に突っ込んできた會田蓮。彼の特典は、徹底的な身体強化と魔力吸収という魔法を全て無効化する魔導師殺しの近接格闘魔導師。彼の身体能力に限界はなく、身体強化の魔法も会得している節がある。
 更に、これまたSSSランクの魔力量を持っている典型的なチート君。だが、俺の得意な戦闘範囲もまた近接―――身体能力に任せて突っ込んでくるだけのガキに負ける道理はない。

「うがぁっ!?」

「赤点だぜ」

 突っ込んできた顔に合わせる様に蹴りを叩き込み、會田を吹き飛ばす。背後に建つビルにつっこんで、砂煙を上げながら消えた。

「死ねぇええええ!!!」

 そこへ真上から迫る神崎零。特典で得た【無限の剣製(アンリミテッドブレードワークス)】で生み出した千将・莫耶を振り上げて俺の頭を切ろうと振り下ろしてきた。魔力ランクEXという測定不能の魔力量と質で生み出されたソレは、尋常じゃない程の威圧感を放っていた。
 ちなみに戦闘には役立たないが、彼はナデポ・ニコポという所謂魅力チートという物も持っている。

「素人が持つ刃物程、見ていて怖くない物はないな」

「ぐっ……マリア! さっさと援護しろ!!」

「………了解、マスター」

 神崎の千将・莫耶を両の手刀で側面を斬る様に弾き飛ばすと、彼は後ろに後退すると同時に自分の近くにいた小さな妖精のようなデバイス……ユニゾンデバイスに指示を出して援護を頼んだ。彼女の名前はマリアというらしい。
 彼女は、嫌々な雰囲気を出しながらも自身の魔法を展開した。それは、遠距離から援護するタイプの魔力弾を生み出す魔法。フェイトのプラズマランサーやなのはのディバインシューターと良く似ている。違うとすれば、その色位か。彼女のは薄い緑色をしていた。

「なるほど、デバイスだけは一人前か」

「はぁああああ!」

 迫る魔力弾数発と同時に再度突っ込む神崎と初撃を終わらせた火喰。二人の夫婦剣と聖剣が迫り、その後方から魔力弾がやって来ている。

「はぁ……全員赤点。単調過ぎて面白くない」

 二人の剣を右手と左手で同時に奪い取り、峰打ちで二人とも真下へ吹き飛ばす。そして迫りくる魔力弾は……


「―――約束された勝利の剣(エクスカリバー)


 火喰から奪った聖剣で全て消し飛ばす。全ての魔法を使うだけの知識があるのなら、相手の魔法位簡単に再現できる。それに、魔法は魔力をコントロールする精密性とそれを形にするだけのイメージが必要。一度見た上にアニメでも見た事のある魔法なら、イメージする事は簡単だ。
 それに、魔力に関しては自身のではなく周囲にあった魔力素を掻き集める事で自身の魔力を消費せずに発動させる事でどうにでもなる。

「さて、次だ」

 魔力弾をどうにかした後は、バインドで神崎のユニゾンデバイスを拘束。両手の夫婦剣と聖剣を早々に放り投げる。

「そこのユニゾンデバイス。邪魔しないならお前のマスターは生かしといてやる、大人しくしてろ」

「…………」

 そう言うと、彼女はこくりと一つ頷いた。あんなマスターでもいなくなれば自分の居場所がなくなってしまうから、死なせるわけにはいかないのだろう。不憫だな。

「お、おおおおおお!!」

 そこへ、先程ビルへ突っ込んで行った會田が戻って来て拳を俺に向けて振り下ろしてきた。

「遅いな」

 それでも、一瞬遅い。手首を掴んで捻りあげ、合気道の要領で投げ飛ばす。だが、手は離さずに地面に向かって急降下、地面に會田の身体を思い切り叩き付けた。

「ガッ……はぁっ……!!?」

 肺から空気が全て出て行き、口から血が漏れだす。上空100m程から叩き付けられたのだ、内臓器官や骨も多大な損傷を受けているだろう。とりあえず、最低限の回復魔法を掛けて放置。とりあえずは動けないだろうが、死にもしない筈だ。

「お前ら、本当に素人だな……大方、力さえ貰えれば強くなれるとか考えていたんだろうが……使いこなせなきゃ意味が無い。お前らは力を使ってるつもりだろうけど……逆だ、お前らは力に使われてんだよ」

 だから、全く面白くない。そんなんで原作を掻きまわすだの、ハーレムだのほざいてんなら―――


 ―――もう一回死んでやり直せ


 
「さて、後は神崎と火喰か……まだやられてないだろうし、トドメさして帰るか」


 現時刻、18時32分。残り時間28分だ。




 ◇ ◇ ◇



 アリシアside


 よーし、それじゃあフェイトとなのは……ちゃんを一気に倒しちゃおう。お兄ちゃんも気付けばもう一人やっちゃってるし、ビリにならない様に頑張らないと。それに、はやての晩御飯の間に合わなくなっちゃうしね。
 さて、それじゃあお兄ちゃんの一番弟子……アリシア・テスタロッサの実力を見せてあげるよ!

「アリシア……姉さん。なんで……」

「んん? なんで生きてるの? ってことかな、フェイト。というか、初めましてだねぇ。私に妹が出来たなんて嬉しいな」

「あ、うん。初めまして……って違うよっ」

「んー……なんで生きてるかって言われたら、お兄ちゃんが生き返らせてくれたんだよね。あぁ、お兄ちゃんって言うのは、あそこで戦ってる人の事なんだけど」

 視線を向けた先を、二人とも見た。そこには、フェイト達の担任の先生である珱嗄お兄ちゃんの姿。すこし驚いている様だけど、いまさら感が勝っている様だね。

「……先生が……色々聞きたい事が多いけど、とりあえず闇の書の容疑者として……アリシア姉さん、貴方を拘束します」

「わ、私も!」

 フェイトと会話しててなのはちゃんが空気だったね。可哀想に……とはいえ、挨拶くらいはしないとね。お兄ちゃんやはやても挨拶は大事だって言ってたし。

「こんばんわ、高町なのは……ちゃんだよねっ。いつもフェイトがお世話になってます」

「あ、いえいえ。フェイトちゃんには私の方がお世話になってて……ってちがうよっ」

 変な所で似た者同士だねぇなのはちゃんとフェイト。さすがは仲良しさんだ。

「で、拘束するって? ごめんね、妹の頼みだから叶えてあげたいんだけど……今回ばかりは譲れない理由があるんだ。だから……」

「……っ」


「―――妹だろうと負けるわけにはいかないんだ」


 一気に魔力を開放して、身体強化に大半の魔力を注ぎ込む。これによって、私の身体能力はお兄ちゃんには劣るけど接戦出来る位には向上する。さらに、私の五感はお兄ちゃんから与えられたお兄ちゃんと同等の物。その中でも、私がお兄ちゃんに勝っている感知能力は、攻撃性は無いけれどとんでもない武器となる。

「掛かっておいで、二人掛かりで。お姉ちゃんが少しだけ、遊んであげる」

 そう言うとフェイトが前衛、なのはちゃんが後衛というポジションにつき、フェイトが私に肉薄する。インテリジェンスデバイス、バルディッシュを鎌のフォームに変えて、横薙ぎに振るった。
 でも、まだまだ隙が多い。お兄ちゃんに鍛えられた私からすれば、眼を瞑ってても対処出来る物だった。

「『バインド』」

 私の最も得意とする魔法。それがバインド系統の拘束魔法。私の魔力感知スキルとこのバインド魔法、使っても使いきれない程の膨大な魔力量が合わされば、この拘束魔法が異常なほど効果を発揮するのだ。

「なっ……速いっ……!?」

 フェイトの腰とバルディッシュの柄の二ヵ所をバインドで捕らえ、お兄ちゃんの内部に衝撃を通す技術を魔力で再現する。掌底を作って魔力を纏わせ、そのままフェイトのお腹に触れた。

「ガフッ……!!?」

 バインドのせいで吹き飛ぶ事も出来ないので、衝撃は100%フェイトの身体で爆発する。そのせいで、まだ未発達な身体のフェイトは、意識を簡単に失ってしまった。

「フェイトちゃん!? このっ、ディバインバスター!!!」

「駄目だね。焦って攻撃する様じゃまだまだだよ」

 私はそう言うと、バインドを更に発動させ、『砲撃魔法その物を拘束した』。


「嘘っ!?」


 これが、私のバインド。拘束の対象を人や物だけに留まらず、魔法自体にまで及ばせた新バインド魔法。お兄ちゃん命名、『魔法殺しの鎖(チェインオブキリングマジック)』。世界で唯一、私とお兄ちゃんだけが使える拘束魔法。オリジナルは私だけど、お兄ちゃんは他の要素で補う事でこの魔法を使って見せた。
 元々、この魔法は私の感知スキルの高さから出来た物で、三つの段階を踏まなければならない。

 まずは私の感知スキルによる、魔法発動の察知。次に発動の瞬間に構成される魔法を解析。最後に解析した魔法情報の中から脆い部分を拘束して停止させるのだ。
 
 そして、バインドによってせき止められた魔力の流れは、暴走を起こし崩壊する。

「ディバインバスターが消えた……?」

「ごめんね」

 そう一言謝って、私は瞬時に距離を詰めてなのはちゃんの首筋にお兄ちゃん直伝の手刀を落とした。すると、直ぐに意識を奪い取り、空中にバインドで固定した。これは私の数ある特殊バインドの一つ、『時限式バインド』。込めた魔力が尽きるまでそこに固定し続ける物。魔力が尽きたら勝手に消えると言うこれまた私がお兄ちゃんと作りあげたバインドの一種。

「さて、またねフェイト、なのはちゃん。今度はちゃんと家族として、友達として会おうね!」

 私はそう言って、その場を後にし他の援護に向かった。








 

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