小説『リリカル世界にお気楽転生者が転生《完結》』
作者:こいし()

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 さて、俺とヴィヴィオはあの後帰って来て、そのまま談話室で寛いでいた。どうやらあのナンバーズと俺の戦闘ははやてと同様モニターされていたようなので、多分ヴィヴィオの存在もバレてるだろうな。後々質問が来るだろう。その子は誰だよって。
 まぁ隠す事はないので素直に答えればいいだろうけど。問題は、この機動六課にヴィヴィオを置いておく事の危険性だ。今回の黒幕、ジェイル・スカリエッティは管理局の上層部と繋がっている。地上本部のレジアス・ゲイズなんかそうだ。実力は大したことない癖にぐちぐちと文句ばかり言ってくるから腹立つ。

 まぁどちらにせよ、同じく管理局の一員である上層部もレジアスも自分の正義に則って戦っている者達だ。別に悪い事をしている訳ではない。まぁ正義が行き過ぎて犯罪に手を染めているが、本末転倒という奴だ。
 とはいえ、彼らがどれ程の正義を振り翳したとしても今回の事は犯罪でしかない。故に、俺はそれを潰すだけだ。未だに生まれたばかりで何も分からないヴィヴィオを不安にさせる原因であり、危険にさらしている原因。聖王の器だの聖王のクローンだの、そんな後付けのレッテルを利用しようと思う事がそもそもの間違い。

 だから俺はらしくもなく主人公の様な、正義の味方の様な、戦隊ヒーローの様な、所謂優しい心に則って、誰かを護るとか言っちゃってる訳だ。

 まぁ結局の所、ただ単に俺は金髪オッドアイのロリっ娘美幼女に対して親としての愛着を持ってしまっただけなのだ。

「全く、俺を味方に付けるなんてつくづく運の良い奴だよ。お前は」

「ぅ……んん…」

 いつも俺が寝ているソファで寝ているヴィヴィオの頬を指で突く。ぷにぷにと柔らかい弾力がある子供特有の少し体温の高い肌は、生まれたばかり故にまだ白く、シミ一つない。

「こんないたいけな幼女をこぞって狙うか……この世界の大人ってのは皆ロリコンか。まぁ、魔法少女って言う位だ。実際、画面の外でも中でもロリコンがいて当然か。子供は無条件に愛でられる存在だからねぇ」

 大人は子供と共に育ち、老人は子供を愛でる。ならば、共に育つ大人がいない子供は? 間違った道を歩く大人を正すのは?

 決まってる。それは俺みたいな老人達の仕事だ。責任は、取りたいが取れるほど甘いものではないのだから。



 ◇



 その頃、ロングアーチ。機動六課の面々はガジェットの殲滅に当たり、その仕事を終えて戻って来ていた。反応の有ったレリックの回収は出来ず、結局敵側に回収されたのだろうと判断している。
 疑問点は、珱嗄の事。共にいた少女とそれを狙って襲い掛かって来た敵側の少女達。見た所、彼女達はレリック回収を目的としながら、珱嗄に背負われたあの少女を狙ってもいた気がする。
 ならば、あの少女の事に付いて知る必要があるし、何故珱嗄がその少女と共に居たのかを知る必要がある。

「それにしても……圧倒的ですね、珱嗄さん」

「そうだね……圧倒的だ」

 ロングアーチで映像の鑑定をしているシャーリーの呟きに、フェイトが答える。既になのはとフォワード陣も戻って来ていて、休息を取っている。訓練は今日は無い。元々休日だったのだから。

「でも、この子は……」

 フェイトは珱嗄の圧倒的な戦闘にも驚愕しているが、それ以上にその珱嗄に背負われている少女の方にも驚愕していた。
 何故なら、少女へ一切の攻撃が通っていない。戦闘によって降りかかる地面や石の破片、砲撃時の余波すら彼女に届いていない。地面に潜った際に、その護りの力が働いていないのは、彼女に対して害がなかったからだろうか? そんな疑問と思考が駆け巡る中、フェイトは少しだけ画面上の少女を見た。眼を瞑り、珱嗄の背中に必死にしがみついている姿は、珱嗄を信頼している証拠。
 その姿は少しだけ、怪しさや疑問という物を全て置いて少しだけ、羨ましいと思えた。それはヴィヴィオと同じ年齢の頃、植え付けられた小さなアリシアの記憶の中で母親と過ごした光景と同じだったから。
 彼女は母親に甘える事を知らずにここまで育ってしまった。故に、少しだけ羨ましく思えたのだ。

「……さて、珱嗄さんに話を聞かないと」

 フェイトはそう言ってロングアーチの管制室を出る。行先は珱嗄のいるエスケープ隊の隊舎の談話室。いけばおそらく、いつものようにソファでくつろぐ彼がいるのだろう。先程までの戦闘の事など思わせない位いつも通りに、彼はゆらりと笑うのだろう。

「珱嗄さんは、強いなぁ」

 フェイトは微笑みながら、そう呟いた。




 ◇ ◇ ◇




 ティアナside


 私達は、久々の休日を結局仕事で終えて、機動六課に戻って来ていた。とはいえ、今日は訓練自体は無いからこのまま休む訳だ。
 で、そんな私達は六課の食堂で4人。テーブルで談笑していた。レリックは敵に奪われたかどうか知らないが回収できなかったが、ガジェットは全て撃墜。被害者を出すことは無かった。これだけでも私達にとっては僥倖だ。

 それで、今4人で話している内容はというと

「私はやっぱりなのはさんかなぁ」

「僕はフェイトさんだと思います!」

「今日の殲滅魔法凄かったし、私ははやて部隊長かなって思います」

 機動六課の中で誰が最強か、という物。ちなみに私はアリシア隊長。管理局に轟く【拘束好き(バインドマスター)】の名前は伊達ではないと思う。
 ちなみに、珱嗄さんと神崎さんは除外だ。あの人達は規格外だ。強いというよりは人外の域に足を突っ込んでると思う。それに、この二人を入れて考えたら確実に珱嗄さんが挙がる。談笑にならない。

 とはいえ、これは単純な強さの話だ。戦闘をしたとして、誰が強いかの話。

 なのはさんなら、笑いながらこう言うだろう。

『本当の強さは、力の強さだけじゃないと思うよ』

 フェイトさんなら、微笑みながら言うだろう。

『魔法の強さも大事だけど、私は他に大事な物があると思うよ』

 はやて部隊長なら、面白そうに言うだろう。

『あっはっは、確かに実力は高い方がええかもしれん。でも、私は幾ら強い人でも信念の無い人は強くないと思うで?』

 言ってる意味は分かる。つまり、心の強い人や信念に真っ直ぐな人が本当に強い人と言えるのだろうと、そう言っているのだ。なのはさんと腹を割って話し合った私は、その意味がちゃんと理解出来る。

 ならば、珱嗄さんならどういうだろうか? 多分……


『強い弱いは関係ない。周囲は面白い敵か味方で有れば、それでいい』


 いつもみたいにゆらりと笑ってそう言うだろう。その姿はいつも通りで少しだけ、笑みが漏れる。

「ティア、どうしたの?」

「いやね……あれこれ考えた所で、結局珱嗄さんが思い浮かぶなぁって」

 私の言葉に、スバル達は納得といった様に苦笑した。結局、珱嗄さんは自分の信念にまっすぐだし、精神的にも子供っぽい様で大人びている。そのうえ実力は管理局でも最強だ。
 結局、私達は最強は誰か、という話題を出して話しあっている中で分かっていたのだ。最終的には一番は珱嗄さんだろうという結論に至ると。

「やっぱり……」

「珱嗄さんは強いなぁ……」

 スバルはそう言う。そして私達は、珱嗄さんへの尊敬を改めたのだった。


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