小説『リリカル世界にお気楽転生者が転生《完結》』
作者:こいし()

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 ―――朝


 さて、俺がはやての家にやって来てから既に6年。つまり、現在八神はやて並びに主人公高町なのはの年齢が9歳に到達。分かりやすく言えば小学三年生になったということだ。
 そしてそれはつまり、原作開始を意味する。え? なんで原作知らないのに原作開始が分かったかって? そんなの分かりきっているじゃないか。銀髪四頭身こと神崎零君に聞いたんだよ。まぁ、直接聞いた訳じゃない。俺が転生者とバレたらそれだけでめんどくさそうだしね。具体的に言えば自分から違和感無い形で吐かせた。多分向こうは口を滑らせた事にも気付いていないだろう。

 で、俺のスキルの一つである【盗聴】のおかげで色々詳細情報も手に入れていたりする。どうやら彼は神様に高性能デバイスとユニゾンデバイスに魔力ランクEXとイケメン補正とニコナデポと何でも切り裂く事の出来る武器として【絶刀:霹】というのを持っているようだ。ちなみに読み方は"ぜっとう:いかづち"だ。

 まぁ、俺の特典と比べたらマジでチートだよね。しかもこの子以外にも同格の転生者が多数いると来た。これはもうひっそり暮らしてた方が良いのでわ?
 でも考えた所で仕方ない。それに、それじゃ面白くないのだ。俺は死んだとしても面白い生活に浸っていたい。

「どうしたん? お兄ちゃん」

 やって来たのは俺の住んでいる家の家主こと八神はやて。天の声的指摘で実際3歳児が料理とか無理だよねってことが発覚した。色々設定ミスったみたいだね、しっかりしろ作者。

 まぁ、そんなことは置いておいて……いや置いといちゃいけないんだけどさ。まぁ、それは後回しだ。

「いや、なんでもない」

「そう?」

 さて、この時で発覚した問題点はおおよそ二つ。一つは個人的な問題で、もう一つははやての問題だ。
 まず前者だが、これは俺の職場に来たる問題だ。実を言うと俺ははやてを養う為に、ギル・グレアムの寄付金以外に金を稼いでいた。その職場というのが、聖祥大付属小学校の教師だ。もうお分かりだろう?
 そう、主人公勢+転生者,sが次の俺の担当クラスにこぞっているのだ。いやな偶然もあったもんだと思う。多分、神様に主人公補正的な都合良いモノ頼んだ奴がいるんだろう。全く持ってめんどくさい。でもまぁ、これは俺でもなんとかできる。

 問題なのははやての問題だ。4年前位だったか……はやては普段車椅子を使っていたのだが、ある時急に足に激痛が走り、病院に駆け込んだ事がある。これは原作での公式なイベントだったのかは定かではないけど、それ以来はやては最初は足先だけだった麻痺が徐々に上に広がっていっている。
 そして、この足の麻痺はこの世界に存在する特定の異能の力……"魔法"による作用だったのだ。原因ははやての部屋にあった大きな古本。鎖が巻かれており、なにやら封印を受けているかのような印象を持った。

 俺のスキルの一つ【気功】の応用で、はやての身体の中にある所謂魔力と呼ばれるエネルギーが本に吸い取られているのが分かった。おそらくだが、この世界の魔力というのは身体の活動に大きく関係してくるのではないだろうか? 内臓器官の様に、血液の様に、失われたり傷ついたりしたら命に関わるような影響を及ぼす様なそんな感じだ。
 これに関する解決法は未だ見つかっていない。だが、きっと転生者達の中にははやてを救う為に動いている奴もいるだろう。暫定的にはそいつを利用することに決めている。
 今はとりあえず【気功】を使って魔力の吸収を抑えているという応急措置の状況。結局解決には至って無い。


「お兄ちゃん、朝ご飯出来たで〜」

「あいよー」


 まぁ、今ははやてのご飯を食べてからでも遅くは無いだろう―――……



◇ ◇ ◇



 ――聖祥大付属小学校


 さて、やって来てしまった小学校。というか今日が新学期開始の日だったりする。一年生は入学式を昨日済ませているし、今日はクラス分け発表の日で在学生の春休み明けの登校日だ。
 クラス表は決定した日に俺は見ているし、見る必要はない。だから早々にクラスへ向かう事にする。ああ、面倒臭いったらありゃしねぇ……

「はぁ……帰りたいなぁ。はやてと一緒にテレビ見ながら談笑してたい」

 まぁ、そう呟いた所でどうなるんだという感じだが来たからには仕方ない。さくっと済ませて帰るとしよう。ったく、なんで登校初日に授業があるんだよちくしょうめ。

「……さて、行くか。よいしょっとぉ」

 ガラリと扉を開けて中へと入る。その音で騒がしかったクラスは静かになり、全員がこちらを見た。視線を一身に受けるのはいささか緊張するモノだが、子供にいくら見られようと何も感じない。

 まぁ、転生者諸君の殺気ともとれるウザイ視線は感じるけどね。散れクソガキ共。

「……めんどいけどぉ、なんか出席取らないとイケナイらしいから出席を取ろうと思ったりするんでさっさと席に付けガキ共〜」

 俺の言葉に子供達は早々に席につく。こうして見てみると、このクラスは随分とカラフルだな。金髪が五人、銀髪が三人、他にも赤みがかった、青みがかった、黄色みがかった、緑がかった、黒髪が多い。まともな髪色は主人公の栗色とも言える茶髪とかその他大勢の男子や女子の茶髪に黒髪とかだな。俺も人の事言えないけどさ。

「えー……相沢ちゃん」

「はい」

「赤坂君」

「はい」

「雨川ちゃん」

「はい」

「粟井ちゃん」

「はい」

 あ行多くねー?というか、このクラスま行から先がいないぞ!? 偶然にしてはやりすぎだろう。家には八神とか五十音後ろ側の素晴らしい名字があるというのにね。
 おおっと、出席をさっさと済ませないと―――









「ハバネロ・トウガレーシー」

「HEY!」

 突っ込まないぞ、断じて突っ込まないからな。まぁ、とりあえず出席は終了。自己紹介と行こうか。

「さて……出席も終わったし、お前達俺に対して自己紹介しなさい。さしあたっては名前と趣味と特技、あとはまぁ……なんかクラスの皆に対する一言とか? じゃ、一番ちゃんどうぞー」

 で、少しづつ自己紹介が済んでいき、転生者達の固まる、か行の順番になった。あ、ちなみに転生者の数は三人だ。まずは一人目。

「僕の名前は火喰(かぐらい)隼人(はやと)。趣味は読書で、特技は運動全般です。皆さんこれから一年よろしくお願いします」

「うん、もう少し捻った自己紹介が欲しかったなぁ。まぁ、教科書通りって感じだったね。座っていいよ〜」

「はい」

 次は二人目

「ワシの名前は會田(かいだ)(れん)! 趣味はエロ本読むことで、特技は早着替えじゃ!女子の皆仲ようしてな! 男子もこれからよろしゅう!以上じゃ!」

「それ何弁? 方言としてはちぐはぐ過ぎねぇ? まぁ、いいけどさ。エロ本学校持ってきたら俺が没収して目の前で燃やすから覚悟しとけよ?」

「う、嘘じゃろ? 真顔でそないな事言わんで欲しいんじゃけど!」

「まぁ、信じるか信じないかは……お前次第だ」

「なんてこっちゃ……」

 はい、orz状態になった子は放っておいてさっさと次に行こう。ということで三人目。言わずと知れた銀髪四頭身! その異色の両目に下卑た意思を秘め、主人公並びに女子勢を舐めまわす様に見ているあの男!

「俺の番だな! 俺の名前は神崎零! 趣味は鏡を見る事で特技はスポーツ全般だ! 女子の皆、よろしくな! ああ、あと先生含む男子は俺に近寄んな」

「うん、死ね」

「酷くね先生」

「うん、死ね」

「いや、だから」

「死ね」

「聞く耳をm「死ね」……悪かったよ、謝るから許してく「死ね」……座ります」

 さて、教師をバカにしたクソガキは黙った。さっさと自己紹介を進めよう。面倒な転生者勢は終わったし、後は楽だろうしな。



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