小説『リリカル世界にお気楽転生者が転生《完結》』
作者:こいし()

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 フェイトが転校した後、俺は考えていた通り2時間耐久鬼ごっこを繰り広げ、後の授業でほぼ全員が爆睡するという状況を作り出した。寝なかったのは魔法訓練で鍛えられていたフェイトとなのは、後は真面目に努力してたのか火喰君だけ。神崎と會田君は予想通り爆睡。
 そんな状況で授業はままならず、最終的には全員叩き起こして授業させた。

 今はその放課後。

「ふあぁ……さて、ん?」

 自分の机に頬杖を突いて欠伸をしていると、そこに念話が入った。

『珱嗄。蒐集の件だが……予定の600ページまでもう少しなんだが、ヴィータが無茶して負傷したので今日は帰る。一応592ページまで溜まったぞ。残り8ページだ』

『シグナムか。オッケー、ありがとう』

『では』

 そうして念話が切れた。さて、後もう少しだ。そろそろ帰るとしよう。



 ◇



「ただいまー」

「お帰り、兄ちゃん」

「おう、はやて。久しぶりの登場だな」

「メタな発言止めろや」

 家に帰ると、車椅子に乗ってお玉を持ったはやてがリビングから出てきた。

「もう17時か……夕飯の買い物はしたのか?」

「うん、シャマルと一緒にお昼に行って来たよ」

「そっか」

 そう言うと、シグナムとヴィータ、アリシアの三人が玄関から入って来た。

「ただいまー!」

「ただいま帰りました」

「うぅ……」

 元気に挨拶するアリシアと、業務的なシグナム。その背中に背負われたボロボロのヴィータが弱々しく唸った。とりあえず、その場で回復魔法を掛ける。ヴィータの傷は直ぐに治った。まぁ痛みの方はしばらく残るだろうけど、ちょっとすれば消えるだろう。
 元々、傷は治っても感覚的にあった痛みが錯覚で残っている感じだから心配はいらない。

「ヴィータ、大丈夫?」

「はやて。ああ、大丈夫だ……珱嗄が回復魔法今掛けてくれたから」

「うーん……ヴィータ、頑張ってくれるんは嬉しいけど、もう少し自分の事も気遣ってな? 私もヴィータが傷つくんは見たない」

「う……分かった。はやて、心配掛けてゴメン」

「ええよ。さ、いつまでも玄関で話してないで、行こうや」

 そう言って、はやては車椅子をくるりと回してリビングに戻って行った。それに付いていく様に俺達もリビングに入る。夕飯の支度をしていたのか、若干いい匂いがした。




 ◇ ◇ ◇




 翌日


 今日は俺は休日。学校で仕事が無いので休みだ。闇の書のページ数もそろそろ収集し終えるという所で、事件は起きた。管理局の奴らが、またも邪魔してきたのだ。
 それは、今日の夜の事。蒐集に出ていた俺とアリシア、ヴィータにザフィーラの4人が、海鳴市に転移して飛行しながらはやての家へと帰る途中の事だった。ページ数は、その時点でようやく602ページ。目標ページ数を超えて、ヴィータやアリシア、ザフィーラですら少し気分が良さそうだった。

 だが、そんな時に俺達を取り囲むように現れた管理局の魔導職員。即座に張られた魔法結界。俺達は結界の中に閉じ込められてしまったのだ。


「スティンガーブレイド! エクスキューションシフト!!!」


 真上から降り注ぐ、青色の魔力刃。一つ一つは威力の弱い物だが、質より量といった物。それは確実に俺達の身体にダメージを与えようと迫った。

 でも、そんなんじゃあ足りないな。

「軽いな」

 衝突の際に起きた小規模な爆発の爆煙を片手で払う様にして無傷を証明する。真上を笑みを浮かべて見上げると、歯噛みした魔導師の姿。そいつは、ジュエルシード事件でも見た黒い魔導師の少年。

「アリシア、とりあえず……あぁやっぱりいい」

「?」

 俺が正面に視線を移すと、認識阻害魔法を発動させようという考えを振り払う。何故なら、視線の先にはフェイト・テスタロッサと高町なのはがいたから。フェイトに見られたのなら、仕方ない。アリシアの正体はバレたも同然だ。
 驚愕の表情を浮かべているフェイトだが、通信でも入ったのか変身を始める。大量の光が発生して、収まった時には彼女達は前に見た魔法少女の姿に変わり、そのデバイスをこちらに向けた。

「アイツらのデバイス……」

「ああ、ベルカ式だな。前まではミッドチルダ式だったんだけど」

 デバイス作成技術の知識を引っ張り出して、デバイスの情報を得る。知識量で言えば、俺に勝てる物はいないと言って良いからな。流石は全技術。

「まぁ、いいだろ。どうせ、俺とアリシアの存在はバレてるし……ここらで叩きのめしておこうか」

「蒐集は?」

「ヴィータ……お前は目標以上の魔力を奪うつもりか? はやてと約束しただろう、人からは取らないって」

「分かってるよ……確認しただけだっ」

 いや、絶対忘れてたな。……さて、早々に此処を片付けよう。

「じゃあヴィータとザフィーラはあの黒い魔導師を二人掛かりで潰せ。騎士は一対一だの言ってる場合じゃない。はやての命が掛かってる、今だけは妙な騎士道を捨てろ。アリシアはなのはとフェイト……あの二人だ。出来るな?」

「あったりまえだろ!」

「了解した」

「いいよ。お姉ちゃんが妹にちょっと指南してあげる」

「で……俺はアイツらだ」

 視線を斜め上に向けると、三人の転生者。神崎はその両手に千将・莫耶を、火喰は約束された勝利の剣(エクスカリバー)、會田は何も持っていないがその身に魔力を纏って身体強化をしていた。

「勝てんのか? アイツら、相当強ぇぞ」

「ははは、ヴィータ……誰に向かって言ってんだ。俺に掛かればあんな奴ら、魔法を使うまでもなく堕とせるぞ」

 俺はそう言って、転生者に向かって行く。それを皮切りに各々が各々の敵に向かって行った。現在の時刻は18時20分。さて、制限時間は19時だ。早々に帰らないとはやての奴にどやされちゃうな。


「さて、掛かって来い。転生者諸君、片手間に捻り潰してやろう」


 それもまた面白い。俺は、誰に言う訳でもなくそう呟いた。



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