小説『リリカル世界にお気楽転生者が転生《完結》』
作者:こいし()

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 それから数日。スバルやザフィーラ達の怪我も治り、機動六課も活動出来る体制が整った。そして、俺はその数日間ずっと、万全の体勢を整えるべく今度は慢心も油断もなく準備を整えていた。
 持てる魔法の全てを掛けて、あのジェイル・スカリエッティの命を奪う手段とヴィヴィオを取り戻す魔法を組み上げていた。敵側の持ち札を全て封じるつもりなのだ。

 ガジェット、ナンバーズ、スカリエッティが作った魔法アイテム、ロストロギア、様々な手段を持ってこようが全て叩きのめせるあらゆる手段を、組み上げる。

「……うん、まぁこんなもんだろ」

 そして今し方その準備は終わった。ガジェットでも何でも掛かって来いよって感じだ。

 現在俺がいるのは、アースラではなくジェイル・スカリエッティの拠点の入り口前。ロッサとシスターシャッハと面識はないのだが、二人が高確率でジェイル・スカリエッティの拠点である場所を見つけたので俺は確信が有った訳ではないがその入り口である洞穴に行ったのだ。しばらくすればこの場所を突き止めた二人が確信を得る為に調査に来るだろう。だがそんな事は関係ない。俺はこの場所に来て確信を得た。
 俺の気配察知域にスカリエッティと数名のナンバーズの気配を掴んだ。どうやらヴィヴィオはいない様だが、それは聞けば分かる。

「じゃあ行くか。覚悟しろよクソ科学者共、全員まとめて塵屑にしてやる」

 そう言って俺は洞窟の中へと踏み込んだ。そして歩く。中は普通の洞窟の様に凹凸のある荒い地面の表面が続く。だが、風が吹き抜けていく距離を測ると、かなり奥まで続いている事が分かる。
 しばらく歩けばそれを証拠づけるように金属の表面が洞窟を包み、科学的な通路になった。周囲には何やら機材が多く、かなり整備されているのも分かる。

「ムカツクなぁ」

 その一言を皮切りに、周囲の機材を魔力弾で次々と破壊していく。AMFなんてうっとおしい物も有ったが、関係無いな。元々、AMFは魔法を行使する際の魔力の結合を解くフィールドの事だ。故に、魔法を行使する事が困難になる。しかし、魔力結合が上手い者はそのフィールド内でも有る程度魔法を使う事が出来る。使いづらかったり、魔力消費が増えたりするけどね。

 だが、俺の場合全ての技術を持っており、その中でも魔法を使う技術の熟練度は当然ながら高い。人間の、それも殆ど人外の域に達している俺の身体は魔法によって限界を突破している。つまり、並のAMF程度なら全く効果を為さない。精々違和感を感じる程度だ。


「ああ、イライラする。全くもって、面白くない」


 俺は呟き、破壊の音を立てながら通路を進むのだった。




 ◇ ◇ ◇




 そして、珱嗄がそうしている中アースラではジェイル・スカリエッティによる通信が来ていた。映像の中には何処か豪華な椅子に座らされ、電撃を流されているのか何かされているようで、痛みに叫び声を上げているヴィヴィオ、そしてその叫び声はアースラにいるなのは達の良心を酷く痛めつける。護るべき存在が、敵の手の中で酷い目に遭っている。それだけで、心が痛むのだ。

「ヴィヴィオ……!」

『フハハハハハハ!! これからが、私の夢の始まりだ!!』

 その言葉と共に、スカリエッティの行動は始まる。映像に映るのは、動きだす巨大な戦艦、聖王のゆりかご。そして別モニターには攫われたヴィヴィオ。さらに別モニターにはナンバーズと共に本局へと走る、ナンバーズと同じスーツを着たギンガ・ナカジマがいた。スバルはその姿に唖然とする。

 遂に動きだしたジェイル・スカリエッティ。アースラに居る全員がそれに対して驚愕し、脅威を感じた。

「! 珱嗄さんは?」

「あれ? 居ない……?」

「まさか、もう先に出たんじゃ……」

 なのは達はそう言って沈黙する。そして考えた。珱嗄はあの通り怒りに表情が染まっていた。そして、その珱嗄が持つ実力は計り知れない。
 故に、そんな珱嗄が怒りにまかせて暴れまわったらどうなるか? 結果は当然、悲惨な物だ。

「皆、兄ちゃんなら大丈夫や。私達はやる事をやるで」

『了解!』

 はやて達はそう言って動き出す。はやては怪我人や自分の伝手を考慮に入れて策を考え始めたのだった。




 ◇




「ん? なにやら面倒な物が動きだしたみたいだねぇ……」

「ぐ……ぅ……!」

「おっと。さてさて、まずは二人」

 俺は現在、破壊された機材の中ナンバーズの二人、トーレとセッテを地に沈めていた。高速機動やらブーメランやら色々と小細工をして来たが、関係無かったな。俺より遅かったし、ブーメランはその場で圧し折ってやった。後は簡単だ。バインドで捕らえ、行動不能になるまでただひたすら痛めつけた。
 腕をもぎ、足を潰し、関節を捻りあげ、骨を折る。そんな攻撃を10分ほど続けてやった。ちょっと面倒だったが、少しはストレスも発散出来たからいいとしよう。

 さて、ヴィヴィオもそろそろ待ちくたびれているだろう。さっさとジェイル・スカリエッティを潰して迎えに行くとしよう。

「やぁやぁ、随分と娘達を痛めつけてくれた物だね」

 するとそこにジェイル・スカリエッティが現れた。不意に笑みが漏れる。これは思わず笑ってしまう程喜んでいるのだ。やっと目の前に殺すべき敵が現れた。ようやく殺せる。ヴィヴィオを攫った張本人、それだけで十分だ。

「死ね」

「え―――ごぶぅ!?」

 俺はなりふり構わずにスカリエッティの懐に入り、掌底を叩き込む。吹き飛ぼうとしたが、それは許さない。バインドでその場に固定し、衝撃を逃がさない。
 吐血するスカリエッティだが、俺の怒りはまだ収まってないぞ。

「ちょ、mがはっ!?」

「これはヴィヴィオを怖がらせた分」

 殴る

「これは俺の怒りの分」

 蹴る

「これは俺の腹いせの分」

 魔力弾を撃つ

「これは俺の八つ当たりの分」

 手刀で腹を貫く

「そしてこれは――――」

 思いっ切り拳を振りかぶる。



「俺のストレス発散の分、っだあああああああ!!!!!!」



 拳を振り抜き、ジェイル・スカリエッティの顔面を殴り飛ばした。バインドが衝撃に耐えきれず壊れてしまった。結果、スカリエッティはガリガリと音を立てて吹き飛んで行った。
 そして、スカリエッティはぴくぴくとうごめきながら小さな声で言った。

「こ、ここは……少し………話をする場面では……ない……のかね……?」

 それに対し、俺はスカリエッティの頭を踏みつけた。




「コレが父親の怒りだ。思い知ったか、このロリコンが」



 
 俺はそう言って久々に、ゆらりと笑ったのだった。







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